受賞挨拶 パトリック・シャモワゾー

受賞作パトリック・シャモワゾー『素晴らしきソリボ』(関口涼子、パトリック・オノレ訳・河出書房新社)の作者、パトリック・シャモワゾーさんから届いた挨拶を掲載します。


 

ある作品が丁寧に翻訳されるとき、その作品の言語は、ほかの言語にとって手が届きやすい存在になるだけではありません。
翻訳は、真の意味で二つの言語を関わらせる行為なのですが、そこで関係を持つのは、翻訳という文学言語の錬金術によって伝達可能なものばかりではなく、同時にその明白さの内部そのものに生息する、伝えられない何ものかでもあるのです。つまり、言語の不透明さ、還元不可能なあらゆるもの、すべての差異もまた、翻訳の中で関わりあっているのです。
翻訳者はそのようにして「世界のさまざまな色調を組織化し調和させる」存在です。翻訳者は、光と影を同時に見守る言葉の羊飼いにほかならないのです。
そうしてこの羊飼いは、予測不可能な遭遇や接触のまっただ中でも、ダメージを受けることなく移動を続ける私たちの想像力、そしてその多様性の世話をし続けてくれています。
関口涼子さん、パトリック・オノレさん、そうした歩みの中にある詩の精神を開示して頂いたことを深く感謝しています。

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