第七回日本翻訳大賞 推薦作品リスト1

ここでは皆さまから推薦をうけた作品と推薦文を紹介していきます。
※推薦文のすべてが掲載されるわけではありません。予めご了承ください。


【推薦者】林田 実
【推薦作品】『後見人と被後見人』
【作者/訳者】ヘンリー・ジェイムズ/齊藤園子
【推薦文】
 誰しもが知るヘンリー・ジェイムズの、誰しもほとんど読んだことのない「処女作」の、本邦初訳である。ジェイムズがなぜ、自身の著作カタログから本作を除外したのかが分からないほどに、物語として「読ませる」ものとなっている。訳者は文学者であるから、流麗な文体よりも正確な文体を選んだと思われ、それは、本訳書の初めから、終いまで一貫している。しかし、先に述べたように、一般の読者が物語を堪能するには十分に洗練された訳出でもある。ジェイムズが実質的に初めて書いた長編処女作を、なぜ、処女作としなかったのか、物語としての完成度を考慮すると、その謎は尽きず、文学とは何か、文学的評価とは何かを問う格好の出発点になりうる訳書でもあると思う。


【推薦者】m fumie
【推薦作品】『海と山のオムレツ』
【作者/訳者】カルミネ・アバーテ/ 関口英子
【推薦文】
 イタリア、カラブリア州のアルバニア・コミュニティを舞台にした小説を次々に発表しているアバーテ氏の、自伝を思わせる短編集。子どものころから少年、青年に至る「食」にまつわる思い出のエピソードを、イタリア料理のフルコースのメニューになぞらえて章立てしている構成もすばらしい。「食」に関する記述の翻訳は、ましてやそれが一地方の一コミュニティの独特のお料理となるとご苦労も多いこととお察しするが、それを想像し、よだれを垂らしながら読む読者の幸運を味わった。
「婚礼の宴とそのほかの味覚」というやや堅めの原題を、思い切って「海と山のオムレツ」と、とっつき易い邦題にしたのがまた秀逸だと思う。それに合わせた明るいデザインの表紙といい、新たなアバーテファンが増えるきっかけになったのでは。

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【推薦者】斉藤 英
【推薦作品】『蜜のように甘く』
【作者/訳者】
 イーディス・パールマン/古屋美登里
【推薦文】
  本国で2015年に刊行された”Honeydew”から選んだ十篇を収録した日本オリジナル版の短編集。
 作者が描くのはごく普通の人間の日常なのだが、とにかくその切り取り方が上手い。筆致にはけっして装飾的なところがなく、ある意味で淡々と、選び抜かれた簡潔な言葉が書き連ねられ、各人の人生が短い物語の中にぎゅっと凝縮される。そして多くの言葉が費やされないからこそ、読み手は語られない過去や内面への想像に誘われていく。
 美しい訳文は、原文の持つ雰囲気やトーンを等価に日本語に移していると思う。今回訳されなかった残りの十篇の刊行も待ち遠しい。


【推薦者】酒井 七海
【推薦作品】『アコーディオン弾きの息子』
【作者/訳者】ベルナルド・アチャガ/金子奈美
【推薦文】
 バスクという国の歴史を知らなくても、この本を読めばどれほど茨の道を辿ってきた国なのかということがよくわかる。
ETAという過激派が活発だった頃のバスクを生きた若者たちの青春。よくある恋の話や友達とのいざこざの間に、隠しても隠しきれない国が抱える不穏さが滲む。
文章は美しく、人物像はまさに生きているよう。
ラスト亡命先での主人公の選択と葛藤がどういう意味だったのか、いつまでもいつまでも考えたくなる作品。
失われゆくバスク語という言語を捨てたくなかった主人公の想いが胸に響いて忘れがたい1冊でした。

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【推薦者】高原 英理
【推薦作品】『バグダードのフランケンシュタイン』
【作者/訳者】アフマド・サアダーウィー/柳谷 あゆみ
【推薦文】
 バグダード市内の爆破テロで死に四散した複数の人の身体を寄せ集めつくられた「名無しさん」が身体を構成する死者たちの復讐のため関係者を殺してゆく。復讐の達成された身体部分は剥がれ落ちるので必要な部分に新たな犠牲者の身体部分を縫い付けて活動を続ける。するとそれは終わりのない復讐となる。しかも罪人を裁くと言うが真に無辜の人などいない。というこの「名無しさん」だが、これは物語的には空虚な中心のようなもので、2005年当時バグダードの政治状況に翻弄される人々の悲喜と数奇な運命を語るところが主である。それは時に暴力的で不条理で、読む内「名無しさんよ、殺しに来てくれ」という感じのわくところもある。来ないのだが。訳文によるのか、語り口はクールでアメリカのミステリーのような感じもありスピーディーで読みやすい。ちょうど真ん中に「名無しさん」からの告白が挟まるところは原典『フランケンシュタイン』を踏襲していて面白い。

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【推薦者】Synee Tie
【推薦作品】『韓国が嫌いで』
【作者/訳者】チャン・ガンミョン/吉良佳奈江
【推薦文】
 自国で生きることの息苦しさから脱出しようと奮闘する若い主人公の軽やかで喧しい語り口が痛快で清々しく、読んでいるあいだじゅう楽しい気分でいられる。我々が「○○すべき(であるべき)」と思い込んでいることにどれほどの根拠があるのかを改めて考えさせられる良書。

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【推薦者】豊崎 由美
【推薦作品】『バグダードのフランケンシュタイン』
【作者/訳者】アフマド・サアダーウィー/柳谷あゆみ
【推薦文】
  舞台になっているのは、イラク戦争でサダム・フセイン政権が倒れ、イラクに暫定政権が成立した2005年のバグダード。爆破テロが頻発する不安定な状況を背景に、物語は展開していきます。
 まず登場するのはウンム・ダーニヤール・イリーシュワーという老婆。彼女は20年前のイラン・イラク戦争で亡くした息子の帰還を信じて待っています。次に登場するのが彼女の隣人である古物屋ハーディー。彼は親友を爆殺された怒りをきっかけに、テロでバラバラになった複数の人体をつなげ、〈きっかり一人前の遺体をこさえた〉のですが、ある日そこに魂が宿ってしまうんです。ハーディーによって〈名無しさん〉と名づけられた怪物は、隣家に侵入。老婆は、それを戻ってきた息子と思い込んで——。自分の体を構成する人々の命を奪った者たちへの復讐に邁進する〈名無しさん〉を中心に、大勢の人物の思惑や行動を重ねながら、物語は進んでいくんです。
 アラブ語圏の現代小説が翻訳されるケースは稀。その意味でも意義ある翻訳と思います。

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【推薦者】三辺 律子
【推薦作品】『マーダーボット・ダイアリ―』
【作者/訳者】マーサ・ウェルズ/中原尚哉
【推薦文】
 主人公は、連続ドラマの鑑賞が何よりも好きというコミュ障の〈殺人ロボット〉ーーーと聞いてもまったくイメージがわかないと思うが、実際そうなのだから仕方ない。
保険会社の警備ユニットとして働く殺人ロボットなのだが、自らをこっそりハッキングし、「自由」を獲得している。それで得た自由時間を何に使っているかと言えば、連続ドラマの鑑賞(と、一応、顧客の安全確保)なのだ。
最大の読みどころは、自分を「弊機」と呼ぶ、こじらせ主人公の語り口。ブツブツ文句を言いながら本人はいたって真面目に様々なミッションの一部始終を語っていく。そこから、じわじわと滲み出すユーモアがもうほんとうに最高。ユーモアを訳すのは難しいと思うけれど、「弊機」という名訳!(ロボットに性別はない)とこの語り口のおかげで、終始ニヤニヤしながら読んだ。ちなみに、謎も、アクションも、SFならではの背景となる世界の描写も、最高です。

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【推薦者】大戸 敦子
【推薦作品】パトリックと本を読む
【作者/訳者】ミシェル・クオ/神田由布子
【推薦文】
 パトリックが詩を朗読したり詩を作ったりしていくシーンには、幸福感と言っていいものがある。貧困と犯罪の世界からどうやったら抜け出せるのか、抜け出すことは可能なのか…などと苦しく思いながら読んでいたが、中ほどからは、それよりもパトリックの豊かな読みに驚かされ、嬉しくなってきて、読書の純粋な歓びを再確認することとなった。やっぱり読書っていい。ほかの何とも代え難い歓び。厳しい現実は続いているし課題も多いけれど、本を読む歓びを知っていることは生きる力になる、と改めて思う。


【推薦者】れも ん
【推薦作品】『後見人と被後見人』
【作者/訳者】ヘンリー・ジェイムズ/齊藤園子
【推薦文】
 ヘンリー・ジェイムズを知らなかったが、彼の数々の作品に触れる最初の一冊とするに相応しいと思った。
100年以上前の作品のため、例えば森鴎外や夏目漱石を読むときのように多少古典的で難しく感じるところがある。そのようにあえて訳してあるのだろう。しかしながら、物語の内容は現代にも十分通じ、味わい深く、面白かった。
ヘンリー・ジェイムズの他の作品も手に取ってみたいと思わせるものに仕上がっている。


【推薦者】友安 昌幸
【推薦作品】『実は、内向的な人間です』
【作者/訳者】ナム・インスク/カン・バンファ
【推薦文】
 韓国人って主張の強い人が多いけど、なおさら内向的な人たちは目立っていないかもしれないです。よく思い出してみると、内向的な人たちも日本よりもっと多いぐらいでした。この本読み進んでいくと、韓国社会でのことを書いていることを忘れています。BTSとか出てきて、やっと思い出すほどです。韓国語の言い回しや、単語の使い方が結構日本語と違うことを知っているので、これだけ引っかからないで、日本語の文章として読ませているのは素晴らしいです。

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【推薦者】川村 太郎
【推薦作品】『アフリカの森の女たち-文化・進化・発達の人類学』
【作者/訳者】ボニー・ヒューレット/服部志帆・大石高典・戸田美佳子
【推薦文】
 中部アフリカの密林に暮らす女性たちの語りが生々しい。初々しい初恋の経験や性や出産、夫の浮気や暴力、育児、子どもやパートナーを亡くした時の深い悲しみ、老いなどが、赤裸々に語られている。狩猟採集民アカと農耕民ンガンドゥが取り上げられ、人間の普遍性と文化の相違性が浮かび上がる。
半世紀以上も前に、フランスの哲学者ボーヴォワールは「女性とはどのようなものか?」と社会に投げかけた。これを問うには、先進国だけでなく、アフリカのような第三世界の女性の声に耳を傾けることも重要である。アフリカの中でも文化の多様性があること、さらには文化の中にも語りの多層性があることを知ることは、女性の語りを通じて、ステレオタイプの危険性にあらがうことでもある。日本のような均質性の高い社会に、多くの国や社会の人々の声、これらのなかの異なる性や世代の人々の声、さらには異なる経験を持つ者の声が、できるだけ多く届いてほしい。


【推薦者】freesia
【推薦作品】『後見人と被後見人』
【作者/訳者】ヘンリー・ジェイムズ/齊藤園子
【推薦文】
 多作なヘンリー・ジェイムズによる最初の長編にあたる作品で本邦初訳。この翻訳書により、ジェイムズの作品世界が一層日本で知られるようになるとよい。29歳の独身男ロジャー・ローレンスと12歳の孤児ノラ・ランバートの関係は微妙だが、ロジャーはいたって生真面目で不器用。自分と同年代の人物をこのような主人公に仕立てた作家の思惑が気になる。ストーリー運びは見事。さすが晩年「巨匠」と呼ばれたジェイムズだ。文章からはぎこちなさと合わせて生き生きとした筆致が伝わってくる。当時のニューイングランドの生活習慣や風景の描写も緻密で、作家の愛情が感じられる。奇妙で不思議で魅力にあふれた作品だ。


【推薦者】高橋夏子
【推薦作品】『キッズライクアス』
【作者/訳者】ヒラリー・レイル/林 真紀
【推薦文】
 小説としてグイグイ惹きつけられる「読む喜びの書」。
それと同時に、自閉症スペクトラム障害のある青年の「世界の見方」を感じられる「理解の書」でもあると思います。
「『普通』とはなにか?」、「障害は治すべきものなのか?」という果てしないテーマを、自分事として考えられました。
訳者の深い理解と、流れるような自然なことば遣いのなせる業かと思います。

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【推薦者】百句鳥
【推薦作品】『気まぐれニンフ』
【作者/訳者】 ギジェルモ・カブレラ・インファンテ /山辺弦
【推薦文】
 映画批評を書いている既婚者と、母親を憎む少女がすごした夏の回想録。口達者なGは海辺で見かけた少女に一目惚れすると、あの手この手で誘いだした末に家族を捨てて逃避行に走ります。あらすじは正統的なロマンスの流れを汲んでいるのですが、カブレラ・インファンテの真骨頂は文体にあります。複数の言語を絡ませるという言葉遊びと、語り手と語られている人物の言葉を混ぜ合わせた錯綜的な語り口。さらに多彩な引用を加えることで、縦横無尽に飛び交うテクストを実現しています。ユーモラスであると同時に翻訳家泣かせの難文なのはいうまでもなく、ある程度訳者の判断で超訳を試みないと訳出は難しいでしょう。これほどの難業に挑み、物語と文章の面白味を日本語で再現してくださった訳者さんには頭があがりません。


【推薦者】テイラー エリ坊
【推薦作品】『獄中シェイクスピア劇団』
【作者/訳者】マーガレット・アトウッド/鴻巣友季子
【推薦文】
 訳者の本は『風と共に去りぬ』で初めて読んだ。その時も感じた事だが、訳文がすごく自然で読みやすい。言葉のチョイスがとても巧みで話に没頭できる。『獄中シェイクスピア劇団』は言葉遊びやラップの部分にもぴったりで爆笑の訳語が選ばれていて、本当に楽しめた。アマチュア劇団の雰囲気もよく出ている。私はシェイクスピアの『テンペスト』が好きなのだけど、『テンペスト』を読んでいない人にも、分かりやすい注釈が付いているのでお勧めできます。

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【推薦者】貫禄 六郎
【推薦作品】『1932年の大日本帝国: あるフランス人記者の記録』
【作者/訳者】アンドレ・ヴィオリス/大橋尚泰
【推薦文】
  満洲事変の翌年、1932年(昭和7年)に来日したフランス人女性ジャーナリスト、アンドレ・ヴィオリスがフランス語で書いたルポルタージュ(日本見聞録)。政治的・軍事的に「日本はどこへむかうのか」をテーマとしたノンフィクションだが、原著者は小説も書いているらしく、本作品も(その最良の部分では)冒険小説を読むような興奮さえ与えてくれる。
 訳者は、通常は機械・ビジネス文書などの実務翻訳で生計を立てており、まとまった本の翻訳はこれが初めてのようだが、事実を重視する実務翻訳者らしく、本作品の訳でも、当時の書物等に当たって綿密に歴史的観点から事実調査がなされており、日本語ができなかった原著者の誤りが詳細に指摘されている。また、フランス在住のヴィオリス研究の第一人者とやり取りした成果も盛り込まれている。巻末に収められた訳者「解説」も力作で、原著者の見方とは反対の見方も紹介するなど、バランスが取れており、年表・年譜・地図・写真などと相まって、読者を当時の世界に引きずり込んでくれる。

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【推薦者】エル・ オンブレ
【推薦作品】『ラスト・ストーリーズ』
【作者/訳者】ウィリアム・トレヴァー/栩木伸明
【推薦文】
 ウィリアム・トレヴァー最後の短編集。
後悔や自責に苛まれながら生きる登場人物に、読む人は自分を重ね合わせる事だろう。
作者は、苦い恋愛を経験したピアノ教師に「でもその男に遺恨はない」という、信じ難い不確かな言葉を語らせる。時の流れの中で、彼女の感情もまた姿を変えるかもしれないと、感じさせられたように思える。

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【推薦者】sachi zo
【推薦作品】『ライフ・アフター・ライフ』
【作者/訳者】ケイト・アトキンソン/青木純子
【推薦文】
 1910年2月から始まる幾度もの人生の物語。次の展開にはらはらし、大戦の緊迫する中を何度も懸命に生き直す姿を追いながら、物語に没頭。主人公が辿る幾重もの道の踏み跡が、日々迷い選択を迫られる現代の私達まで連なり重なっているように感じて、心強い気持ちになった。大好きな作品。

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【推薦者】松本 征子
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉 隼人
【推薦文】
 上杉隼人氏のブログGet Up Englishを毎日チェックしているが、この人の仕事は質、量ともに驚異的だ。
 最後のダ・ヴィンチの作品として世界最高額で競り落とされたサルバトール・ムンディ。イギリス国王、妃、美術収集家と美術商、ロシアの大富豪、サウジアラビアの皇太子まで、あらゆる人たちがこの1枚の絵を巡って光と闇の世界で蠢く。英語以外の言語も出てくる本書を訳すのはとてもむずかしかったと思われるが、上杉氏はすっとわかる日本語にしてくれている。著者ルイス氏に英語でインタビューしてしまうのだから相当な言語力だ。
昨年は「最後のダ・ヴィンチの真実」以外にも、「MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密」や「ザ・ギャンブラー ハリウッドとラスベガスを作った伝説の大富豪」のビジネス書も「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」も訳している。超人的仕事量だ。
 今回は上杉さんの「最後のダ・ヴィンチの真実」を推薦したい。

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【推薦者】藤本 るみ
【推薦作品】『セヘルが見なかった夜明け』
【作者/訳者】セラハッティン・デミルタシュ /鈴木麻矢
【推薦文】
 トルコ語の翻訳の難しさはわかりませんが、英語の翻訳の仕事をしていた目線で読むと、リズムが良くて不自然な表現もなく、非常に読みやすい文章だと思います。鈴木麻矢さんの訳した他の本(トルコ狂乱、黒い本)も、読んでみたいという気持ちになりました。

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【推薦者】飯塚 友理
【推薦作品】『キッズライクアス』
【作者/訳者】ヒラリー・レイル/林真紀
【推薦文】
 本書を開いて、数ページ。
心の奥底に秘めたる、長らく信じていたことが報われた。

物語は日付に沿って進み、その読みやすさと共に、瑞々しい葛藤の言葉が口の中に滑り込んでくる。
自ら発達障害を疑い、現実を解釈するには時間と困難が伴う私にとって、主人公マーティンの一挙手一投足は愛おしい。

発達障害を持つ子を育て、その自問自答と苦悩の営みの中で訳者が巡り合った本書は、訳者自身の手によって、選ばれ尽くされた言葉で描写されている。

私は、物語とそこで鼓動を打つ訳者の真髄に陶酔する。

『君は、自分が他の誰かであれば良かったなどと思うべきではない。それは君自身に対する裏切りだ。』
本を開けば、「信じる世界」が待っている。
そんな一冊を本棚に携えられる滑かな温もり。
普通とは何か、自分という存在とは何か、を問い掛ける『キッズライクアス』は、私の心の中心に根付いている。

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【推薦者】今野 明広
【推薦作品】『おれの目を撃った男は死んだ』
【作者/訳者】
 シャネル・ベンツ/高山真由美
【推薦文】
 翻訳小説で文体を際立たせるとはどういうことか、思い知らされる。いや、思い知らされるだけで答えはわからない。そしてこの短編集に収められた10編が、みな異なった文体とそれぞれの凝った構成で全く異なった物語世界を作り出すことに成功している。それでいて全編で印象に残るのは、各編に登場する人物なのだ。いや違う。もしかしたら原作者と翻訳者の紡いだ言葉だったのかも知れない。この印象的な短編集のタイトルにしても各短編のタイトルにしても、翻訳者が原文をひねって作ったのではないかと思うけど、そうではない。ただ原文どおりの文章を、そっと冴える日本語に置き換えているのだ。耳がいい原作者と翻訳者の短編集だった。

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【推薦者】獄 門島
【推薦作品】『海女たち』
【作者/訳者】ホ・ヨンソン/姜信子 趙倫子
【推薦文】
 韓国語を読むことも理解することもできないが、「海女たち 」の原文を作者ホ・ヨンソン詩人が読むのを聴いたことがある。それは、意味がわからなくとも済州島の「音」として、済州島の「風」として、そして海女たちの「声」として心の奥底に刻まれたように思う。その「おと」を韓国語から日本語に、どう翻訳するのであろうか?この詩集のどの頁からも、「音」が聴こえ、「風」が吹いてきて、スムビソリ(磯笛)が遠鳴りするのである。かと思えば、ホンダワラがわらわらと押し寄せてきて、足元の潮の飛沫に、思わず足を縮めてしまう。「意味内容」だけでなく「おと」までをも伝える奇跡の翻訳に、拍手喝采。今後の翻訳を更に期待したい。

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【推薦者】澁澤 幸子
【推薦作品】『セヘルが見なかった夜明け』
【作者/訳者】セラハッティン・デミルタシュ/鈴木麻矢
【推薦文】
 デミルタシュ氏が淡々とした文章で綴っている衝撃的内容を
、訳者も淡々と訳しています。それだけに読む者のショックは大きいと思います。
若い人にもなじみやすい文章でありながら、品格が失われていないことに好感が持てます。
「名誉殺人」を真っ向から描いた小説は他にないのではないでしょうか。穏やかに、淡々と描き、淡々と訳されているのが、スゴイです。

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【推薦者】ハンドル名 内田さんのファン
【推薦作品】『デカメロン2020』
【作者/訳者】イタリアの若者たち/内田洋子
【推薦文】
 コロナ禍でイタリア全土がロックダウンした2020年春の2ヶ月、イタリアの若者たち24名から届く声を日本で日々訳し、方丈社の特設サイトで公表し続けた内田さんの努力に大きな拍手を送りたいです。
クラウドファウンディングで実現された書籍版は装丁から製本から、とても美しい仕上がりで、ひとつのドキュメントとしても、多くの人々の協力の成果としても、そして翻訳作品としても、色々な意味で素晴らしい仕事です。
なによりもこの作品を多くの人に手に取っていただきたく、ここに推薦いたします。

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【推薦者】小園 弥生
【推薦作品】『海女たち』
【作者/訳者】ホ・ヨンソン/姜信子 趙倫子
【推薦文】
 匂い立つような女たちの熱量と、ざぶんざぶんと寄せ来る波。100年の時をこえて、済州島の海女のうたが聞こえる。「海女の生き血を吸うな」。風と石と働き者の女の多い島で、1930年代最大の闘争の中心は女たちだったという。21人の海女一人ひとりの名を挙げ、生きた証しを伝える。
「それでも、人間は“スムビソリ〔磯笛〕”を吐き出さなければならないということ。息をこらえて生きてはいけないということ。」(日本の読者に手渡すささやかな息 より)
日本の植民地時代。解放。四・三事件。住民虐殺。
波のように行きつ戻りつ、長い年月、日本の津々浦々で潜って暮らした。映画『海女のリャンさん』や『HARUKO』の主人公の登場もうれしい。亡くなっても記録のなかに生きる海女たちにこんなに惹かれるのはなぜなのか。

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【推薦者】舞狂 小鬼
【推薦作品】『言葉の守り人』
【作者/訳者】ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ/吉田栄人
【推薦文】
 〈新しいマヤの文学〉第2巻で、原題は『マヤの賢人グレゴリオおじいさん』という児童文学。
ある日「ぼく」は村の古老から、彼が語る「お話を覚えて文字にする」という大事な役目を仰せつかる。それが様々な修行を経て「秘密の名前」を自分のものとし、鳥の歌や風の秘密を知って「言葉の守り人」になる日々の始まりだった。
古老からの教えはメディテーションでありイニシエーションであり、そして「ぼく」が過去から伝わる叡知を引き継ぎ、本当の自分を見つけるために必要なもの。キリスト教と結びついた、西洋的な「アイデンティティ」というものが入ってくる前のマヤの人々の自己実現とは、このようなものだったのだろうか。幻想描写は子供向けと思えぬほどの迫力に満ちていて、また美しい。
マヤを受け継ぐ文化に、これほど豊かな世界が広がっているとは想像もしていなかった。マヤ語で書かれた物語を日本語で読める。なんとありがたいことだろう。

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【推薦者】 Alicenousagi san
【推薦作品】『シャルロッテ』
【作者/訳者】ダヴィド フェンキノス/岩坂 悦子
【推薦文】
 26歳で亡くなった画家シャルロッテ の生涯。内容の重さを大袈裟ではなく淡々と語る文章。原作者の文体を損ねる事なく表現し、胸に深く残る作品であった。
翻訳者が主人公の人生を自身に重ね、人を愛し、絵を描く事を愛し、家族を愛し、なによりも生きることそのものへの情熱に強く共感した上での作品と感じた。
この作品を多くの人に読んで貰い、シャルロッテ ザロモンの作品にも触れる機会を持ってもらえればと願います。

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【推薦者】如月 小雪
【推薦作品】『セヘルが見なかった夜明け』
【作者/訳者】セラハッティン・デミルタシュ/鈴木麻矢
【推薦文】
 以前翻訳出版された、ノーベル賞作家オルハン・パムクの黒表紙の本から一転、今度は白い表紙。なにか関連があるのかと思いましたが、当然ながら全然なかったです。内容も、前作は難解でしたが、こちらはとても平易な文体。現代トルコの社会問題が描かれていますが、どこか寓話風で読みやすい。獄中で書かれたものとは信じ難い平明さとフラットさが心地よく、私はこちらのほうが好きでした。訳者の翻訳の幅に敬意を表して推薦します。

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【推薦者】最寄 ゑ≠
【推薦作品】『地球にステイ! 多国籍アンソロジー詩集』
【作者/訳者】四元康祐 編/岡野要、久保恵、倉本知明、三宅勇介、吉川凪
【推薦文】
 2020年は政治の言葉ばかりが喧しい一年だった。時々刻々と変容を重ねるコロナウイルスに各国の指導者たちは行く先を見失い、場当たり的な宣言が一時凌ぎの宣言に上書きされる。メディアに流れる街の声は是か非かの単純な二項分布に腑分けされ、市民の声は何処にも聞かれない。
『地球にステイ!』は、クオンの金承福社長の発案によって、56名の詩人たちの作品を集めた多国籍アンソロジー詩集である。ここにあるのは生なましい悲嘆、ささやかな日常、遠い未来を見据えた希望と諦念、コロナ禍(という言葉)に圧し潰されそうな人々の声である。

“「力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあわれと思はせ」るかどうかはさておき、狂気と蒙昧への抗体にはなりそうだ。本書をワクチンとして魂に接種してみよう。”
―四元康祐「はじめに」

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【推薦者】NO NAME
【推薦作品】『アウグストゥス』
【作者/訳者】ジョン・ウィリアムズ/布施由紀子
【推薦文】
 カエサル、娘のユリア、妻のリウィア、戦友であったアグリッパにマエケナス、政敵のアントニウスやブルトゥス…。様々な登場人物の手紙や回想録などを通して、ローマ帝国初代皇帝であり、歴代のローマ皇帝の中で最も優秀であったアウグストゥスの一生が鮮明に浮かび上がる構成になっている。
ジョン・ウィリアムズの登場人物に対する視点は、一貫して愛情深く、優しい。おざなりに扱われる人間はひとりもおらず、フィクションだと分かっていても、こうであったらいいのに、と思わせる人物造形は見事の一言だった。
巨大で傲慢なローマという国の自由を守るため、多くの葛藤と孤独を抱えた、ただのひとりの人間であったアウグストゥスに、最後は「よく頑張ったね」と声をかけたくなるような作品だった。

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【推薦者】宮原 將
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実』
【作者/訳者】ベン・ルイス・著/上杉隼人・訳
【推薦文】
 原田マハさんの「文藝春秋」の書評を読み、この本を知った。「男性版モナ・リザ」サルバトール・ムンディの存在は衝撃的だ。さまざま人たちの手から手にわたり、500年近くの時を経て、2017年に破格の値段で取引される。その後この絵は一般公開されていない。ものすごく読み応えがあるノンフィクションだが、翻訳のすばらしさでページをめくる手が止まらない。口絵のほか、冒頭につけられた「本書に登場する人物表」「絵がたどった年表」も理解の強力な助けになる。訳者のインタビューによる日本語版オリジナル記事もありがたい。原書よりも翻訳書のほうが価値がある。
 アートをとりまく桁違いの華々しさと、深い闇。アートの価値は誰がどのように決めるのか? 本書を読みながら、腰巻にあるコピーの文句を何度も考えた。
 驚愕の事実がぎっしり詰まった『最後のダ・ヴィンチの真実』。興奮の1冊を秀逸な翻訳で読ませてくれる本書こそ、日本翻訳大賞にふさわしい。

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【推薦者】中井 陽子
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉 隼人
【推薦文】
 2011年ロンドン・ナショナル・ギャラリーのダ・ヴィンチ展で「サルバトール・ムンディ」を見た。新たに真作と認められた「最後のダ・ヴィンチ」が初めて一般公開されたのだ。その後、史上最高の510億円で落札され脚光を浴びた絵は、19年ルーブルの「ダ・ヴィンチ没後500年展」にはなかった。一体どうして。
本書がその秘密を教えてくれた。美術界、絵画修復、投機、政治。この絵を取り巻く世界の闇と複雑さ、一枚の絵画が歴史と思惑に翻弄される様子があまりにドラマティックで驚愕した。果たして本当にダ・ヴィンチの作品なのか。膨大な情報が秀逸な翻訳で活き活きと立ち上がりミステリー小説を読むように没頭した。
訳者上杉氏の尽力による日本読者向けの最終章が余韻に残る。この素晴らしい翻訳書を読んで、当時ロンドンで購入した図録を改めて手に取った。図録番号91番、ラストを飾る「最後のダ・ヴィンチ」。もう一度この目で見たくなった。

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【推薦者】fumomo FJB
【推薦作品】『忘却についての一般論』
【作者/訳者】ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ/木下 眞穂
【推薦文】
 初めて読んだアンゴラの作家の小説なのだが、その複雑な政治的な背景により外界との接触を断ち立てこもる主人公とその周辺で起こる出来事をリアル且つ寓話的に描ききっている素晴らしい作品。世代や性別、環境やルーツが違う登場人物の言葉をそれぞれにぴったりの表現で訳されていて内容がしっかり入ってきた。おそらくアンゴラ特有の独特な言葉遣いなどもあったと思われるが、不自然さはまったくなくその空気までも感じさせてくれた。

 

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【推薦者】紅坂 紫
【推薦作品】『草地は緑に輝いて』
【作者/訳者】アンナ・カヴァン/安野玲
【推薦文】
 輝く緑の奥の深淵、闇は決して輝きと対になるものではなくて、輝きとともにそこにある。表題作から一貫して感じられたのは日常と、そこに潜む確かな闇の足音だった。アンナ・カヴァンの中期傑作短編を翻訳してくださったことに感謝したい。本作は2020年に読んだ作品の中でも最も好きだった。


【推薦者】Sogo Hiroshi
【推薦作品】『言語の七番目の機能』
【作者/訳者】ローラン・ビネ/高橋啓
【推薦文】
 傑作小説の邦訳版。本屋大賞翻訳小説部門第一位。1980年フランス思想界で起きた「事件」を起点に疾風怒濤の展開。オリジナル仏語のターボチャージャーを日本語仕様にコンバートし、見事な躍動感を実現した訳者の手腕に敬服しないではいられない。途中で閉じることができないくらい、読者の興味を鷲掴みにする魔書。

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【推薦者】北 まずる
【推薦作品】『キッズライクアス』
【作者/訳者】ヒラリー・レイル/林 真紀
【推薦文】
 自閉症スペクトラム障害の高校生の物語で、訳者さんがクラウドファンディングで翻訳出版費用を集めて出版されたものです。訳者さん自身も、自閉症スペクトラム障害のお子さんを育てていらっしゃいます。クラウドファンディングの段階で既に作品に惹きこまれる人が多く、注目していましたが、出版された作品は、作者の想い、訳者の想い、いろんなものが重層的に重なり合って素晴らしいものに仕上がっていました。一気に読むのがもったいないので、敢えてページを繰るのを止めながら読みました。

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【推薦者】小嶌 周
【推薦作品】『フライデー・ブラック』
【作者/訳者】ナナ・クワメ・アジェイ=ブレヤニー / 押野素子
【推薦文】
 差別を語るのは難しいことですが、その本質にスポットライトを当てる作品です。同時に、短編小説の魅力、生き生きとした会話文など魅力あふれる作品で、最後まで面白く読みました。本書のファーストトラックのフィンケルステイン5は衝撃的作品でした。
2020年はBLM運動が世界の耳目を集める年でした。2021年がどういった年になっていくかは分かりませんが、ぜひ本作が受賞作に選出され、その際には、訳者の押野さんと一緒に審査員の方々が構造的差別をテーマに存分に話されるのを聞きたいです。

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【推薦者】batakan 2020
【推薦作品】『獄中シェイクスピア劇団』
【作者/訳者】マーガレット・アトウッド/鴻巣 友季子
【推薦文】
 作品自体の素晴らしさもさることながら、作品のテンポにぴったりと寄り添ったように流れる日本語のリズムも素晴らしい。
囚人たちがビートを刻むラップはシビれた。
主人公の復讐劇は、テンペストを下敷きにして美しい余韻を残し、何度でも読みたくなる。

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【推薦者】須山 実
【推薦作品】『デーモン』
【作者/訳者】レールモントフ/前田和泉
【推薦文】
 「デーモン」は19世紀前半のロシア詩人、レールモントフによって書かれた物語詩である。
37歳で決闘により命を落とすまでの12年間にわたって改稿が繰り返され、文字通り半生をかけて書き上げられている。
「悲しきデーモン、追放の精霊が/罪深き大地の上を飛ぶ」とはじまる全1137行の詩文は、その涙が石を穿ったと謳われる悲嘆懊悩と雄渾な自然描写が相まった壮大な構成で、愛の不可能性に殉ずる死せぬ魂の絶望を描き切っている。
前田和泉さんの訳になる詩文は疾走感に満ちていて、自ずと声に出して読みたくなる。同時に詩行が目の裡で奥行きを深め、言葉がページから立ち上がってくる。絵画的であり、音楽的と云われるレールモントフの詩文の命が過不足なく、伝わってくるからだろう。
翻訳とは、訳者による作家への深い敬意に満ちた捧げものであることに、改めて思いいたる。


【推薦者】重森 美子
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉 隼人
【推薦文】
  2017年11月に「サルバドール・ムンディ」が世界最高額510億円で落札されたことはよく覚えています。1枚の絵がそんな途方もない額で取引されるのかと驚きました。それから3年後、本書が発売されたと知ってすぐに買って読んだ。予想をはるかに上回る面白さだった。「サルバドール・ムンディ」がどんな人たちの手に渡り、どんな歴史を歩んできたか?本当にダ・ヴィンチの作品か?本書が一つ一つ解き明かしていく。

 大学で美術を専攻しましたが、美術書を含めて翻訳書は日本語が硬いし、美術を知らない人が訳していたりするのであまり読まない。だがこの翻訳書のよみやすさはどうだろう。美術や絵の技法も見事な日本語に移されている。

 2019年のルーブル美術館のダ・ヴィンチ没後500周年大回顧展に出展されるはずだった「サルバドール・ムンディ」。結局展示されることはなっかたが、理由が本書にくわしく書かれている。
最高の翻訳書に出会えて嬉しい。

 

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【推薦者】マダム・リー
【推薦作品】『影を呑んだ少女』
【作者/訳者】フランシス・ハーディング/児玉敦子
【推薦文】
 ファンタジー、SF、ゴシック、英国史に惹かれる方ならビンゴ!な作品。もしかしてそれらが苦手な方にも意外なヒットとなるかもしれません。ハーディングの作品を児童書なのかもしれないなあと敬遠するのはもったいないですよ!滅法面白いストーリーを、丁寧かつ情熱的な日本語訳で読むことができて幸せでした。

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【推薦者】村野 きの子
【推薦作品】『プラヴィェクとそのほかの時代』
【作者/訳者】オルガ・トカルチュク/小椋彩
【推薦文】
 世界の中心にあるという架空のプラヴィェク村。そこに住む村人の幾世代かにわたる物語(出生と死が中心)に焦点化しながら、背景に20世紀のポーランド史(第一次世界大戦、独立、ソ連の支配、ドイツの支配、ホロコースト、戦後の社会主義体制)が浮かび上がる。ノーベル賞作家オルガ・トカルチュクの翻訳は、訳者の小椋さんによりこれが3作目。時空が解体するような神話的な美しい世界像が、日本語空間に見事に再現されている。作家の声と訳者の声が見事に合い、ヨーロッパの辺境に暮らす人々の小さな声をクリアに響かせる。


【推薦者】ウニプロ
【推薦作品】『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』
【作者/訳者】ジェスミン・ウォード/石川由美子
【推薦文】
 弟が白人に轢き殺され、ハリケーン・カトリーナに家を流された筆者だからこその物語の重量に圧倒される。実の父母に愛されないと感じる13歳の少年ジョジョ、大人になれず息子を素直に愛せない母レオニ、そして過去から現れる葬られぬ者たち。三人それぞれの語り手の誰に寄せて読むかで物語はがらりと変わる。三者三様の思考や語り口調の癖の訳し分けが上手く、感情移入できた。過去の黒人奴隷制の歴史を直視し、現代を睨みつけ、未来への飛翔を促すサーガ。

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【推薦者】堀 弘子
【推薦作品】『哲学詩集』
【作者/訳者】トンマーゾ・カンパネッラ/澤井繁男
【推薦文】
 現代にも通じるカンパネッラの哲学詩を見事に詩的に翻訳されていて、日本語でも感銘を受ける翻訳をされているところが素晴らしいと思います。


【推薦者】et cetera
【推薦作品】『レイシズム』
【作者/訳者】ルース・ベネディクト/阿部大樹
【推薦文】
 違う!違う!間違ってる!。人種差別のみでなく、女性,LGBTQ、障碍者、あらゆるマイノリティ差別に対する抗議が行間に流れている。
レイシズムを拭い去るには「民主主義を動かす」、そのためには対価を払わなくてはならない。対価を払うのは私たち自身である。啓蒙ではなく行動を。2020年に届いたアジテーション。

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【推薦者】くる くる
【推薦作品】『その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い』
【作者/訳者】ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー/古屋美登里
【推薦文】
 ハリウッドの名プロデューサーの信じがたいセクハラを暴いたジャーナリストの活躍を描いたノンフィクション。
セクハラを暴くのが「外部のジャーナリスト」というところがとても納得させられた。大きな力を持った人の不正を暴くにはやはり外部の力が必要だ。
コロナ禍でなければもっとイベント等で紹介され、売れた本になったと思うと残念。
翻訳者の古屋さんの熱意も素晴らしいです。

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【推薦者】大澤 さつき
【推薦作品】『セヘルが見なかった夜明け』
【作者/訳者】セラハッティン・デミルタシュ/鈴木麻矢
【推薦文】
  推薦理由は二つあり、一つ目はスピードです。
 この本は政治犯として勾留中の著者が刑務所で書いたということもあってか、短編ひとつひとつの主題は、トルコ社会の一場面を切り取ったものでした。政治的背景からは程遠い詩的な表現に癒されつつも、表題となった『セヘル』は、私たちに馴染みのない「名誉殺人」という言葉を知らしめ、衝撃をもたらしました。グローバル化が進む中、トルコをはじめとする中東域における社会問題を世に浮き出させる、いわば旬のものを、旬のうちに、遠く日本で読めることになったのは喜ばしい限りです。
 二つ目は、シンプルに人情豊かな小説が面白いということです。中東の社会問題の提起やフェミニズム論争が表立つのではなく、それぞれの物語に人間味のある愛すべき人物が主人公として登場しているから、どの物語をとっても親しみやすいのです。彼らの人情が心にきちんと響いたのは、翻訳の素晴らしさかなと思います。
 この本に関わった方に一読者としてお礼申し上げると同時に皆様に強く推薦したいと思います。

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【推薦者】K M
【推薦作品】『梨の子ペリーナ』
【作者/訳者】イタロ・カルヴィーノ 関口英子
【推薦文】
 酒井駒子さんの美しい絵がまず目を引く、宝物のような絵本です。

しかし、どれほど美しい絵があっても、読んで、聞いて、快い文章でなければ、だんだんその絵本を手に取る回数が減っていくものです。これは、読み聞かせのボランティアをしていたときに痛感したことです。絵本や児童文学は、訳者の力量がシビアに問われる分野だと思います。

この本は、関口英子さんの、温かみのある、流れるような訳文がとても気持ちがよいのです。とくに最後の一文はみごと。読んだ人がみんな「きげんよく」なる絵本です。

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【推薦者】杜 みどり
【推薦作品】『人間の権利の擁護/娘達の教育について』
【作者/訳者】メアリ・ウルストンクラフト/清水和子・後藤浩子・梅垣千尋
【推薦文】
 本書は著名な『女性の権利の擁護』の著者であり、「フェミニズムの母」と評されるメアリ・ウルストンクラフトの『人間の権利の擁護(1790)』、『娘達の教育について(1787)』の2作品を所収している。
『娘達の教育について』は初の著作で意外なほど保守的な感があり、『人間の権利の擁護』は、エドマンド・バークの『フランス革命の省察(1790)』出版後1か月以内にバークに対して彼女の強い抗議の意思を表明するために発表されたものだが、ウルストンクラフトの論理に飛躍もあり、またフランス革命、イギリス史等の背景知識も必要で難解である。ただ詳細な編注、訳注に理解を助けられ、200年以上も前に一気に書き上げた一人の若い女性の情熱を強く感じながら読み進むことができる。この両作品は後の『女性の権利の擁護』への萌芽となり、さらに21世紀に「人権は女性の権利であり、女性の権利は人権である」とした、H. クリントンの言葉にも確かに繋がっている。

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【推薦者】大鋸 一正
【推薦作品】『俺の歯の話』
【作者/訳者】バレリア・ルイセリ/松本健二
【推薦文】
 本書が何であるか、「作者あとがき」に記されている。
「現代アートと文学における価値と意味の生産をめぐる、集合的『小説-エッセイ』」。
文学作品に違いないが、もともとは二〇一三年にメキシコで開催された「狩人と工場」という現代美術の展覧会(実際に美術館のWebサイトにてその概要を閲覧することができる)のカタログに掲載するために書かれたものだという。著者とギャラリー、及び工場従業員とのコラボレーションとなる作品は、現実世界に滲み出すコンセプチュアルアート(の一部)でもある。
大胆な仕掛けから細部に至るまで、企みを拾い上げたらキリがない。生き生きとした語りはマジックリアリズムと無縁ではなく、さらに現代的な清潔さが感じられる。何よりも、この(表紙の色もドラえもん的な)抜け穴を通って、遠くの国とダイレクトに結ばれたような気がするのは、どういう訳だ。


【推薦者】あん でれ
【推薦作品】『パウラ・モーダーゾーン=ベッカー』
【作者/訳者】バルバラ・ボイス/藤川芳朗
【推薦文】
書店で手に取って、表紙もふくめて、なんて美しい本なんだろうというのが一点。読んでみて、一度だけ巡回展にいってみただけの画家だったが、でもそうか、初めて自画像、それもヌードを書いたひとがいたんだよなと改めて思い、さらに31歳で死んだこの女性の生きた時代について、徹底していて、かつ過度に重厚でないタッチで描かれていることに揺さぶられるところがあった。伝記文学の良さを改めて思った。

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【推薦者】門脇 智子
【推薦作品】「阿房宮」
【作者/訳者】郝景芳/及川茜
【推薦文】
『中国・SF・革命』所収の短編。気持ちのよい文章で、徐々に明らかになる発想への驚きとほどよい風刺とユーモアを楽しめます。いきのいい話し言葉の会話や語り手の独白部分がとても自然で、訳者はやはり役者でないと、と改めて思わされました。地の文も明晰で、特に迫力のある緻密でリアルな空間描写は、(中国語原文と比較できるわけではないのですが)2019年に出た同作者の短編集の訳者あとがきにある言葉を借りれば「レンズの解像度」の高い文章だという気がします。漢文読み下し文の格言がうまく効いていて、この感じを味わえる日本語の読者は他言語の読者より幸運かもしれないと思います。隣国の若手現代作家の作品を若手翻訳者の訳で読めることの嬉しさ、そして今後への期待を込めて推薦します。


【推薦者】雀來豆 (@jacksbeans2)
【推薦作品】『石を放つとき』
【作者/訳者】ローレンス・ブロック/田口俊樹
【推薦文】
「マット・スカダー」の新刊。待ってましたなのだが、手放しでウホウホと浮かれながら読み進めたわけではなかった。
というのも、2012年に「償いの報酬」が出たときに、同シリーズの長編はこれで最後だろうという覚悟はあったわけだし、読了したときにはさようならスカダーと挨拶をすませ感慨もひとしおでしたというブログの記事も書いてしまっていたからで、8年後になって思いがけず新刊が読めることになっても何だか単純に喜ぶ気持ちにならなかったのだ。
もちろん「石を放つとき」の素晴らしさったらないのであるし短中編集ならではの魅力も充分で「読後の心地よい余韻に今も浸っています」とこの文を締めればいいのだろうが、やはりそうはいかない。
それは、いよいよ本当にスカダーとのさよならの時がやってきたのだということが分かっているからであり、それだけではなく、これが古き良き「私立探偵小説」との別れでもあるということを感じているからである。

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【推薦者】本橋 祈
【推薦作品】『キッズライクアス』
【作者/訳者】ヒラリー・レイル/林真紀
【推薦文】
主人公は自閉症スペクトラム障害の高校生、マーティン。このマーティンがフランスで過ごしたひと夏を描いている。

アメリカでスペシャルニーズの子供のための学校に通っていた彼が、初めて体験する普通校での生活。主人公の特性もあり、とりわけ言語によって強く認知される外国、異文化、異世界。

マーティンの目と思考を通した世界が、繊細で清涼感あふれる訳者の言葉によって、鮮烈なイメージとなって読者の脳内に広がる。私は読んでいる間、完全に彼らの世界に入り込んだ。外国語の中に身を置いて自分の身体とこれまでの体験をより意識しているような、あの感覚。

この本を読むことで、活字は映画よりももっとずっと、人間の心理を内側から理解できるツールなんだとあらためて思った。書かれている内容はきれいごとばかりでは決してないのに、読み終わった後には心が晴れわたったような、爽快な気分を味わえる作品であったことも付け加えておきたい。

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【推薦者】岡本 真梨子
【推薦作品】『キッズライクアス』
【作者/訳者】ヒラリー・レイル/林真紀
【推薦文】
自閉症スペクトラムの青年が主人公で、彼の感じ方や見ている世界にどれだけ読者をシンクロさせられるか、という翻訳の力が、非常に重要な役割を果たしている本作において、訳者の林さんの選んだ瑞々しい言葉や、自閉症の人特有のものの見方を追体験できるような世界の切り取り方は、素晴らしいと思いました。私は、自閉症スペクトラムの方と多く接してきた立場ですが、読み進めながら、この感覚をここまでわかりやすく言語で表現できるのか、と大変驚き感動しましたので、推薦いたします。

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【推薦者】かねつぎ ひろし
【推薦作品】『実は、内向的な人間です』
【作者/訳者】ナム・インスク / カン・バンファ
【推薦文】
作者が思う内向的な特徴を色々な側面から書いている。
内向的を否定することなく、「みなさんもこんなことありますよね・・・」のような感じの文章で、作者の思いが身近に感じられ、最初は本のタイトルからして気難しい話かなと思ったが、想像と異なり非常に読みやすい本であった。
特に共感したのは、「人生で手に入れてよかったと思えるものの多くは、”社会性オン”のときに得たものだ」と言う箇所である。
特に営業職の私としては、社会性スイッチをオンにすることは絶対であるが、思い起こせば社会性スイッチをオンにしてたからこそ生まれた人間関係も多々あったなと思ったからである。
今世界は誰もが想像してなかったコロナ渦の時代である。
デジタル化が急速に発展していく世の中で、内向的な人また外向的な人も社会とのかかわり方について変化が求められるのではと、読み終えて考えさせられる作品でもあった。

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【推薦者】もよそん 氏
【推薦作品】『レイシズム』
【作者/訳者】ルース・ベネディクト/阿部大樹
【推薦文】
本の出版されたタイミングが、まさにBlack Lives Matterが連日報道されていた時期で、文庫本の出版のタイミング(意義?)として素晴らしいなと思いました。出版のトレンドが変わってきているのを感じるなか、振り返りに終わらない前向きな動きの一環となったように思いました。

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【推薦者】阿真 京子
【推薦作品】『キッズライクアス』
【作者/訳者】ヒラリー・レイル/林真紀
【推薦文】
訳者あとがきで、『本は情報を集めるためのものでしかなかった』けれど、『本を楽しんで読むという感覚を久しぶりに味わった』とあります。

私もそんな情報収集目的の読書ばかりしていました。それがこの『キッズライクアス』では、本の世界にふっと入っていくことができました。

私が、フランスの田舎町でひと夏を過ごしたあとのような清涼感。

あっという間に誰かになりきって、あっという間にその世界に没入して、喜んだり悲しんだり、読書がそんな体験だって、すっかり忘れていました。

自閉症スペクトラム障害の高校生マーティンの恋や葛藤が描かれているのですが、マーティンだけでない、ひとりひとりそれぞれに生きづらさは抱えていて、そこに向き合っている。そこがとてもストレートに胸を打ちます。

この本が翻訳されていなかったら、私に届くことはなかったことを思うと、訳者の方がクラウドファンディングしてまで届けてくださったことが嬉しいです。

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【推薦者】ウシ 114
【推薦作品】『反政治機械: レソトにおける「開発」・脱政治化・官僚支配』
【作者/訳者】ジェームズ・ファーガソン/石原美奈子、松浦由美子、吉田早悠里
【推薦文】
今日、世界中で失敗した開発プロジェクトが溢れている。多くの開発プロジェクトが失敗しても、開発プロジェクトが減ることはない。
本書は1970~1980年代にレソトで行われた開発プロジェクトに焦点をあて、プロジェクトが失敗した原因を説明するにとどまらず、結果として開発が官僚的国家権力の拡大という、意図しなかった結果を明らかにした学術書である。1990年に出版されてから30年を経て日本語訳が出版された。それでも、内容的に古さを感じない。
本書のなかではフーコーの生権力の概念など、理論的には極めて難解な内容になっているにもかかわらず、レソトにおけるウシや財産をめぐる男女のやりとりなど、まるでゴシップ記事を読んでいる感覚で読める。ゴシップ記事が気になって、そして翻訳の読みやすさもあって、どんどん読み進めることができる。


【推薦者】貝野 千沙都
【推薦作品】『パチンコ』
【作者/訳者】ミン・ジン・リー/池田 真紀子
【推薦文】
英語によって書かれた、在日コリアンの一族の物語。
日本の植民地政策に始まる歴史の波に翻弄される何世代もの家族の姿を描きます。
荒ぶることなく淡々と描かれた文章は、読む者にも時代を一気に駆け抜けさせる力を持っています。

在日コリアンの友人、職場の同僚もいる私は彼らにとって良い隣人としてありたいと常に思っていました。でも、この本を読み、よく理解していなかったことがあまりにも多いことに愕然としました。

ただ生まれてきただけなのに、理不尽さや差別を浴び続けること。その苦しみは、何世代にも渡って続き、彼らを取り巻く世界は、今なお醜悪なままで、希望が持てる兆しがないこと。

このような物語が、日本語で描かれなかったことこそが、多くを物語っていると思います。

ぜひ、賞を取り、世間の耳目を集め、多くの人に手に取ってもらい、この日本にどれだけいるかわからない、他のソンジャたちの物語に思いを馳せてほしい。
多くの人に響く物語だと思います。推薦します。

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【推薦者】大恵 和実
【推薦作品】『1984年に生まれて』
【作者/訳者】郝景芳/櫻庭ゆみ子
【推薦文】
20世紀後半の中国に翻弄された父と、現代中国の荒波にさらされる娘。現実と虚構の境が揺らぐ『1984年』オマージュ。親子の葛藤と青春の彷徨を描いた自伝体小説(&広義の中国SF)に心を鷲掴みにされました。
フェミニズム文学でもあり、青春小説でもあり、社会小説でもあり、家族小説でもあり、実験小説でもあり、SFでもある。読めば、誰しもがあの青春の苦悩を思い出すのではないだろうか。

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【推薦者】川又 あきこ
【推薦作品】『ブラックホールの飼い方』
【作者/訳者】
ミシェル・クエヴァス/杉田七重
【推薦文】
ブラックホールをペットとして飼う。
飼う?
とっぴな設定は作者ミシェル・クエヴァスの得意とするところだが、その奇想天外な舞台で、主人公の心情を見事に描きだす技は見事。
児童書ですが、大人の方にもおすすめしたい感涙本です。

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【推薦者】イニエスタッソ
【推薦作品】『理由のない場所』
【作者/訳者】
イーユン・リー/篠森ゆりこ
【推薦文】
「悲しい」の小説です。もちろんお涙ちょうだい系ではなくて、暗い話題が続くわけでもないのですが、小説を読んでいて、こんなに「悲しい」を感じたのは初めてです。私の表現力がなくてうまく紹介できませんが、翻訳が良くないと絶対にこんなふうにはならないと思うので、今年は早々に推薦作を決めてました。


【推薦者】近江 富美代
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉 隼人
【推薦文】
訳者あとがきを読んだだけで、この翻訳家の仕事がどれだけすごいかわかる。
著者と相談して「日本語オリジナル版」を作ることにした。割愛できるところは割愛し、訳者が解説をつけた。
原書のハードカバー版を訳し終えたところで、著者からペーパーバック版刊行に向けた膨大な修正が届く。訳稿を最初から見直し、原書の削除部分を削り、新たな書き足し部分を訳して、全体を調整。
レトリックも比喩表現も美術用語も、非常に分かりやすい、流麗な日本語になっている。
英語だけでなく、イタリア語、フランス語、ロシア語の記述もすべて訳出。
特殊な法律関係の表現も含めて注はすべて訳し、日本人の読者に必要なものは訳者注をつけた。
著者に英語でインタビューして、日本語版オリジナル記事をまとめた。
ノンフィクションなのに上質のミステリーのように楽しめる。
これだけのことを短期間で一人の訳者がこなした。新時代の翻訳として評価されるべきだ。

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【推薦者】OK Computer
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実』
【作者/訳者】ベン・ルイス / 上杉隼人
【推薦文】
ダ・ヴィンチを巡る膨大な翻訳書に、極上のミステリー小説のごとく一気読みしてしまう新たなノンフィクションが登場した。偶然目にしたキリストの絵がレオナルドの作であると確信したギャラリスト、明らかになる驚異的な絵の来歴、やがて繰り広げられる空前のオークション-果たしてこの絵の本当の作者は?筆者ベン・ルイスはBBCでドキュメンタリーを製作していた手腕を生かし、この格好の素材を膨大なリサーチで以て、サスペンス風に追い詰める。訳書の読みやすさからは想像し難いが、原書はイタリア語、ロシア語も含む美術、歴史、経済用語に溢れ、シニカルな難しい文体だ。上杉隼人さんは見事にこれを訳出、500ページ近い大作を一息に読ませる。作品についての新事実をフォローした筆者が初稿とはほぼ別物の改定版を出版、一からそれを訳し直し、筆者の信頼を得て日本の読者用に編集もやり直したという。訳者の誠実な仕事の賜物、多くの方に読んで欲しい。

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【推薦者】宮月 中
【推薦作品】『魅惑の蘭事典~世界のオーキッドと秘密の物語~』
【作者/訳者】
フランソワーズ&フィリップ・ルクフル/江尻宗一監修、ダコスタ吉村花子訳
【推薦文】
金付けされた小口の美しい、小柄な蘭の事典です。まず机に横たわってるだけで思わず少し微笑んでしまう装丁の美しさ。素敵です。

さて事典と言ってもただ品種を並べただけではありません。蘭の生態から、歴史、信仰、文化などの知識が存分に散りばめられた前半はまさに「驚異の部屋」。現在十七万品種ともいわれる蘭がいかに人を魅了し、冒険、蒐集、栽培、食、詩作に駆り立てたのか。あるいは、いかに人を惑わし、犯罪や事故や不思議な出来事を巻き起こしてきたのか……読めばきっと、祝いの場に添えられる花への目線も違ったものになることでしょう。

挿画は写真ではなく、古今東西の植物図版が引用されています。細やかな線と豊かな彩りで描かれた挿絵の数々が、本書を目で楽しめるものに仕上げています。日本語監修は蘭栽培と保全の道では知られた方のようです。

植物好きや博物誌好きにはもちろん、興味のない方にもぜひ一度、手に取って欲しい一冊です。

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【推薦者】どれみ ふぁ
【推薦作品】『存在しない女たち』
【作者/訳者】
キャロライン・クリアド=ペレス/神崎朗子
【推薦文】
わたしは日本翻訳大賞の第1回からのコアなファンだ。先日の翻訳ラジオで、「翻訳時の声が自分にはひとつしかないから共訳する」とおっしゃる方がおられて耳を疑った。翻訳者としてあまりに怠惰ということに加え、関西弁だから、詩だからという言い訳以外に、それが共訳者(の女性)からの芸術搾取になりかねないことになぜそうも鈍感でいられるのか。他の方々の無反応にも落胆した。そのような”モスキート音”の聞こえない人たちに、男女を問わずフェミニズムの書を訳す資格はないと思う。アンチテーゼとしてこの本を推薦する。


【推薦者】横 浜
【推薦作品】『忘却についての一般論』
【作者/訳者】ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ/木下眞穂
【推薦文】
主人公の女性が戦禍に巻き込まれ、自らをマンションの部屋に閉じ込めて二十八年も自給自足の生活をおくる。
この一つの物語の筋に様々な人々の物語や表徴的な物と生き物たち、散文と詩文が絡み合い、忘却を問いかける、忘れがたい小説が誕生しました。
本書が翻訳されたことを忘れさせてはいけないと思い、推薦させていただきます。

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【推薦者】小山 あずき
【推薦作品】『ザリガニの鳴くところ』

【作者/訳者】ディーリア・オーエンズ/友廣純
【推薦文】
物語に夢中になり、主人公の幸せを祈りながら読んだことは初めてです。自然の描写がすごくきれいで、著者が自然を愛していることや、風景や植物を想像しながら読むことができたことも魅力のひとつです。自然の描写の翻訳がよかったのではと思いました。最後に大きく想像を裏切られたのですが、「よくやった」と拍手を贈りたくなりました。

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【推薦者】短笛 吹子
【推薦作品】『三体Ⅱ』
【作者/訳者】劉慈欣/ 大森望、立原透耶、上原かおり、泊功
【推薦文】
1を読んだ時から続編を心待ちにしていました。発売日に書店のレジに並ぶと2人に1人はこの青く光る表紙の分厚い本を抱えていました。
表紙も絶妙に中二病心をくすぐりつつ、しっかりカッコ良い。中身はとにかくワクワク!ワクワク!見事な筆力と説得力で、チープにならない壮大な現代のSFがここにある。3作目が待ちきれません。

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【推薦者】足下 研
【推薦作品】『わたしたちが光の速さで進めないなら』
【作者/訳者】キム・チョヨプ/カン・バンファ,ユン・ジヨン
【推薦文】
 科学技術の進化によって到達した未来は、よりよい世界になっているだろうか?
克服されるべきものとしてみなされる正常という概念とそれにより生み出される差別を、ありとあらゆる角度から美しく儚く描きだされてしまった。

SFで描かれるのは結局のところ人のありようだとおもうのです。 そう意味で言うとこの一冊に収められた一編一編がもう人間のおろかしさややるせなさ、なさけなさみたいな負の面をやさしく描きだしてしまっていて、そしてその行為自体に不思議ななつかしさを感じるのです。
そう、あるデザイナーさんが言ってました。 うつくしいとはなつかしいである、と。

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【推薦者】高津 華佳
【推薦作品】『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』
【作者/訳者】キース ネグレー/石井睦美
【推薦文】
世界で最初にズボンをはいた女の子の実話です。舞台は、今から約150年前のニューヨーク。モデルは、後に女性初の軍医として活躍し、フェミニストとして知られたメアリー・E・ウォーカーです。当時のアメリカでも女の子の服はドレスと決まっていました。しかし、メアリーは、女の子はズボンをはいてはいけないという常識に疑問を問いかけ、ズボンをはきます。もちろん、人々は皆、メアリーを非難します。メアリーはこう言います。 「男の子の ふくを きているんじゃないわ わたしは わたしの ふくを きているの」
素敵な日本語訳です。原作は知らないのですが、まっすぐでわかりやすく、ユーモアのある言葉選びだと感じました。

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【推薦者】し ろ
【推薦作品】『理由のない場所』
【作者/訳者】イーユン・リー/篠森ゆりこ
【推薦文】
16歳の息子を自殺で亡くした母親と今はもういない息子が対話、時には口論をしている。
「今もここにいる」相手との対等で誠実であろうとするやりとりから、抑制された悲しみがのぞく。
解説の作者の言葉から、母語である中国語を捨てて英語で執筆をすることについて。
「後から選んだ言語で感じることは困難ではあるが、私の母語では不可能だ」
それでも言葉にせずにはいられなくて書かれた本が、また別の言葉になって誰かに届く。


【推薦者】かおかお
【推薦作品】『その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い』
【作者/訳者】ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー/古屋美登里
【推薦文】
社会に大きな変化をもたらした#MeToo運動ですが、その原点がアメリカで発表された1つの記事、というのは日本人の中では、そこまで知られていません。いったいどういう流れで#MeToo運動はここまで大きなうねりとなったのか、その源流を知ることが出来る、非常に価値のある1冊だと思います。

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【推薦者】黄 英治
【推薦作品】『滞空女』
【作者/訳者】
 パク・ソリョン著、萩原恵美訳
【推薦文】
 原著は朝鮮平安北道出身の主人公の方言を語りに導入しているという。本書の翻訳は、家父長制のもとで公的な学びから疎外されていながらも、自らの経験を通して、民族の解放と労働の解放へと突きんでいった女性の生涯を、柔らかくも味わい深く、素朴な言葉によって、夢にいきいきと躍動する主人公を描きだした。その物語から、読者は希望を読みとる。

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【推薦者】御池 河童
【推薦作品】『アフリカの森の女たち――文化・進化・発達の人類学』
【作者/訳者】ボニー・ヒューレット/服部志帆、大石高典、戸田美佳子
【推薦文】
アフリカの森に暮らす4人の女性の語りに、ぐいぐいと引き込まれていく。語りの力を実感できる一冊。アフリカ熱帯林での長期のフィールドワーク経験を有する研究者が翻訳にあたった。丁寧な訳注が付けられており、アフリカの社会に馴染みのない読者にとっても、現地の女性が生きる生活世界の肌触りが伝わってくる翻訳になっている。


【推薦者】ちく わぶ
【推薦作品】『フレドリック・ブラウンSF短編全集 3 最後の火星人』
【作者/訳者】フレドリック・ブラウン/安原和見
【推薦文】
フレドリック・ブラウンの持ち味は突飛なアイデアとキレのいいオチにある。老若男女も問わない、誰もが楽しめるわかりやすい芸風で、繊細な心の機微や最新の科学知識とは縁がない。「小難しくて賢い人向け」のように思われがちな翻訳文学だが、このシリーズは手を付けやすい短編集でもあり、初心者を沼に引きずり込むには格好の餌でもある。だからこそ、その訳文には、初心者にやさしいとっつきやすさ・親しみやすさが必要だ。安原氏の訳文は、アイデア中心のブラウンの芸風を活かし、みもふたもないとすら言えるほどに「わかりやすさ」を突き詰めている。作家と訳者の相性も良く、脂が乗り切っていた頃のブラウンの芸が堪能できる楽しい作品集だ。名前だけは有名な「スポンサーからひとこと」を収録しているのも、本書の見逃せないポイントだろう。実際、有名なだけのことはある愉快な作品なので、ぜひお読みいただきたい。

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【推薦者】松下 昌弘
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉隼人
【推薦文】
ダ・ヴィンチは作品数こそ少ないものの、同一画題の別作品が多く美術関係書の翻訳では神経をつかう。本書を推薦するのは、その困難を乗り越えた見事な訳業であるからに他ならない。
著者のベン・ルイスはドキュメンタリー作家で、美術史のメインストリームに対して批判的なスタンスを崩さない。しかし批判する側の記載に間違いがあれば、それは悲惨なことになる。そこで訳者の上杉氏は綿密に調べ原註以上に適切な訳註を補っている。大きなミスは見つけられなかった。
何よりも讃嘆したいのは、批判精神を含んだルイスの原文を、禁欲的に中道を保ちつつ訳していること。この文体の抑制により、終盤のルイスの追加取材にミステリーのような味わいが生まれた。
上杉氏の訳書はおそらく20冊以上読んでいるが、今回の翻訳はまさに最良のもの。フィクションを訳す際のスピード感あふれる文章が特徴的だった彼が、ここまで成長したのかと目を見張る思い。柴田元幸氏を目標に努力し続けた彼が到達した今回の成果に対しては、何かしら報われても良いのではないかとの思いから、推薦させて頂く次第である。

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【推薦者】クライオセラピスト なおいまき
【推薦作品】『猫のユーユー』
【作者/訳者】アレクサンドル・クプリーン/サブリナ・エレオノーラ・豊田菜穂子
【推薦文】
クプリーンはロシアでは分厚い全集が発刊されている作家です。その分厚い全集の中から、心がホッとする短編を美しい日本語に翻訳された本書。装丁のカラフルな色合いと、クプリーンのキラキラした短編たちがぴったり。コロナ禍の中、移動の際に持ち歩きました。犬のサプサンや猫のユーユーの言葉が聞こえてくるようでした。日本の大人と子どもに、ロシア文学の懐の深さを知ってもらえる一書だと思います。


【推薦者】egg 09
【推薦作品】『ザリガニの鳴くところ』
【作者/訳者】ディーリアオーエンズ/友廣純
【推薦文】
においがたちこめるような自然の豊かな描写
圧倒的な孤独

1人の女性の人生の物語

静謐で緻密に描かれた自然が鮮やかに目の前に浮かびます
これから何度も読み返す
大切な本になりそうです

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【推薦者】奥山 俊郎
【推薦作品】『猫のユーユー』
【作者/訳者】アレクサンドル・クプリーン/サブリナ・エレオノーラ・豊田菜穂子
【推薦文】
まずは、先生が訳されている言葉が非常に素晴らしく大変読みやすかったです。

海外の方が原作、日本人が日本語訳の本も読むのですが、私の読み方が悪いのかスット入ってくる本は少ないように思います。でも、この度頂いた本はスット入ってきました。

また、忙しさの中で忘れていた心の豊かさを提供頂けたように思います。
特に『ゾウさんのお見舞い』『青い星』『百年に一度の花』は、どれも良かったのですが私の心には非常に響きましたので推薦させていただきます。


【推薦者】樋口 芽ぐむ
【推薦作品】『「他者」の起源 ノーベル賞作家のハーバード連続講演録』
【作者/訳者】トム・モリスン/荒このみ
【推薦文】
差別の元となるプロセスとして、「他者化」という考えを著者は提示する。肌の色、文化の違い、属性などで対象を自分とは「他者」として認識し、「他者」の苦しみ境遇に無頓着になる。本書では黒人差別が扱われ、けれど「他者化」という考えは人種・セクシュアリティ・障害など広い対象への汎用性があると思われる。森本あんり氏による補足的な解説も必読。

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【推薦者】トルテ
【推薦作品】『新しい目の旅立ち』
【作者/訳者】プラープダー・ユン/福冨渉
【推薦文】
第一印象では不思議に感じるタイトルが、読み進めるうちにだんだんとしっくりくる。多様な活躍をするタイのカリスマ作家が、30代半ばを迎えて、「自分の頭の中にあるものに対するぼくの飽きは、ほとんど限界に来ていた」と、探究と思索の旅に出た。フィリピンの“黒魔術の島”という字面とは裏腹に、その旅は刺激に満ちたものとはいえない。探究はもっぱら内面で起こり、汎神論とスピノザ哲学、超越主義とロマンティックな自然愛護、ガイア理論へと広がっていく。生身の体を取り巻く世界と冷めた距離感を保ちながら、ひたすらに自己を見つめていく著者の、思考のうつろいが誠実に綴られていき、同時代に生きる“都市の人間”としての感覚がダイレクトに響く訳文。タイ文学研究者である訳者の解説も充実していて、タイカルチャーや著者の位置付けがよくわかるのも良かった。

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【推薦者】髙松 祐似
【推薦作品】『理由のない場所』
【作者/訳者】イーユン・リー/篠森 ゆりこ
【推薦文】
16歳の息子を失った数週間後から書き始められた作品。著者である母と息子が言葉を交わしていく、16章から成る対話。
「肉体」も「精神」も「時間」も、あらゆるものを超え言葉によって紡ぎだされた空間は、まぎれもなく”二人だけの世界”。
本書を好きになることに、理由などいらない。
そう心から思える作品に出逢いました。


【推薦者】丈夫な 熊
【推薦作品】『文化は人を窒息させる』
【作者/訳者】ジャン・デュビュッフェ/杉村昌昭
【推薦文】
「いい/わるい」というか、「いい/それほどでもない」の判断基準が、
書評とか評論によって決まってしまう事への疑義。
サブテキストをたくさん産むタイプのもの、本とか、絵画とかが
「評価」されやすいけど、それって評論で食ってるひと(ないし業界)の都合であって、作品の価値とは関係なくない?
という積年のモヤモヤを、びたりと書かれた気がした。
ぐうの音も出ない本。


【推薦者】Blues (ブルース)
【推薦作品】『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』
【作者/訳者】ジェスミン・ウォード/石川由美子
【推薦文】

 圧倒的な想像力!
 読み終わった瞬間の震えるような感動!
 ウォードは現代アメリカの陰を徹底的にえぐりながら、世界中の<葬られぬ者たち>に光を当てる。
 南部ゴシック小説であり、マジックリアリズムであり、ビルドゥングスロマンであり、家族小説であり、ロードノベルでもあるこの小説は、透徹した愛の物語なのだ。
 フォークナーとトニ・モリスンを継承するウォードは、自らの半生を省み徹底的に描き出す。そのことで、<葬られぬ者たち>ばかりか、COVID-19下で苦闘するわれわれを鼓舞してやまない。
 さあ、今こそ歌え、力の限り歌おう!

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【推薦者】関 良輔
【推薦作品】『セヘルが見なかった夜明け』
【作者/訳者】セラハッティン・デミルタシュ/鈴木麻矢
【推薦文】
この本を読んで初めてトルコの名誉殺人について知りました。自分は視線を向けていない社会に存在する常識を知り、とてもショックであり、読んでから半年以上経った今でも内容がすらすら浮かびます。
名誉殺人についての説明がない分、登場人物たちが「土地の掟」を受け入れているんだと思わされました。

別の短編でも通勤途中にテロに遭遇した主人公と彼女が催涙弾を嫌悪する場面がリアルであったり、彼女が家政婦として勤めている家の奥さんとのやり取りが温かかったりと、知らない土地の珍しい出来事ではなく身の回りにある非常にまずい問題を取り上げられているのを強く感じる一冊です。

原文はトルコ語で書かれているのだと思いますが、日本人作家が書いた日本が舞台の話と同じような自然な気持ちで読め、一気読みでした。文体がすーっと入ってくるだけに語られる物語の異国さが際立っている気がします。

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【推薦者】なかやま なかし
【推薦作品】『プラグマティズムはどこから来て、どこへ行くのか』
【作者/訳者】ロバート・ブランダム 著 |加藤 隆文 訳 |田中 凌 訳 |朱 喜哲 訳 |三木 那由他 訳
【推薦文】
まずこれを全部やろうと思った心意気が良い。訳はいわゆるトランスパレントな訳でありながら、日本語の構造とか、語順によって意味が変わるところなどはしっかり押さえられていて、相当に煮込んだんだなという印象。哲学書に、このレベルの訳本が50年前からずっとあったらなと思いました。

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【推薦者】後藤 淳一
【推薦作品】『哲学詩集』
【作者/訳者】トンマーゾ・カンパネッラ/澤井繁男
【推薦文】
反キリスト・宗教改革・ルネサンス・アリストテレス…、カンパネッラが記さねばならないことは多い。使徒信条を念頭に書かれたと思われる詩21の「理性に燃えたぎって死ぬ人」は、イエスよりむしろカンパネッラ自身と重なる。詩は「不敬虔な生者を糾弾させよ。」と続くのだが、この解釈では、カンパネッラ=「理性に燃えたぎって死ぬひと」が神になる。聖職者でありながら危うさが漂う。
「危うさ」を感じることができたのは、まさに翻訳の質なのだろう。
「モダン」の転換期、再考が必須のプレモダンを肌で感じるための1冊でした。


【推薦者】田仲 真記子
【推薦作品】『獄中シェイクスピア劇団』
【作者/訳者】マーガレット・アトウッド/鴻巣友季子
【推薦文】
昨年の新刊の外国文学の中で、ずぬけて軽やかで、楽しく読み進めた一冊。重厚な印象のあるアトウッドなのに。シェイクスピアの語り直しなのに。帯文をパクって言えば、鴻巣友季子さんの才気が迸る、マジカルな語りなおし。

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「第七回日本翻訳大賞 推薦作品リスト3」はこちら