第一回日本翻訳大賞 推薦作品リスト

2015年2月5日(木)23:59まで第一回日本翻訳大賞の候補作を募集しています。

ここでは皆さまから推薦をうけた作品と推薦文をご紹介致していきます。


【推薦者】藤野 可織
【推薦作品】『われはラザロ』
【作者】アンナ・カヴァン
【訳者】細美遙子
【推薦文】
これでもかと繰り出される絶望!悲しみ!疎外感!そのすべてに心をえぐられ、笑い、やっぱりまたえぐられました。

われはラザロ

われはラザロ

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アンナ・カヴァン
文遊社
売り上げランキング: 393,254

【推薦者】SY
【推薦作品】『逃亡派』
【作者】オルガ・トカルチュク
【訳者】小椋彩
【推薦文】
断章から成り立つ複雑な構成を、流れるように読ませていただきました。翻訳の力がなければこの傑作と出会えなかったと思い、選びました。

逃亡派 (EXLIBRIS)

逃亡派 (EXLIBRIS)

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オルガ トカルチュク
白水社
売り上げランキング: 531,327

【推薦者】香澄
【推薦作品】『マリアが語り遺したこと』
【作者】コルム・トビーン
【訳者】栩木伸明
【推薦文】
聖母マリアが語るイエスではなく、母としての視点から語られるイエス像。一人の母として「わたし」は「息子」を見つめ、既に起こってしまった出来事を語り続ける。時々、物語の中に満ちた光や、人々の気配や衣擦れまでをも浮かび上がらせるような文章に出会えることがある。これはまさにその一冊。翻訳というものは、原文と読者を繋いでくれる糸のようにも、また橋のようにも思える。これからも、丹念に紡いだ素晴らしい文章で、読者を本へと結びつけて頂けることを願っています。

マリアが語り遺したこと (新潮クレスト・ブックス)
コルム トビーン
新潮社
売り上げランキング: 368,313

【推薦者】 松田青子
【推薦作品】『密林の夢』
【作者】アン・パチェット
【訳者】芹澤恵
【推薦文】
かなりの無茶をするくせに、言うことは冷静なスウェンソン博士の語り口に何度も笑ってしまいました。
あまりに気持ちの良い読み心地に陶然となりました。
密林の夢

密林の夢

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アン パチェット
早川書房
売り上げランキング: 284,658

【推薦者】hrn
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
物語の素晴らしさもさることながら、後書きで語られた訳者東江一紀さんの姿が、私にこの本をより一層深く忘れられない作品にしてくれました。知を求めること、愛すること、生きること。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 17,176

【推薦者】ヤヤー
【推薦作品】『さよならのドライブ』
【作者】ロディ・ドイル
【訳者】こだまともこ
【推薦文】
児童書なんぞと侮ってはいけません。海外の児童書やYAには、なんて魅力的な大人が登場するのでしょう。常識やしきたり、あるいはしがらみに縛られてコチコチに凝り固まったアタマを粉々にしてくれます。そして、じぶんもこんなふうにトシを取りたいと思うのです。重厚な一般書の翻訳の推薦も考えましたが、だれにでも読める本こそ、実際に多くのひとに読んでほしいと願っています。

さよならのドライブ (文学の森)
ロディ ドイル
フレーベル館
売り上げランキング: 151,854

【推薦者】ぱる子
【推薦作品】『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』
【作者】マイケル・ルイス
【訳者】渡会圭子・東江一紀
【推薦文】
「自分が買う(売る)と必ず価格が逆に動きます。隠しカメラで監視されているとしか思えません」「またヘッジファンドに狩られました」……ネットの投資掲示板にあふれる怨嗟の声も、あながち妄想の産物ばかりとはいえないのではと思わせてくれる怖い一冊。市場から薄利を超高速で繰り返し奪い去っていく「フラッシュ・ボーイズ」(超高速取引業者)は年金基金もターゲットにしているから、直接ネット取引を行わないあなたも無関係ではいられない。解説を読むと、対岸の火事どころではなくフラッシュ・ボーイズは既に日本にも進出しているという……。
実はタイトルに反してこの本の主役はフラッシュ・ボーイズではなく、フラッシュ・ボーイズに食い物にされない取引の場を求めて遂にはそれを創り出した個性的な面々なのです。パニック小説とプロジェクトXが一体となって「ひと粒で二度おいしい」!

フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち
マイケル ルイス
文藝春秋
売り上げランキング: 2,955

【推薦者】吉田 紀代美
【推薦作品】『バニヤンの木陰で』
【作者】ヴァデイ・ラトナー
【訳者】市川恵里
【推薦文】
個人的な事だが、故人へ供える花は生花でなければばらぬ。と漠然と考えていたが、この本の中で「悲しみとともに枯れる」という表現を発見して妙に納得した。クメール・ルージュの虐殺を生き延びた、7歳とちょっとの少女の、詩的な霊感?ともいうべき世界の見え方は、悲惨な情景描写の中で美しく輝いている。人の死を悼むとか何か?考えさせられる素晴らしい作品だった。

バニヤンの木陰で

バニヤンの木陰で

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ヴァディ ラトナー
河出書房新社
売り上げランキング: 683,577

【推薦者】sthew
【推薦作品】『この世の富』
【作者】イレーヌ・ネミロフスキー
【訳者】芝盛行
【推薦文】
イレーヌ・ネミロフスキーの作品の魅力は、なんといっても人間描写にあると思う。ネミロフスキーは人間とその人生を手厳しく描きだすのだが、その人間とは「あいつら」というより「私たち」であり、そこには作者の言うところの「ちょっと皮肉な愛情」がある。なお、『この世の富』をおもしろいと思った方には未完の大作『フランス組曲』を、ネミロフスキーがどういうタイプの作家なのかを手っ取り早く知りたい方には短編集『秋の雪』を、それぞれおすすめしたい。

この世の富

この世の富

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イレーヌ ネミロフスキー
未知谷
売り上げランキング: 1,091,081

【推薦者】skmt yj
【推薦作品】『わたしは灯台守』
【作者】エリック・ファーユ
【訳者】松田浩則
【推薦文】
社会から隔絶された場所で、自分の中の他者と向き合う人々。好むと好まざるとに関わらず、孤独の影をまといながらも、どこかおかしみが伝わってくる。そんな風景がそれぞれにすーっと立ち上ってくる短編集でした。この抑制の効いた翻訳は、かえって作家の独特な文体に温度を持たせているように感じます。

わたしは灯台守 (フィクションの楽しみ)
エリック ファーユ
水声社
売り上げランキング: 92,432

【推薦者】がーらんど
【推薦作品】『ゲームウォーズ』
【作者】アーネスト・クライン
【訳者】池田 真紀子
【推薦文】
大富豪の遺産相続ゲームに貧乏な少年が挑んでいくというよくあるジュブナイル小説なのだが、そうのゲームがただの遺産相続ゲームではない。80年代ポップカルチャーの知識とコンピューターゲームの技術で仮想空間で争うという奇抜なものなのだ。作者はその道の専門家なので、たとえば、登場するゲームの描写も鮮明で、扱われるネタもディープ。かといって、説明調ではなく、いい意味で軽い。この深さと軽さが心いくまで味わえる翻訳だったと思う。翻訳小説というと、いかに子ども向けのものでも、どこか不自然になっていて、ひっかかることが多いが、この本は、日本のラノベを読むように楽しめた。

ゲームウォーズ(上) (SB文庫)
アーネスト・クライン
SBクリエイティブ
売り上げランキング: 25,338

【推薦者】金子 靖
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
この訳書には、言及される人物、団体、事件の背景知識から始まり、各表現の語源やニュアンスなど、あらゆる注が膨大に盛り込まれている。ピンチョンの作品では、創作のように書かれていながら、実はそれが事実であった、とわかることもよくあるので、訳者の苦労がしのばれる。『重力の虹』を読もうとすれば、辞書に載っていない、ネットでも調査がつかない、考えてもわからないという英語表現にも山ほどめぐりあえる。訳者はあらゆる辞書や文献やサイトにあたり、自分が実際に行った調査を報告しながら、こうしたものを一つ一つ丁寧に教えてくれる。英語がよく読めるだけでなく、平均的アメリカ人の知識と考え方を完全に理解し、彼らと同じように英語を使いこなせる訳者だからできることだろう。訳者は20年以上前に東大で大英語教育改革を成し遂げた。世界文学を理解するにはどんな勉強と心構えが必要か?訳者は本書でそれも伝えようとしているのかもしれない。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
売り上げランキング: 30,406

【推薦者】14番目の月
【推薦作品】『仮面の商人』
【作者】アンリ・トロワイヤ
【訳者】小笠原豊樹
【推薦文】
ひとの人生において、なにが真実で、なにが嘘なのか、ほんとうのことは存在するのか? ということについて考えさせられました。シニカルで一筋縄ではいかない作者の視点が、フランスっぽい気がしました。(完全に紋切り型のイメージですが)また、岩田宏名義での、「解説にかえて」1、2もたいへん読みごたえがあって、面白かったです。

仮面の商人 (小学館文庫)

仮面の商人 (小学館文庫)

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アンリ トロワイヤ
小学館 (2014-11-06)
売り上げランキング: 160,447

【推薦者】miyu
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
 奇想天外な物語でもなく、もちろん種も仕掛けもない。地味な学者の地味な人生を描いた話が、どうしてこんなに胸に突き刺さるのだろう。読み手をつき放さず、むしろ両手をいっぱいに広げて包んでくれているかのようだ。翻訳者の人柄や、この作品に対する姿勢がとてもよく伝わって来る。主人公はけして象牙の塔の学者ではなくて、私たちと同じように悩み恋をして挫折を繰り返す、けれども文学(好きなこと)に対しては怖ろしく頑固で意志の強い、そんなとても愛しい人だった。だからこそ私たちの心をとらえて放さないのだろう。毛色の変わった作品に浸され続けているいま、まだ自分にもこのようにストレートな作品に対する溢れるばかりの想いがあったことを、強く意識出来たのがとても嬉しい。愛し合いながらも別れざるをえなかった人の17年後の献辞「W.Sに捧ぐ」と、主人公が静かに逝く場面は、涙なしでは読めなかった。それは悲しいというよりも、むしろ幸せな涙。私はこの作品をこれからも何度も何度も読み返すだろう。命を削るように最後まで素晴らしい翻訳してくださった、今は亡き東江一紀さんの「ストーナー」を、心から推薦いたします。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 17,176

【推薦者】鶴の一五四八番
【推薦作品】『カステラ』
【作者】パク・ミンギュ
【訳者】ヒョン・ジェフン

【推薦文】
 訳文そのものを日本語として愉しめるという希有な作品。訳者は日本語を母語として育った人ではないというのに、なんなんでしょうこのセンスのよさ。翻訳者のはしくれとして嫉妬と畏怖を覚えます

カステラ

カステラ

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パク ミンギュ
クレイン
売り上げランキング: 665,367

【推薦者】佐々木 文一
【推薦作品】『ヒロシマ・モナムール』
【作者】マルグリット・デュラス
【訳者】工藤庸子
【推薦文】
この作品を翻訳することに至る経緯を工藤庸子は末尾の訳者ノートで精細に綴っています。その中で「デュラス生誕百年の出版企画に『ヒロシマ・モナムール』の新訳を、という選択には哲学的といってもよい動機があった。「フクシマの後」にあらためて、1958年に構想された「ヒロシマ」を読みなおすことができるのか。ようやく語るべき言葉を模索しはじめた二〇十四年のわれわれは、デュラスのテクスト上に応答する言葉を見出して、遠くから呼びかける声を聞きとることができるのか。」ここにはこの作品を翻訳する行為そのものを現在の状況にくぐらせて問い直すことでこれまで見えてこなかったこと、すくい取れずにいたことを見極めようとする訳者の熱いこだわりが伝わってきます。その意味で訳者工藤庸子のエクリチュールとしても堪能できる作品です。なぜなら翻訳する行為はもうひとつの新たなエクリチュールの創造活動なのですから。

ヒロシマ・モナムール

ヒロシマ・モナムール

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マルグリット デュラス
河出書房新社
売り上げランキング: 470,841

【推薦者】キャトル
【推薦作品】『カステラ』
【作者】パク・ミンギュ
【訳者】ヒョン・ジェフン/斎藤真理子
【推薦文】
あとがきによると、作者は「韓国の現代文学を語る上で絶対に欠かせない存在」とのこと。その作者の初短編集を紹介した訳者の役割は大きいと思います。社会の中で、なんとなく、あるいは、どうしようもなくうまくいっていない十人の「僕」たちの物語(+日本語版にのみ収録の作品一編あり)。何度もふっ、ぷぷっと笑わされ、何度もえ?、うわー! と驚かされ、文章の軽快なリズムに乗せられて、思いもよらない場所へと連れていかれ……一つ読み終わるたびに、他がどんな話なのか気になって、次を読まねばという焦燥感に駆られました。面白い! 作品の空気まで訳してくださった訳者おふたりに感謝します。

カステラ

カステラ

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パク ミンギュ
クレイン
売り上げランキング: 665,367

【推薦者】小川 湖
【推薦作品】『王たちの道1-白き暗殺者-』
【作者】ブランドン・サンダースン
【訳者】川野靖子
【推薦文】
偶にファンタジーを読みたくなります。「壮大無比な大河ファンタジイ」の通り、登場人物も多く造語も盛沢山。全3巻、ポケット・ブック版500頁。4人の物語がそれぞれに進みます。暗く重い出だしながら、ぐんぐん読ませます。カラディンに寄り添うシル(精)はどんな姿かしら?映像で観たくなる作品です。間もなく発行される2巻が大変楽しみ。ファンタジーの醍醐味を味わっています。翻訳の川野さん、ありがとうございます。

王たちの道 1 白き暗殺者 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
ブランドン・サンダースン
早川書房
売り上げランキング: 328,422

【推薦者】チコ
【推薦作品】『最初の舞踏会 ホラー短編集3』
【作者】ペロー、ルブラン、メリメ他
【訳者】平岡敦
【推薦文】
ホラー短編集だがおどろおどろしくはない。切ない話あり犯罪ありの、フランスの奇妙な短編集。なかでもタイトルになっている「最初の舞踏会」が最高だった。残酷なことをサラッと行うハイエナがとてもキュートに感じるのは翻訳のおかげでもあるだろう。最後の場面を想像して駆け出したくなるくらいワクワクした。

最初の舞踏会 ホラー短編集3 (岩波少年文庫)
岩波書店
売り上げランキング: 12,334

【推薦者】じゅんいちろう
【推薦作品】『この世の富』
【作者】イレーヌ・ネミロフスキー
【訳者】芝盛行

【推薦文】
「多くの悩み、多くの苦しみ、多くの試練、それがこの世の富なんだ」驚きの連続刊行で、ネミロフスキーに出会うことが出来たのが2014年の大きな収穫でした。4作品の中でも、一番好きなこの作品を推薦します。

この世の富

この世の富

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イレーヌ ネミロフスキー
未知谷
売り上げランキング: 1,091,081

【推薦者】ブリキの木魚
【推薦作品】『別荘』
【作者】ホセ・ドノソ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
 驚きのエピソードの連続で最後まで引き付けられ、読むという行為そのものがたまらなく楽しいことに改めて気づいた。また、チリやラテンアメリカの歴史や政治的側面を絡めて深読みしたくもなるし、合間合間に登場する作者の言葉からドノソの小説観を勝手に想像するのも面白い。何度も再読したい作品。

別荘 (ロス・クラシコス)

別荘 (ロス・クラシコス)

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ホセ ドノソ
現代企画室
売り上げランキング: 131,557

【推薦者】あかさ たな
【推薦作品】『賢者の贈りもの』
【作者】O.ヘンリー
【訳者】小川高義
【推薦文】
Oヘンリーの新訳はすごい。翻訳は時空間を越えるから、日本語が却って豊かなんだと気付かされる。Oヘンリーの笑いが落語のシャワーを浴びて、いまここの話になってる。あと2本が待ち遠しいです。

賢者の贈りもの: O・ヘンリー傑作選I (新潮文庫)
Oヘンリー
新潮社 (2014-11-28)
売り上げランキング: 173,520

【推薦者】ペイトン昌美
【推薦作品】『注目すべき125通の手紙』
【作者】ショーン・アッシャー
【訳者】北川玲
【推薦文】
手紙ひとつひとつにストーリーがあり、事実ならではの重みがある。死を覚悟した手紙、愛の手紙、怒り、喜び、苦悩、悲しみ……楔文字の時代から現代まで、125篇の物語。書き手の生きた時代も違えば、文体も口調も手紙を書いたときの感情も違う。書き手に気持ちを重ね合わせ、書き手の人柄に思いをはせる。一通ずつ、じっくり味わいたい。訳すのはさぞかし大変だったろうと思う。

注目すべき125通の手紙:その時代に生きた人々の記憶
創元社
売り上げランキング: 30,944

【推薦者】ayakomiyamoto
【推薦作品】『別荘』
【作者】ホセ・ドノソ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
別荘でひと夏を過ごすベントゥーラ一族とその子どもたち、人喰いと噂される原住民、辺り一面を侵略し続ける綿毛の植物……。さまざまな要素が絡み合い奇怪で複雑なドラマを織りなす物語。綿毛とともに別世界へ連れ去られるような強烈な読書体験でした。この作品が翻訳されて、日本語で読めて幸せでした。

別荘 (ロス・クラシコス)

別荘 (ロス・クラシコス)

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ホセ ドノソ
現代企画室
売り上げランキング: 131,557

【推薦者】すける
【推薦作品】『ドリフトグラス』
【作者】サミュエル・R・ディレイニー
【訳者】
浅倉久志/伊藤典夫/小野田和子/酒井昭伸/深町眞理子
【推薦文】
 象徴の自覚的な使用をSFに持ち込んだディレイニーの短編集。SFとしてのストーリーに暗喩をひそめて幾層もの厚みをもたせた語り口は短編でもその衝撃力を弱められることがない。翻訳短編集を読むことの喜びは、一冊で著者の様々な作品に触れられることと同時に、それぞれの作品に適った訳者による作品理解を通じた訳文に立ち会えることにもある。本書には浅倉・伊藤両氏をはじめとした練達の訳者によるディレイニーの文章への対峙の成果が込められており、豊かな読書の経験をあたえてくれる。

ドリフトグラス (未来の文学)
サミュエル・R・ディレイニー
国書刊行会
売り上げランキング: 27,686

【推薦者】いつまでも 海外文学初心者
【推薦作品】『天国の囚人』
【作者】カルロス・ルイス・サフォン
【訳者】木村裕美
【推薦文】
 やっぱりサフォンはおもしろい。忘れられた本の墓場シリーズ四部作の三作目、前二作があってこそとは思いますが、今回も単独で充分に魅力的かと。ジャンル等も意識せず、いつも夢中になって、しかも惜しみつつもあっという間に読んでしまうのは、もしかすると児童文学も書かれてきた作者のおかげかもしれません。毎作、そんな読書に誘ってくれる木村裕美さんの翻訳に心から感謝しています。

天国の囚人 (集英社文庫)

天国の囚人 (集英社文庫)

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カルロス・ルイス サフォン
集英社 (2014-10-17)
売り上げランキング: 66,610

【推薦者】cmm
【推薦作品】『プロメテア』
【作者】アラン・ムーア
【訳者】柳下毅一郎
【推薦文】
読んだときに「これを訳したのか!」とびっくりでした。自分だったら英語で読めなかったと思います。丁寧な解説に加えて、翻訳・出版に感謝します。アラン・ムーアの別の面も知ることができました。これを機に、海外漫画の翻訳も盛んになってくれると嬉しいです。

プロメテア 1 (ShoPro Books)

プロメテア 1 (ShoPro Books)

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アラン・ムーア
小学館集英社プロダクション
売り上げランキング: 76,676

【推薦者】後の葵
【推薦作品】『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』
【作者】チャールズ・ユウ
【訳者】円城塔
【推薦文】
ストーリーや文章の雰囲気から暗さを感じたが、同時に希望に満ち溢れた小説であった。内容の複雑さと円城塔氏の翻訳、どちらも秀逸。タイムパラドックスものとしても家族小説としても、近年発表された作品の中では最も楽しく読めた。

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
チャールズ・ユウ
早川書房
売り上げランキング: 53,722

【推薦者】井之頭 太郎
【推薦作品】『エウロペアナ』
【作者】パトリク・オウジェドニーク
【訳者】阿部賢一 篠原琢
【推薦文】
 ヨーロッパの20世紀を多面的な視点から描いたチェコ語の作品を、そのユーモアの力を失うことなく、多分野の専門用語が盛り込まれた文章をわかりやすく訳したこと。専門分野が異なる2人の訳者の共同作業に敬意を込めて推薦します。

エウロペアナ: 二〇世紀史概説 (エクス・リブリス)
パトリク オウジェドニーク
白水社
売り上げランキング: 58,488

【推薦者】吉田 博子
【推薦作品】『死んだ人形たちの季節』
【作者】トニ・ヒル
【訳者】宮崎真紀
【推薦文】
バルセロナを舞台にした、バルセロナ生まれ翻訳者出身のミステリー作家デビュー作。スペイン語の翻訳クラスで、「今翻訳中の本」として授業を受けました。不思議な題名は、作品冒頭に忘れられないようなイメージで描かれています。アルゼンチン人のカタルーニャ州刑事エクトルは、暴力事件を起こして休暇を取り故郷にいったん帰り、復帰後は暴力を振るった呪術医の捜査を部下マルティナに任せ、上司が個人的に頼まれた事故の洗い直しをすることに。19才の少年マルクは墜落死とされていたが、新米刑事レイラと調べるうち、たった1週間ほどでいろいろダークな事実が明らかになって……というもの。後書きにもあるように伏線が丁寧で、ツイストも鮮やかだし。特に主役級の心の動きに細かいです。スペイン語の分かる方は、カタルーニャや南米の発音などについても気をつけて翻訳してあるので、マニアックな楽しみがあります。今後が楽しみな作家です。

死んだ人形たちの季節 (集英社文庫)
トニ ヒル
集英社 (2014-10-17)
売り上げランキング: 523,624

【推薦者】金山 倫子
【推薦作品】『密林の夢』
【作者】アン・パチェット
【訳者】芹澤恵
【推薦文】
気の進まないブラジルアマゾンへの出張を命じられる主人公。目的はそこでの新薬研究の進捗状況と、先にそこに赴き亡くなった同僚の死の詳細を知るため。その二つの目的がこの物語の謎となり、ミステリー小説なみにページを繰る手を止まらなくさせる。

密林の夢

密林の夢

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アン パチェット
早川書房
売り上げランキング: 277,238

【推薦者】山口 かおり
【推薦作品】『もう年はとれない』
【作者】ダニエル・フリードマン
【訳者】野口百合子
【推薦文】
昨年いちばん楽しんで読んだ本です。87歳の元暴力刑事(ダーティーハリー系)でユダヤ人。ナチの強制収容所帰り。愛用の武器は357マグナム。この何ともシブくて魅力的かつユーモラスなキャラクター造詣を考え付いた段階で、作者の勝ちは決まっているわけです。なによりも、次作を首を長くして待てる、新シリーズが出てきて嬉しい。

もう年はとれない (創元推理文庫)
ダニエル・フリードマン
東京創元社
売り上げランキング: 20,916

【推薦者】柳井 完司
【推薦作品】『よりぬきウッドハウス2』
【作者】P・G・ウッドハウス
【訳者】森村たまき
【推薦文】
 ウッドハウスはかつて新旧いろいろな翻訳が出ていましたが、どれもこれもイマイチ笑えないというか、正直どこが面白いのかさえとんと分からぬ――というのが正直なところだったと思います。やっぱり英国の渋いユーモアなんてものは、日本人には理解できぬものなのか、と。当方の如きは悲しく爪を噛んでいた次第です。それだけに、森村訳の出現はさながら闇に包まれた地上に差す一条の黎明。いわゆる「よしきたホー!」でありまして。おそらくは日本読書史上だれにもなしえなかった「ウッドハウスでニヤニヤウフフと笑える歓び」を、軽やかにスキップしながら与えてくれたのです。まことその訳業は、実にすっとんとんに比類なきものというべきでしょう。そういうわけで。可能ならば遡って森村訳1作目の『比類なきジーヴス』を推したいところですが、そうもいかない大人の事情。そこで次善の策として、翻訳大賞創設遅すぎです!とぶつぶつ呟きつつ、最新の森村訳になる本書を推薦する次第です。

よりぬきウッドハウス2

よりぬきウッドハウス2

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P・G・ウッドハウス
国書刊行会
売り上げランキング: 606,275

【推薦者】どら えもん
【推薦作品】『ぼくらの時代の本』
【作者】クレイグ・モド
【訳者】樋口武志
【推薦文】
 新しい時代に「本」とはどのような「カタチ」をとるのか。この20年コペルニクス的転回を遂げている出版界ですが、それはまだ行く先が定まらず、その確かなあり方を探している途中のようです。本書はそんな新時代のメディアにとって道標となる一冊。訳者である樋口武志氏はまだ20代と非常に若いながらも、これまでニコール・クラウスや数々の映画の字幕を手がける秀才です。まさにこの若き翻訳者の手で新時代の「本」のあり方についての指南書が訳されたことこそが、「本」にとっての希望なのではないでしょうか。

ぼくらの時代の本

ぼくらの時代の本

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クレイグ・モド
ボイジャー (2014-12-15)
売り上げランキング: 200,919

【推薦者】北村 浩子
【推薦作品】『最後の紙面』
【作者】トム・ラックマン
【訳者】東江一紀
【推薦文】
ローマのある架空の新聞社を舞台に、新聞が創刊された1950年代からの時間と、2006年時点での時間のふたつを交互に提示しながら「最後の紙面」までの経緯を綴った連作短編集。かつての恋人とその夫に新聞社の運営を任せる企業グループの社長、特派員の地位を狙うもライバルにこき使われてしまう青年、夫の浮気をむしろ利用しようと考えるやり手の女性編集主幹……おかしくせつなくほろ苦い上質の群像劇です(しかも税込み千円以下!)

最後の紙面 (日経文芸文庫)
トム・ラックマン
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 114,866

【推薦者】冬猫
【推薦作品】『最後の恋人』
【作者】残雪
【訳者】近藤直子
【推薦文】
この世界とよく似ているけれど、何かが違う異世界の質感の歪みに眩暈がした。増殖し続ける物語の大きさを損なうことなく、つなぎとめ再構築する細心の力技に敬意をもって推薦致します。

最後の恋人 (残雪コレクション)
残 雪
平凡社
売り上げランキング: 575,310

【推薦者】林 央子
【推薦作品】『私のもらった文学賞』
【作者】トーマス ベルンハルト
【訳者】池田信雄

【推薦文】
 喜劇にも悲劇にも本質にも舞台にも読める。文学賞をめぐる一人の作家への出来事をこんなにも驚きと共感とリアリティをもって接することができるとは。現実に気持ち悪くなったり絶望したり大笑いしたり読む方も忙しく、楽しい。

私のもらった文学賞

私のもらった文学賞

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トーマス・ベルンハルト
みすず書房
売り上げランキング: 381,926

【推薦者】横山 直己
【推薦作品】『ダヴィッド ゴルデル』
【作者】ネミロフスキー・イレーヌ
【訳者】芝 盛行
【推薦文】
この本は人生を生き抜く、という力強いメッセージを与えてくれました。若くて不幸な死を選ばされたイレーヌの、人類に贈る悲痛のメッセージでもあります。イレーヌ作品にかける訳者の芝盛行さんの熱い思いが伝わります。

ダヴィッド・ゴルデル

ダヴィッド・ゴルデル

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イレーヌ ネミロフスキー
未知谷
売り上げランキング: 962,290

【推薦者】森の中に時計はない
【推薦作品】『神曲』
【作者】ダンテ・アリギエリ
【訳者】原基晶
【推薦文】
人生を半ばまで歩んだ主人公ダンテが、地獄から煉獄~天国を旅する物語である。神(原語でもDivina)と題されてはいるもののとにかく人間くさい。あくまで世俗に生きる1人の人間として、著者ダンテの頭の中で渦巻くありとあらゆる思いが見えて興味深く感じた。理性・倫理・慈しみ・傲慢さ・残酷さ・不正義等々ギュッと詰まって書かれている。同時代の人物への、彼岸の世界を通した遠慮会釈ないダンテの評価は特に注目されたい。推薦した訳は読みやすさはもちろん、歴史背景の纏まった説明や注釈がとても助けになった。これらが無ければ上記の感想にはたどり着けなかったであろう。全3冊の長い作品なので初めての海外文学として取っつきづらいことは否めないが、最初の地獄篇だけ試してみたり、気ままな摘み読みから入っても面白いのでは。決して難解な作品ではない。
神曲 地獄篇 (講談社学術文庫)
ダンテ・アリギエリ
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【推薦者】関口 真知子
【推薦作品】『パラディスの秘録 死せる者の書』
【作者】タニス・リー
【訳者】市田 泉
【推薦文】
文章全体から漂う、饐えたような、それでいてどこか甘いところのある匂いに、なるほどこれが死者の朽ちゆく匂いなのかと陶然としながら、ひとつひとつ墓暴きをしていくような気持ちで八編を読みました。閉ざされたままだった魔都パラディスへの道を新たに切り開き、わたしたちを背徳の世界へと再び誘ってくださった訳者の市田さんに感謝します。

死せる者の書 (創元推理文庫)
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【推薦者】三浦 天紗子
【推薦作品】『古書収集家』
【作者】グスタポ・ファベロン=パトリアウ
【訳者】高野雅司
【推薦文】
若き古書収集家ダニエルが婚約者のフリアナを惨殺し、精神病院に収監される。その親友で心理原義緒学者のグスタポ(作者とニアイコールに思える人物、というのがまたひとつの仕掛け)が、その事件の真相を究明しようとするが、その背後にあった壮大な計画、それを実行に移した動機というものに心底驚かされる。情報を求めて動き回る一方で、ダニエルと面会もするグスタポ。精神病院の塀の外と中で彼が聞きかじる、一見事件とは無関係の奇譚が、後々意味を持ってくるという構成は、オーソドックスなのかもしれないが、とても好み。

古書収集家 (フィクションの楽しみ)
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【推薦者】山崎 まどか
【推薦作品】『この世界の女たち』
【作者】アン・ビーティ
【訳者】岩本正恵
【推薦文】
収録されている「燃える家」は既に別の人の訳があり、読み比べてみたが、岩本訳の方が私にはしっくりきた。生活の描写は細やかなのに、登場人物たちの心理には踏み込まない。でも不思議と冷たくない。そんなアン・ビーティの文章を岩本さんの訳で読むのは喜びだった。できればもっと読みたかった。

この世界の女たち アン・ビーティ短篇傑作選
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【推薦者】シグペン メイノット
【推薦作品】『ア・ロング・ウェイ・ダウン』
【作者】ニック・ホーンビィ
【訳者】最所篤子
【推薦文】
いろいろな問題を抱えた人々の絶妙な喋り口調を、スピード感とユーモアセンスでとてもポップに翻訳されていると思います。まぁ、とにかくオモシロイです!特にジェス(十代の女の子)のノリはとても良い!!

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【推薦者】プロレタリア 左派
【推薦作品】『68年5月とその後』
【作者】クリスティン・ロス
【訳者】箱田徹
【推薦文】
本書は、パリ68年5月革命について、それを準備したアルジェリア戦争から、それを正統に継承する現在の反グローバリゼーション運動に至るまで、どのように描かれ、影響してきたのかを分析する。翻訳は、学生運動、労働運動、映画や文学、思想哲学など、多ジャンルの先行研究を踏まえ、細部にわたって配慮されており、訳文もとても読みやすく、こなれている。

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【推薦者】ひげのおじさん
【推薦作品】『思考の取引』
【作者】ジャン=リュック・ナンシー
【訳者】西宮かおり
【推薦文】
フランス最高の知性の論考、しかも書物についてのものを日本語で読める幸福! それにつきます。

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岩波書店
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【推薦者】ゆかとら うまん
【推薦作品】『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』
【作者】クリスティン・バーネット
【訳者】永峯涼
【推薦文】
「息子は自閉症、しかも12歳の宇宙物理学者」という帯に、お涙頂戴美談ものかと、あまり期待しないで読み始めたが、ひきこまれた。猛烈な母の愛というには「閉じていない」ところがいい。なぜ大人は、子どもたちの「できないこと」にばかり注目して、できることや好きなことを奪おうとするのか。「ふつう」というレールに合うよう子どもを「修正」することのナンセンス。おとなは何と闘うべきなのか。自閉症にかぎらず、すべての子ども、否、おとなにとっても大事なことを伝えてくれる。

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【推薦者】えり
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
素晴らしかった。読みはじめた瞬間から引きこまれいつまでもページをめくり読んでいたかった。夢中になって1日で読み終えてしまった。東江さんの誠実で端整な訳もぴったりだった。最後の方はどんなお気持ちで訳されたのだろうと切なくなった。しかしこの本のカバーを外してみたら、小説の中にあるのと同じ「赤い本」であると気がついた。その時、喜び、成功、失敗、悔しい事もあるけれど情熱を持って立ち向かったならば、それだけでいいとこの本が語りかけてきたような気がした。誰もがストーナーである。それだけでいい。

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
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【推薦者】ふくすけ
【推薦作品】『わたしは灯台守』
【作者】エリックファーユ
【訳者】松田浩則
【推薦文】
地図からも消された灯台、下車されない駅の先にある街、種族最後の生き残り。9つの短編に描かれた、マイノリティな人々の呟き。時に幻影をみているような、微妙なニュアンスも訳し紡いだ、静かな取り組み。読後、妙に胸に残る一冊。

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【推薦者】ラヒコ
【推薦作品】『コールド・スナップ』
【作者】トム・ジョーンズ
【訳者】舞城王太郎
【推薦文】
死、貧困、ドラッグ、自殺願望に彩られた短編集。アフリカでの医療支援活動に従事する医師をはじめ、絶望的な状況を目の当たりにして、そこから抜け出す方法があるのかも、そもそも抜け出したいのかも分からなくなりながら、悪態をついてもがく主人公たち。舞城王太郎は、片仮名やブロークンな日本語の言い回しを大胆に多用しながら、そう原文に書いてあったとしか思えない、という説得力のある翻訳を実現しているように思います。

コールド・スナップ

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【推薦者】いおん
【推薦作品】『その女アレックス』
【作者】ピエール・ルメートル
【訳者】橘明美
【推薦文】
TLで宣伝されてたのと、このミス1位だったのとで手に取った本。冒頭の暴力描写が痛かったので、ちょっと引き気味に読み始めたけど、止まらなくなった。面白かった!!3部構成だけど、1部終わるごとに物語の見え方ががらりと変わる。あれ、誘拐モノじゃなかったの…?と思ったあたりから俄然面白くなって、予想外だけど納得のエンディングにため息。やめられなくて、一晩で読破しちゃった。ネタバレ注意が叫ばれている作品なので、これ以上は書けないけど、読んでみてー、絶対面白いから!!とオススメ。ノワール好きでも、本格派でも、満足すること請け合い( ̄▽ ̄)vネタバレしないとこでひとつ。警察チームの面々が個性的でよかった。ロマンチストのカミーユはもちろん、上司のル・グエンもいいしそ、取調室でも品の良さを失わないイケメン・ルイにもちょっと惚れる。でも最後に素敵なプレゼントをしてくれたアルマンが一等いい!その他の犯人も被害者も、キャラクター造形がよかったなあ。映画でみたいかも。リュック・ベッソンとかデヴィッド・フィンチャーあたりでどうかな?

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【推薦者】ナカジー
【推薦作品】『愉楽』
【作者】閻連科
【訳者】谷川毅
【推薦文】
 方言で書かれている原作を、山陰地方の方言を思わせる言葉で訳してあって、その響きの柔らかさがとても作品に合っていると感じた。これだけ長い小説を、一気読みに引き込むのは、原作の力とともに、翻訳のすばらしさがあってのことではないかと思った。

愉楽

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閻 連科
河出書房新社
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【推薦者】くれい
【推薦作品】『私のもらった文学賞』
【作者】トーマス・ベルンハルト
【訳者】池田信雄
【推薦文】
要するに、トーマス・ベルンハルトによる「文学賞メッタ斬り!」です。あけすけな愚痴も上手い人がやればとても面白い、という一つの証拠でしょう。基本的に賞金のためだけに授賞式に行く『消去』の作者ベルンハルトの愚痴は大層面白い。ドイツ語を解さないので翻訳としての巧拙は分かりませんが、あの『消去』を訳した人ならこういう形で報われてもまったく問題はないと思いました。説明するより引用したほうが早いので、引用してみます。「そもそも、と私は考えた、金が手に入るのであればもらっておけばいいので、どうやってとかどこからとかいったことをぐずぐず考える必要はない、そんな風に考えることは純然たる偽善にすぎない。」「賞金はいくらだった、と訊かれて初めて、この賞に賞金が付いていなかったことに気づいた。私はそのとき初めてとんでもなくひどい屈辱を受けたことを思い知らされたのだった。」

私のもらった文学賞

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【推薦者】リドラ・ウォン
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
 やっと、遂に、新訳が出て大歓喜です。この翻訳はさぞ大変だっただろうと佐藤氏に心から「お疲れ様でした。ありがとうございます!」と申し上げたいです。これから何度も何度も読み返します。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
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【推薦者】横山 郁代
【推薦作品】『ダヴィッド・ゴルデル』
【作者】イレーヌ・ネミロフスキー
【訳者】芝盛行
【推薦文】
イレーネの作品はすべて素晴らしく、ユダヤ系ロシア貴族社会の過酷な生存競争を描き出した傑作であり、翻訳者、芝さんの情熱が感じられます。

ダヴィッド・ゴルデル

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【推薦者】名もなきすあま
【推薦作品】『スナーク狩り』
【作者】ルイス・キャロル
【訳者】穂村弘
【推薦文】
「遊びと謎に充ちた原作の韻文性」を訳文に反映するため、日本の長歌形式を借りた、とあとがきにあります。その制約をフルに活かしたリズム、言葉運びにどんどん連れて行かれました。最後の仕組みも心憎い。

スナーク狩り

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【推薦者】杉江松恋
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
〈トマス・ピンチョン全仕事〉のすべての刊行物を代表する意味もあるのですが、この一冊を推薦します。訳文もさることながら11万字にも達した脚注が圧巻で、脚注小説の観さえあります。なんとしても読者を〈トマス・ピンチョン峰〉に登らせずにはおくものか、という訳者の執念を感じました。俗に「横のものを縦にする」などと言いますが、このお仕事ぶりを見たら二度とそんな軽い表現を用いることはできなくなると思います。険しい山に登らせてくださった感謝の意味もこめて。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
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【推薦者】倉嶋 愛香
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子
【推薦文】
私が驚いたのはまず生きている様な文章の表現力かもしれません。それがとても強烈で頭から離れません!モーゲンスタンさんと同じく、海外へ移住しておりますが、自分にこれが同じように翻訳出来るか?と考えると確実に無理なレベルですんね(笑)翻訳というレベルではなく、まさに表現者なのではないでしょうか。読み進めてると、すぐ目の前に世界観が広がり、まるでタイムスリップをしているようでした。主人公の思いだけでなく、息使いまでも感じてしまいそうな作品って…今までたくさんの本を読んできましたが、なかなかないかと思います。もちろん、内容も面白くて一気に読んでしまいました。 こういう本、どんどん読んでいきたいです。私のように感じる読者さん、多いと思いますよ。是非大賞を取っていただいて、私のような他の多くの読者愛好家に広めてほしいものです!

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
彩流社
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【推薦者】横田 剛
【推薦作品】『ドリフトグラス』
【作者】サミュエル・R・ディレイニー
【訳者】浅倉久志・伊藤典夫・酒井昭伸・小野田和子・深町眞理子
【推薦文】
単純に去年出た翻訳小説で面白かったもの、ということでこの本を。
そして、その中でも挙げるとしたら巻頭を飾る『スター・ピット』と掉尾を飾る『エンパイヤ・スター』を。『スター・ピット』。対比と断絶の物語。ある惑星に住む中年男性を中心にして回るグロテスクできらびやかな物語。ドラッグ漬けの超能力少女とそれに恋する不良少年、一般人には行けない宇宙の果てを翔ぶ気狂いゴールデン、そんな奇矯なガジェットを言葉にしてディレイニーは叫ぶ。そして『エンパイヤ・スター』。小説の面白さを剥き出しにしたかのような物語。ある日謎の<宝石>ー実は人間が形態変化した姿ーを拾った少年は、運命の導くままに自分の星を飛び出し多くの人に支えられながら目的地、<エンパイヤ・スター>を目指すっていう粗いプロットに、太陽に突っ込む詩人、圧倒的な悲しみで屈服させる奴隷ルルなんかが緻密に絡み合う。ところでディレイニー、宝石好きだねえ。

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国書刊行会
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【推薦者】松山 悠達
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
 愛するものを愛しつづけるのは地獄である。愛することにどのような困難が付き纏おうが、愛しているがゆえに愛しつづけてしまう。愛するものが感情を持たぬ無生物であればなおのこと。いくら愛しても相手の気持ちは一向にわからない。だが、ふとした瞬間、相手が自分を愛しているのではないかと感じるときがある。自分勝手な思い違いかもしれないが、それは至福のときである。そのときをふたたび求め、愛は愛でありつづける。ストーナーは文学を愛しつづける。彼が文学に愛される瞬間がこの小説には存在する。その瞬間に立ち会うとき、読者も文学に愛される。本書を翻訳した東江一紀氏も無生物である翻訳、あるいは言葉を愛しつづけたに違いない。『ストーナー』には、東江氏が翻訳に愛される瞬間があるのではないか、本書の美しい文章を読んでいると、そう思わずにはいられない。その瞬間に立ち会うとき、読者も翻訳に愛される。それは、至福のときである。

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
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【推薦者】ホッタ タカシ
【推薦作品】『<喜劇映画>を発明した男 帝王マック・セネット自らを語る』
【作者】マック・セネット
【訳者】石野たき子(監訳・新野敏也)
【推薦文】
無声映画時代のカツドウヤという、まさしく<信頼できない語り手>の自伝を、ホラ吹きらしさを残した文章、そして詳細な注釈によって、映画が魔法だった時代の芸談を甦らせてくれた労作。巻末付録の「銀幕喜劇人小辞典」含め、無声喜劇映画を改めて世にアピールしたいという訳者の使命感にも打たれる。

〈喜劇映画〉を発明した男──帝王マック・セネット、自らを語る
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【推薦者】杉山 眞弓
【推薦作品】『あるときの物語 上』
【作者】ルース・オゼキ
【訳者】田中文
【推薦文】
訳されるべき作家の、訳されるべき作品が日本語になった喜びを読者は感じるはずだ。読み進めていくうちに英語と日本語、カナダと日本という差異の境界がぼやけていき、国境を越えた物語世界が生まれていく。このような良質の翻訳書がもっと出版されることを願いつつ、本書を推薦する。

あるときの物語(上)

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ルース・オゼキ
早川書房
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【推薦者】堤 拓哉
【推薦作品】『最後の恋人』
【作者】残雪
【訳者】近藤直子
【推薦文】
この本を読んでいる時に私は、文学が現実を侵食する有り様を知ってしまいました。弱っている心に効いたり、世界に対する見方が変わるとかそういう話ではありません。本当にその数十分間、目の前の現実が歪んでしまったのです。

最後の恋人 (残雪コレクション)
残 雪
平凡社
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【推薦者】杉森 順一
【推薦作品】『愉楽』
【作者】閻 連科
【訳者】谷川 毅
【推薦文】
 県を豊かにするため、レーニンの遺体を購入し、記念館に安置して観光名所にしようと考える県長。レーニンを購入する資金を集めるために目を付けたのは障害者ばかりの村「受活村」の村人たちだった。荒唐無稽な話だけど、登場人物たちの魅力に引き寄せられる。ラテンアメリカ文学とは違った楽しみのある中国のマジックリアリズム。

愉楽

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閻 連科
河出書房新社
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【推薦者】ハト牧場
【推薦作品】『乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺』
【作者】ラティフェ・テキン
【訳者】宮下 遼
【推薦文】
これはある夜ゴミ山に建った一夜建ての家から始まった物語である。ゴミ山にゴミで家を建て、壊されてもまた建て陽気に逞しく生きてゆく人々の営みを淡々と、時に滑稽に、時に哀れげに描いてゆく。そこには主人公はおらず、主となるのはゴミ山そのものである。人は土地と共に生きうつろいながらも日々を生きるという力強さを、悲壮感なく楽しげにすら描き切ったのはおとぎ噺以外の何ものでもない。他にない、印象的な読後感の本。

乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺
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河出書房新社
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【推薦者】みのた さち
【推薦作品】『別荘』
【作者】ホセ ドノソ
【訳者】寺尾 隆吉
【推薦文】
まだ全部は読んでいませんが、本をめくるたびに賑やかな物語が始まる楽しさ。ラテンアメリカの熱狂。これぞ読書の楽しみ

別荘 (ロス・クラシコス)

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ホセ ドノソ
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【推薦者】森 達也
【推薦作品】『人生を、もっと幸せに生きるために 死者からのアドバイス』
【作者】ジェームズ・ヴァン・プラグ
【訳者】安達直子
【推薦文】
 本書には、私たちに対する霊たちからの貴重なメッセージが数多く含まれている。その一つは、思いやりを持って相手の苦しみを感じ、異なる意見を尊重することが大切だと伝えている。私たちは、他の人も自分と同じように考えれば世の中はよくなるだろうと自己本位になりがちだからだ。この本には、息子ジェイミーの生命維持装置を停止するという苦渋の決断をした両親のエピソードが挿入されている。今でも深い悲しみをひきずる両親を、「人殺し」となじるジェイミーの弟チップは、状況を自己本位の視点から見ており、両親の愛ある決断を受け入れられないでいた。著者は、チップが両親の苦しみを理解できるようになるまで待つようにとアドバイスした。一方、亡くなったジェイミーの霊は、魂を自由に解放してくれたことを両親に感謝していることが明らかになった。人生で起こることすべてを、この世とあの世を含む広い視野から見ることの大切さを著者は訴えている。

人生を、もっと幸せに生きるために
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【推薦者】伊藤 伸恵
【推薦作品】『この世の富』
【作者】イレーヌ・ネミロフスキー
【訳者】芝盛行
【推薦文】
 文学には何か人生にとって重要なことが書いてあるんじゃないかと期待していつも本を手に取る。すると時々、人間が、人生が、ギュッと綺麗な鉱石のように固まった作品に出会うことがある。『この世の富』は確かにそれだった。日本語で読ませてもらえた幸運に感謝。私はこの作品のシビアな強さをこれからの人生で何度も思い出すんじゃないかと感じている。完結しているので読後感もいい。

この世の富

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イレーヌ ネミロフスキー
未知谷
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【推薦者】uenos aires
【推薦作品】『大いなる不満』
【作者】セス・フリード
【訳者】藤井 光
【推薦文】
 不条理だけどコミカルな短編集。ふと思い出した時に読み返せるコンパクトさも魅力な一冊。

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【推薦者】あしゅぼん
【推薦作品】『リュシル―闇のかなたに』
【作者】デルフィーヌ・ドゥ・ヴィガン
【訳者】山口羊子

【推薦文】
 人は母親から生まれる。あまりにも近しい存在だから、母親を客観的に描くのは難しい。ましてや、心を病み、自ら命を絶った母親のことを書くのはなおさらつらい。この作業をとことんやってのけたのが、この作品『リュシル 闇のかなたに』だ。近親者から絶縁されるのではないかと不安を抱きながら、母という存在の光と闇を極限まで描こうとする。翻訳からは、感情を抑えて淡々と書き進めながらも、心の内で自分自身と闘う著者の姿が伝わってきた。胸打つ作品だった。

リュシル: 闇のかなたに

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デルフィーヌ ドゥ・ヴィガン
エンジンルーム
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【推薦者】さとみ
【推薦作品】『モンスターズ』
【作者】B・J・ホラーズ編
【訳者】古屋美登里
【推薦文】
あとがきには、「受賞歴なし、無名の編纂者、小さな出版元、そして収録作家の半数以上が無名という、いわば「ないないづくし」の本である」とあります。訳者自らこの本を取り寄せて出版を実現されたそうです。翻訳書が売れなくなって、有名作家の、待望の新作しか訳されなくなったら困ります。無名の海外作家の、ともすると埋もれてしまいそうな作品を格調高い日本語で読める幸せをしみじみと感じた一冊でした。

モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集
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【推薦者】百句鳥
【推薦作品】『愉楽』
【作者】閻連科
【訳者】谷川毅
【推薦文】
 母国では数多の著作が発禁処分を受けている閻連科氏の作品。本書も中国現代史に切りこんだ意欲的な社会派小説ながら、同時にマジックリアリズムならではの寓話的な表現性や、そこまで深い予備知識を要さず物語に入りこめるストーリーラインなど、バラエティに富んだ読みどころを持つ秀逸なエンターテイメント小説でもあります。また、方言や障碍者の呼びかたなど翻訳のさいに神経をつかわれたのではないかと思われる箇所も散見されますが、いち読者としてそうした要所要所のこだわりもあわせて高く評価しております。この作品に出会えたことを幸福に思います。

愉楽

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閻 連科
河出書房新社
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【推薦者】金 承福
【推薦作品】『野良猫姫』
【作者】ファン・インスク
【訳者】生田美保
【推薦文】
詩人が書いた小説。しつこくなくさっぱりした文体から伝わる透明な感じが翻訳でもそのまま。二十歳の主人公が詩を書きながら自分で自立していく様子は物語の中に入ってでも応援したくなってしまう。そしてこの主人公が野良猫たちにご飯をあげながらネコ好きの人々とあったかく丁寧にコミュニケーションする姿があったかい。これっといった事件ひとつないストーリーだ、読み終わるとものすごく癒された感じになる。こんなにバーディ感たっぷりの本は久しぶり。うれしい。

野良猫姫 (新しい韓国の文学)
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【推薦者】小松
【推薦作品】『剃髪式』
【作者】ボフミル・フラバル
【訳者】阿部 賢一
【推薦文】
(本文より抜粋)<――喉頭も青や淡い赤の輪からできていて、カラフルな掃除機のホースのようだった。><――ダンスのステップという糸が音楽という針の穴に通ることはなかったけれども・・・・・・>素敵な描写が終始出てくる作品、もしかしたら描写が全てと言えるかもしれない作品におきまして、それもチェコ語という、僕とは限りなく遠い位置にある言葉を訳してくださった翻訳者様に、この場をお借りしましてお礼を言いたいです。ありがとうございます。

剃髪式 (フラバル・コレクション)
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【推薦者】とんぼのめがね
【推薦作品】『あるときの物語』
【作者】ルース・オゼキ
【訳者】田中 文
【推薦文】
カナダの海岸に漂着した日本の少女の日記を主人公のカナダ人作家と同時進行で読むうちに、自分自身も物語の中に取り込まれていくという「はてしない物語」的感覚を味わった。心の奥深くにじんじん届く文章も忘れがたい。

あるときの物語(上)

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ルース・オゼキ
早川書房
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【推薦者】mdsch23
【推薦作品】『アメリカの卑劣な戦争』
【作者】ジェレミー・スケイヒル
【訳者】横山啓明
【推薦文】
原題は「Dirty Wars」、邦題サブタイトルは「無人機と特殊作戦部隊の暗躍」。911以降のアメリカの対テロ戦争がJSOC(統合特殊作戦コマンド)主導で行われるようになった経緯とある一つの結果を描く。SEALなど特殊部隊の下士官兵のノンフィクションを基にした映画は「ローン・サバイバー」や「アメリカン・スナイパー」がありますが、彼らがどのような目的で派遣されているのかはあまり描かれていません。本作は大統領とホワイトハウススタッフ、JSOC司令官がどのような論理でターゲットとなる人物を決めているのか調べられており貴重です。またブッシュ大統領よりもオバマ大統領の方が対テロ戦争遂行でより過激な方法を認めている実態を明らかにしている点も重要だと思います。今読まれるべき翻訳ノンフィクションとしてお勧めの一作です。

アメリカの卑劣な戦争―無人機と特殊作戦部隊の暗躍〈上〉
ジェレミー スケイヒル
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【推薦者】佐野 隆広
【推薦作品】『ダヴィッド・ゴルデル』
【作者】イレーヌ・ネミロフスキー
【訳者】芝 盛行
【推薦文】
個人的に、2014年で1番の収穫がイレーヌ・ネミロフスキーの一連の著作を読めたことでした。「クリロフ事件」、「この世の富」も良かったのですが、やはりイレーヌのデビュー作「ダヴィッド・ゴルデル」を推薦したいと思います。一連の著作を翻訳した芝盛行氏と出版した未知谷に感謝とエールを送りたいと思います。

ダヴィッド・ゴルデル

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イレーヌ ネミロフスキー
未知谷
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【推薦者】相楽
【推薦作品】『火星の人』
【作者】アンディ・ウィアー
【訳者】小野田和子
【推薦文】
 危機を前にプロたちが、各々の職務上求められる(特に慎重さと大胆さ、リスクとリターンに対する)視点・判断では各々異なりつつも”まずは主人公の救出が第一”では一致、あくまで問題への実際的な対処という線で行動していく様が心地良い。特に主人公・ワトニーが”最前線でプロフェッショナルの宇宙飛行士が非常事態に見せるものとして実に適切かつ魅力的な人間味、慎重さと大胆さ”を発揮していく様が最高に愉しい。そして彼の言動は前向きなユーモアにいつも彩られている(他のプロフェッショナルたちを描く上でも彼らの(時にブラックな)ユーモアが光るが、やはりなんといってもワトニーのそれだろう)。
そして、それらの魅力、特にユーモアを見事に伝える文章ということにおいて、小野田和子さんによる訳文の力もとても大きいのではと思う。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
売り上げランキング: 7,966

【推薦者】Chica
【推薦作品】『TTT トラのトリオのトラウマトロジー』
【作者】ギジェルモ・カブレラ・インファンテ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
 作品の文学的価値、翻訳の素晴らしさ、邦訳することの意義、この三点において最も受賞に値するのがこの作品だと思います。言語的実験に富む作品でありながら、小説としてクオリティも高いところが推薦の理由です。お腹を抱えて笑う場面が何度もあり、それでいて、キューバの歴史と照らし合わせてホロリとくることあり、分厚い本でしたが、飽きずに最後まで読破できました。

TTT: トラのトリオのトラウマトロジー (セルバンテス賞コレクション)
ギジェルモ・カブレラ インファンテ
現代企画室
売り上げランキング: 315,195

【推薦者】わいえむ
【推薦作品】『バニヤンの木陰で』
【作者】ヴァデイ・ラトナー
【訳者】市川恵里
【推薦文】
恥ずかしながら、この本を読むまでカンボジアの悲劇ついては何も知りませんでした。興味を持つこともありませんでした。題名と表紙に惹かれて手に取ったものの、虐殺を生き抜いた少女の自伝的小説、という紹介に最初は読むのをためらいました。ですが、冒頭の、主人公ラーミの平和な時代の優雅な暮らしぶり、花の香りが漂ってくるようなカンボジアの美しい自然描写に引き込まれ、胸がつぶれそうなほど苦しい場面でも、ページをめくる手が止まりませんでした。悲惨な状況でも持って生まれた品を保つ主人公の姿に重なるような、端正な訳文の読みやすさが、これまで触れてこなかった分野の世界に連れて行ってくれたのだと思っています。この本を読むことができて、本当に良かったです。

バニヤンの木陰で

バニヤンの木陰で

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ヴァディ ラトナー
河出書房新社
売り上げランキング: 680,611

【推薦者】モイール
【推薦作品】『おだまり、ローズ』
【作者】ロジーナ・ハリソン
【訳者】新井雅代
【推薦文】
強烈な個性をもったレディ・アスターのもと、おつきの立場で理不尽な言動にも負けないローズのメイド戦記。主人から繰り出される理不尽100%の言動にもめげず、一歩も引かないローズの強さの秘密は、英国貴族である主人の生活を整え、体面を保つというミッションへのぶれないロイヤリティゆえ。レディ・アスターも自分がローズに甘えていることは十分承知しつつわがままは止まらないけれど、ローズもそれがわかっているから、遠慮せず言い返し、意見を具申しては「おだまり、ローズ」をくらいつつ共に過ごした35年間。これは、愛の物語だ!

おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想
ロジーナ ハリソン
白水社
売り上げランキング: 9,388

【推薦者】藤枝 大
【推薦作品】『わたしたちのすべての昨日』
【作者】ナタリーア・ギンツブルグ
【訳者】望月紀子
【推薦文】
人間は生きているからどうしたって動いてしまう。思考を停止させようとしても何かしら考えてしまう。まあそれは仕方ない。だって生きているんだから。本書を読み進めると決定的に時が止まる瞬間がある。時代も時代めまぐるしく話は展開するが、ふっと何もかも停止したようなその一時、昨日をおもう。わたしたちすべてにとっての昨日。大戦期を生きた人々も、亡くなった父親も過ごしたであろう昨日。生きているからこそ感知できない一時を感じさせてくれる名訳を、推したい。

わたしたちのすべての昨日
ナタリーア ギンツブルグ
未知谷
売り上げランキング: 214,839

【推薦者】林 浩治
【推薦作品】『歳月』
【作者】鄭智我
【訳者】橋本智保
【推薦文】
鄭智我の短編集。収録された作品はどれも山村が舞台で、静かに流れる文章は情緒豊かでもの悲しく、読者の情感を誘う。歴史を踏んで歩む人間の姿を清冽に描いた生の物語を、巧みな日本語で日本語を母語として育った我々の心に響かせる。韓国語は日本語と似ているだけに翻訳は難しい。名著の名訳。

歳月―鄭智我作品集

歳月―鄭智我作品集

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鄭 智我
新幹社
売り上げランキング: 89,756

【推薦者】冬木 万里子
【推薦作品】『さよなら、そして永遠に』
【作者】ロザムンド・ラプトン
【訳者】笹山裕子
【推薦文】
 『シスター』でデビューした英国の女流作家ロザムンド・ラプトンの第二作。火事で瀕死の重傷を負った女性と、その家族の物語です。火事の真相を追うミステリーでもありますが、家族や女性の生き方、命、愛について、とても考えさせられる作品です。翻訳も丁寧でやさしく、読みやすいです。

さよなら、そして永遠に

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ロザムンド ラプトン
エンジンルーム
売り上げランキング: 544,054

【推薦者】unyue
【推薦作品】『よりぬきウッドハウス2』
【作者】P・G・ウッドハウス
【訳者】森村たまき
【推薦文】
この世知辛い世の中、笑いがなければ生きては行けない。本でも読んで憂さ晴らし… とは思っても、実際に本を読んで笑うと云う事って余りないのではないでしょうか。それだけ人を笑わせるって大変な事なのに、ウッドハウスの作品を読んだら笑わずにはいられないってところが凄いのです。そのウッドハウス作品を自身の強力なウッドハウス愛を以て紹介し続けている訳者の森村たまきさんに、わたしは足を向けては眠れません。これからもずっとずっと、ウッドハウスの慇懃無礼で諧謔に満ちたユーモア、プリーズ。

よりぬきウッドハウス2

よりぬきウッドハウス2

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P・G・ウッドハウス
国書刊行会
売り上げランキング: 584,297

【推薦者】some day
【推薦作品】『さよなら、そして永遠に』
【作者】ロザムンド・ラプトン
【訳者】笹山裕子
【推薦文】
著者ロザムンド・ラプトンは、ジェフリー・ディーヴァーが言うように、文学と犯罪が重なるところに立っている。文学が犯罪をとりあげる理由は、ある劇作家が絶筆宣言で語ったように、社会的現実が作家の構想力を超えてしまったからかもしれない。この作品では、生活に埋もれかかっていた愛が、犯罪による絶望的な情況の中で、激しく燃えあがり結晶化する。カミュの『ペスト』で描かれた医師とその妻のような、せつない不条理な愛だ。とはいえ、この作品は第一級のミステリーでもある。最後まで、真相を読み解く人は、そう多くはないだろう。なぜなら真実の法廷に立たされるのは、犯人ではなくて言葉だからだ。すべての仕掛けは、その一言になだれこむ。そこにこの著者の非凡な才能を感じる。翻訳は自然でよどみなく、この600頁ちかい作品を一気に読ませてくれる。想像でしかないが、原文の息遣いまで伝えてくれているように思える。

さよなら、そして永遠に

さよなら、そして永遠に

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ロザムンド ラプトン
エンジンルーム
売り上げランキング: 544,054

【推薦者】深大寺
【推薦作品】『お父さんの手紙』
【作者】イレーネ・ディーシェ
【訳者】赤坂桃子
【推薦文】
ヤングアダルト(青少年)向け小説ですが、あらゆる世代の読者に読んでほしいので推薦します。主人公のペーターは、ユダヤ系のハンガリーの家庭に生まれた男の子。ナチが台頭する時代に過酷な運命、壮絶な歴史の一場面に遭遇しますが、お父さんのラズロやおじいさんのナーゲル先生らの豊かな愛情に包まれたペーターの目には、それがどう映ったのか?子供の頃に読んだエーリヒ・ケストナーの小説を思い出させるような、少し古めかしい独特のユーモアが光っています。躍動感のある翻訳で、一気に読めます。1998年ドイツ児童文学賞受賞作。

お父さんの手紙 (つのぶえ文庫)
イレーネ ディーシェ
新教出版社
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【推薦者】竹田 純
【推薦作品】『黒ヶ丘の上で』
【作者】ブルース・チャトウィン
【訳者】栩木伸明
【推薦文】
ウェールズとイングランドの国境の上に住む集落。そこに住む人々の一生が淡々と描かれる。という紹介は間違いではない。しかし、運命とは歯車である。といった作曲家のことを思い出す。因果応報でも混沌めいたものでもなく、人の一生は、時間とともに残酷に狭められていく。期待が失望に、若さが老いに、誕生が死に。登り続ける人生はない。そう、だからこそ、一瞬の感情の発露や気まぐれかもしれない愛情や友情は美しい。その美を抱えながら、孤独なまま死ねるなら、そんな思いを抱かせてくれる。物語の中心にいる双子の兄弟は似ているし、周囲からつがいとして見られることも多いがつぶさに見れば何もかも違う。距離を置いて何がしかを見るときに生まれる憧憬の不確かさに思い至る。

黒ヶ丘の上で

黒ヶ丘の上で

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ブルース・チャトウィン
みすず書房
売り上げランキング: 306,730

【推薦者】CAMP DALT
【推薦作品】『デイゴ・レッド』
【作者】ジョン・ファンテ
【訳者】栗原俊秀
【推薦文】
ジョン・ファンテは今のところ「チャールズ・ブコウスキーが影響を公言した」という文脈で言及されることの多い作家だ。だが、ブコウスキー的な無頼を期待して本書を手に取ると、その期待は意外な方向に裏切られる。本書に収録されている13の短編・中編小説を通奏低音のように貫いているのは、イタリア系アメリカ移民の生活の匂いと、骨身にまで浸透しているカトリックの日常的な信仰感覚だ。決して豊かではなく、といって敬虔な清貧さもない世俗的な生活の中で、折に触れて顔を出す聖性への抗いがたい帰依の感情を描き出してみせたことは、本書でファンテが到達したひとつの文学的高峰だと言える。気鋭のイタリア文学研究者・栗原俊秀による訳も、ファンテの素朴な文章の滋味はそのままに、日本語としても魅力のある抑制の効いた文章に仕立てられている。この小説を、彼の手になる日本語で読めたことに感謝したい。白眉は中編『ディーノ・ロッシに花嫁を』。

デイゴ・レッド

デイゴ・レッド

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ジョン ファンテ
未知谷 (2014-08-18)
売り上げランキング: 139,094

【推薦者】益岡 和郎
【推薦作品】『エウロペアナ―二〇世紀史概説』
【作者】パトリク・オウジェドニーク
【訳者】阿部賢一、篠原琢
【推薦文】
解説にある「二〇世紀を語るさまざまな言葉をめぐる書物」という形容がぴったり。普段何気なく使っている言葉がいかに新しく、多義的であるかを突き付けられ、ところどころで狼狽えました。この一冊を註なしで伝えるための言葉選びは大変難しい仕事だったのではないかと考え、本書を推薦いたします。

エウロペアナ: 二〇世紀史概説 (エクス・リブリス)
パトリク オウジェドニーク
白水社
売り上げランキング: 133,766

【推薦者】二月の風
【推薦作品】『リュシル-闇のかなたに』
【作者】デルフィーヌ・ドゥ・ヴィガン
【訳者】山口羊子
【推薦文】
まるで悪魔が、その幸せに嫉妬したかのように事件はおこり、母の家族は壊れていった。そしてまた母も人生の悲哀にとらえられ、娘たちとの生活は小舟のように漂流する。不安な人生。光が見え、かすかな希望をもったとたんに、母の狂気が再発し娘の心は折れる。とぎすまされた翻訳からは、そんな著者の思いや叫びや涙が聞こえてくるようだ。しかし同時に、不思議なことに、その行間からは、家族のあかるい笑いにみちた生活が、時としてユーモアが、捨てることのできない愛が、立ち上がろうとする意志が伝わってくる。この作品は、誰もが人生を感じるような作品だ。終章で、娘は遠く旅立った母にボードレールの詩「旅への誘い」を捧げる。この詩の新しい翻訳は、現代的な感覚にあふれており、とてもみずみずしく感じられる。

リュシル: 闇のかなたに

リュシル: 闇のかなたに

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デルフィーヌ ドゥ・ヴィガン
エンジンルーム
売り上げランキング: 111,295

【推薦者】神崎 紫音
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
 ほぼ全編にわたって貫かれる、ひっそりとした哀愁。その薄暗さのなかに、まるでともしびのように、はっとするような美しい描写が差し込まれる。読書中はひたすらにその明かりを追いかけて進み、読後には奇妙なカタルシスを味わった。本書にまつわる忘れがたいエピソードや前評判の高さに、手に取ることを躊躇していたが、ためらいなど杞憂だった。素晴らしい作品を届けてくれた東江一紀氏に感謝を込めて、本作を推薦いたします。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 13,671

【推薦者】d m
【推薦作品】『愛の裏側は闇』
【作者】ラフィク・シャミ
【訳者】酒寄進一
【推薦文】
去年一番時間をかけて読んだ、本屋にバンバンに積まれてほしい

愛の裏側は闇 (1)

愛の裏側は闇 (1)

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ラフィク・シャミ
東京創元社
売り上げランキング: 173,047

【推薦者】がにまむし三太夫
【推薦作品】『ぼくと数字のふしぎな世界』
【作者】ダニエル・タメット
【訳者】古屋美登里
【推薦文】
タイトルに「数字」とあるけれども、エッセイのテーマは言葉、音楽、詩、アート等、多岐に渡り、そのひとつひとつがこの世界の美しさ・素晴らしさを再認識させてくれる、とっても素敵な本でした。

ぼくと数字のふしぎな世界 (ぼくと数字の世界)
ダニエル・タメット
講談社
売り上げランキング: 474,382

【推薦者】アラシ
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
 トマス・ピンチョンの最高傑作。佐藤良明さんの翻訳と脚注も素晴らしかった。こんなにも凄まじい小説を読んでしまうと他の小説が読めなくなるのではないかと不安になった(ロベルト・ボラーニョの「2666」を読んだときも同じ心境になった)。とにもかくにもただただページをめくることがスリリングで本当に楽しかった。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
売り上げランキング: 41,016

【推薦者】U U
【推薦作品】『女郎蜘蛛』
【作者】パトリック・クェンティン
【訳者】白須清美
【推薦文】
大好きな「○○パズル」シリーズの1作。なのに何故かタイトルが「○○パズル」でないのが残念。でも中身は面白いです。

女郎蜘蛛 (創元推理文庫)

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パトリック・クェンティン
東京創元社
売り上げランキング: 195,354

【推薦者】森下 育彦
【推薦作品】『愉楽』
【作者】閻連科
【訳者】谷川毅
【推薦文】
『狂人日記』や『阿Q正伝』を思いだす、骨太な社会派作品だが、邦題から、また内容的にも、中上健二『千年の愉楽』を想起させるところもある。作品の肝である「方言」の翻訳に広島弁を用いたのは、中国語のニュアンスとして実際のところどうなのかは分からないが、作品世界の表し方として新鮮だった。

愉楽

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閻 連科
河出書房新社
売り上げランキング: 73,913

【推薦者】友幸友幸
【推薦作品】『窓から逃げた100歳老人』
【作者】ヨナス・ヨナソン
【訳者】柳瀬尚紀
【推薦文】
爆笑するしかない!タイトル通り序盤から、なんちゅう老人や、と思わせてくれる。
出演者それぞれの視点に入れ替わって、走れなくても、逃げ回る。めちゃくちゃ面白い逃走小説だと思う。

窓から逃げた100歳老人

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西村書店
売り上げランキング: 2,342

【推薦者】小寺 啓史
【推薦作品】『TTTトラのトリオのトラウマトロジー』
【作者】ギジェルモ・カブレラ・インファンテ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
どちらにしても、寺尾隆吉氏だった。『別荘』と最後まで迷ったが、他の人が訳したと仮定した場合においての、オリジナリティの突出し具合という点で、また原作が翻訳への最低条件としてこれを求めていることーつまり、こうでないと本として成立しないーという点で、これに決まった。 尋常ならざる言語の奔流(ハンパない言葉の洪水)と、哀切措く能わざる郷愁への誘惑(おさえきれない胸のせつなさ!)の前では、我々の脳髄は震え、蕩け出してしまう(脳味噌ぐちゃぐちゃ、溶けちゃいそうです)。ピケティじゃないけど、翻訳業界における富の集中ー英米独仏露の先進国に比べ、他の地域との間には歴然たる格差がある。ラテンアメリカも健闘しているとはいえまだ「諸国」扱いだ。これからの世界文学を語るうえで寺尾氏は特に外せない存在だ。記念すべき第1回に氏に受賞していただき、第2回以降からは選考委員として加入されることを熱望する。

TTT: トラのトリオのトラウマトロジー (セルバンテス賞コレクション)
ギジェルモ・カブレラ インファンテ
現代企画室
売り上げランキング: 206,384

【推薦者】Rashisu
【推薦作品】『黄泉の河にて』
【作者】ピーター・マシーセン
【訳者】東江一紀
【推薦文】
生の中に死を、死の中に生を感じる10の短編集。ナチュラリストでもあるマシーセン唯一の自薦作品集を、東江一紀氏の素晴らしい日本語で読めるのは本当に幸せなことだと思います。

黄泉の河にて

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ピーター・マシーセン
作品社
売り上げランキング: 163,571

【推薦者】心が ぴょんぴょん
【推薦作品】『真夜中のショコラは恋の味』
【作者】ローラ・フローランド
【訳者】高里ひろ
【推薦文】
翻訳の文章がライトノベル風に書かれているので、キャラクター達のキャラ立ちが良く、表情や感情を妄想(想像)出来るので、おもしろく楽しんで読めました!この本のおかげで、さらにロマンス小説の魅力に取りつかれてしまいました。翻訳をしてくださった、高里ひろさんのおかげで、、また読んでみようと思ってしまう作品に出合えることが出来ました!

真夜中のショコラは恋の味 (ヴィレッジブックス)
ローラ・フローランド
ヴィレッジブックス
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【推薦者】川内清
【推薦作品】『黒ヶ丘の上で』
【作者】ブルース・チャトウィン
【訳者】栩木伸明
【推薦文】
電車の中で、家で、喫茶店で。昼の時間に、夜の時間に。いつでも開けば、そこにはその丘固有の時間があった。一つの場所に、しっかりと流れる百年の時間。それを味わうのが、本当に素晴らしい体験だった。古典と言える風格もある作品で、これまで「旅」の作家であり、少しスノッブなイメージだったチャトウィンが、いかに技量のある作家だったか、認識を新たにした。ウェールズとイングランドの境の地域の描写が素晴らしい。そして、その文章をアイルランドの景色を映し見ながら訳したという訳文も素晴らしい。出会えてよかった! と心から思える一冊だった。

黒ヶ丘の上で

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ブルース・チャトウィン
みすず書房
売り上げランキング: 254,066

【推薦者】山川 さくら
【推薦作品】『人生を、もっと幸せに生きるために ― 死者からのアドバイス』
【作者】ジェームズ・ヴァン・プラグ
【訳者】安達 直子
【推薦文】
この本は、目に見えない世界について学びながら、心ゆさぶられる体験をさせてくれます。たとえば、亡くなった家族はあの世から私たちを見守りつづけてくれているという癒し、許すという行為で私たちだけでなく霊たちも心が解放されるという感動、霊の愛ゆえの導きとしか説明がつかない事象に対する驚き、どんな不快な体験も私たちが学ぶための素晴らしい機会だという気づき、そして私たちは輪廻転生をくり返して学びつづける不滅の魂だという確信などを味わうことができます。さまざまな概念を、臨場感あふれる数々の実話によってわかりやすく説明しているため、目に見えない世界を信じるか信じないかにかかわらず、人生を新しい視点から見つめ直す素晴らしいきっかけになります。訳文がとても読みやすかったので、つかえることなくスムーズに読みすすめました。

人生を、もっと幸せに生きるために
ジェームズ ヴァン・プラグ
エンジンルーム
売り上げランキング: 20,676

【推薦者】佐々木 和樹
【推薦作品】『エウロペアナー20世紀史概説』
【作者】パトリク・オウジェドニーク
【訳者】阿部賢一、篠原琢
【推薦文】
事実や事実じゃないと思われることや噂や想像も全て混ぜ合わせた本書は小説なのか歴史書なのか分からない。でも読んでて浮かんでくるのは物語。

エウロペアナ: 二〇世紀史概説 (エクス・リブリス)
パトリク オウジェドニーク
白水社
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【推薦者】AT
【推薦作品】『愛の裏側は闇』
【作者】ラフィク・シャミ
【訳者】酒寄進一
【推薦文】
シリアを舞台にした全3巻、304もの章から成る壮大なロマン。20世紀初頭から現代に至るまでの長い時間の物語のなかで、日本人には馴染みの薄いシリアの市民たちの日常生活と人生模様を非常にわかりやすく、一気読みさせてしまうほどの読みやすさで日本語にした訳者の力量に感服、です。

愛の裏側は闇 (1)

愛の裏側は闇 (1)

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ラフィク・シャミ
東京創元社
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【推薦者】b-be-b
【推薦作品】『ダヴィッド・ゴルデル』
【作者】イレーヌ・ネミロフスキー
【訳者】芝盛行
【推薦文】
2014年は未知谷からイレーヌ作品が4冊刊行されました。どれもすばらしく感じましたが、中でも本書が最も印象に残っています。本作の主人公は、金儲けだけが生き甲斐のように仕事に打ちこむユダヤの老実業家ダヴィッド・ゴルデル。家族の関係は冷え切り、ゴルデルは金儲けに熱意をむけながらも、金そのものは嫌悪していました。やがて、ゴルデルは多くのものを失います。金も家族も信じず、厭世的なかれを再起させたものが何であったか、冷徹と激情を抱えたゴルデルの心の動きは、矛盾をはらむゆえに感動を呼びます。 定評のある古典や評判の高い新作を読むことも喜びですが、時の流れとともに一度は埋もれてしまった秀作に出会える喜びもまた、大きなものです。

ダヴィッド・ゴルデル

ダヴィッド・ゴルデル

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イレーヌ ネミロフスキー
未知谷
売り上げランキング: 944,841

【推薦者】まくたん
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明

【推薦文】
圧倒的な存在感をみせる装丁と、上下巻の重厚感に気後れしながらも手に取ると、テンポよく、エネルギーに満ちた訳文、微細にわたり、クロスレフェランスを多数含む脚注に助けられ、一読目を終えました。できることなら山にこもって再読したい、と思わせる。翻訳書というだけでなく、参考書の役割も果たしてくれる充実の作品です。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
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【推薦者】丸山 哲郎
【推薦作品】『サマータイム、青年時代、少年時代 ──辺境からの三つの〈自伝〉』
【作者】J・M・クッツェー
【訳者】くぼたのぞみ
【推薦文】
 「サマータイム」「青年時代」「少年時代」という自伝的三部作を、作者自身が全面改稿して合本としたScenes from Provincial Lifeの完訳版。三作それぞれ独立した作品として優れたものだが、とりわけ「サマータイム」がすばらしく、すでにブッカー賞を二度受賞しているにもかかわらず、もう一度この作品が候補作として選ばれたのもうなずける。「サマータイム」にはこれでもかというくらい抉りを効かせた自己批評が全篇にみなぎっているが、非常に精緻にコントロールされていて強い緊張感が伝わってくる。クッツェーの死後に伝記作家が関係者を訪ねてインタビューを行うという設定自体、〈自伝〉ジャンルへの批評意識が強く働いているのだろう。このきわめて知的な作家を読む醍醐味が存分に味わえる、じつにおもしろい小説だ。翻訳は長年クッツェーに取り組んできたくぼたさんの鏤骨の訳業。巻末年譜・解説も充実している。

サマータイム、青年時代、少年時代──辺境からの三つの〈自伝〉
J・M・クッツェー
インスクリプト
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【推薦者】まくたん
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明

【推薦文】
圧倒的な存在感をみせる装丁と、上下巻の重厚感に気後れしながらも手に取ると、テンポよく、エネルギーに満ちた訳文、微細にわたり、クロスレフェランスを多数含む脚注に助けられ、一読目を終えました。できることなら山にこもって再読したい、と思わせる。翻訳書というだけでなく、参考書の役割も果たしてくれる充実の作品です。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
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【推薦者】三月の水
【推薦作品】『イージー・トゥ・リメンバー アメリカン・ポピュラー・ソングの黄金時代』
【作者】ウィリアム・ジンサー
【訳者】関根光宏
【推薦文】
これまで気になっていたスタンダード・ソングについて、作家ごとにまとめられているだけでなく、全体を通して読むと、その通史、歌の構造などについても教えてもらえる重宝な本。特に「歌は、思い出と深くつながっている。においと同じように、歌は過去の出来事を一瞬のうちに思い起こされる装置なのだ」と、歌詞についての記述がとても参考になった。片岡義男氏の解説や丁寧な索引もありがたいけど、その意味では、原著にあるという、曲をカテゴリー分けしたリストも見てみたかった。この本のおかげで、このところ、エラフイッツジェラルドの作家別のソングブックばかりをずっと聴いている。

イージー・トゥ・リメンバー: アメリカン・ポピュラー・ソングの黄金時代
ウィリアム ジンサー
国書刊行会
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【推薦者】宮脇 眞子
【推薦作品】『ベルリンに一人死す』
【作者】ハンス・ファラダ
【訳者】赤根洋子
【推薦文】
ナチスドイツ下のベルリン、ひとり息子の戦死をきっかけに、つつましい、しかし死と背中合わせの抵抗運動をはじめた中年夫婦と、彼らを取り巻く人々をめぐる圧巻の長編小説。二段組・約六百頁の大著だが、息もつかせぬ展開とリアリティある人物描写にひと晩で読み終わった。頁を繰る手が止まらなかった。
ナチス台頭前、ドイツきっての人気作家だったファラダ(ナチスに「望ましくない作家」とされ、戦後は1947年に本作を発表、間もなく死去する)の原作がそもそも凄いのは勿論だが、翻訳の力もひじょうに大きい思う。読んでいる途中、翻訳小説であることを完全に忘れてしまう、いつのまにか物語の中に完全に入り込ませてくれる、すばらしい翻訳である。

ベルリンに一人死す

ベルリンに一人死す

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ハンス・ファラダ
みすず書房
売り上げランキング: 22,592

【推薦者】大戸 敦子
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
 50年前の小説だということを全く意識させられることがないのは、50年前も現在もそして50年後も、どんな世の中になろうとおそらく、人の生の懸命さ、理不尽さ、美しさ、悲しさ、は変わらないからだろうと思います。幸福だろうが不幸だろうがストーナーは生き、幸福だろうが不幸だろうが私たちもそれを受け入れ生きていかねばなりません。だからこの小説は、誰の人生でもあるのでしょう。
いいとこたかだか数十年の人の一生は小さく儚いけれど、その小さく儚いものにこそ、大きく太い力が宿ることを思い知らされます。そしてそこに訳者である東江さんの人生も、間違いなく重ねられていたであろうことも思い、どこからか静かな力を受け渡されるようでした。大人たちにこそ読んでほしい小説です。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 6,069

【推薦者】ふくろう
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
偉大なる積読の重鎮『重力の虹』を「読んでみようかな」という気にさせる迫力がすさまじい。研究書を同時並行で読んでいるかのような詳細な注訳はもちろんのこと、1ページ目から引き込まれる勢いのある日本語、ピンチョンの百科全書的白痴に親しみをわかせるバカバカしい雰囲気(起きーろ、みんなケ~ツあげ~ろー)、すべてにおいて佐藤氏のパラノイア的な熱量を感じる。翻訳は作者と訳者の共作に近い、という一文をどこかで読んだことがあるが、佐藤訳『重力の虹』はまさに作品と呼びたくなる超絶技巧の一品。「1000時間ほど読むといい」とにこやかに死亡フラグを立ててくる佐藤氏、やっぱりピンチョンが3分の1ぐらい乗り移っているのではないかと思う。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
売り上げランキング: 129,241

【推薦者】嶋田 洋一
【推薦作品】『火星の人』
【作者】アンディ・ウィアー
【訳者】小野田和子
【推薦文】
最初はキャンベルの『月は地獄だ!』みたいなものを想像していたんですが、全然違った(笑)。絶体絶命の状況下、手許にあるものを最大限に利用し、何とか生き延びようと苦闘する主人公。それでいてユーモア感覚は失わず、次々と襲い来る困難に、まるで楽しんでいるかのように対処していく。本来ならすごくはらはらして、読むのが辛くなるような話のはずなのに、にやにやしながら読めてしまうという不思議なSFでした。個人的に2014年一番の収穫です。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
売り上げランキング: 3,592

【推薦者】山崎 直樹
【推薦作品】『フラニーとズーイ』
【作者】J.D.サリンジャー
【訳者】村上春樹
【推薦文】
原作そのものが持つ哲学的なものや宗教性という難しさはありますが、文体に流れというかリズムがあり一気に読めました。

フラニーとズーイ (新潮文庫)
サリンジャー
新潮社 (2014-02-28)
売り上げランキング: 17,129

【推薦者】ちく わぶ
【推薦作品】『社会はなぜ左と右にわかれるのか』
【作者】ジョナサン・ハイト
【訳者】高橋洋
【推薦文】
哲学の本です。哲学というと、眉根に皺よせややこしい理屈をこねてる印象があって、近寄りがたい印象があります。しかし、この本は、書名が示すように、親しみやすくわかりやすい文章で書いています。本そのもののテーマはもちろん面白い上に、それを読みやすく頭に入りやすい日本語の文章に移し変え、私たちに紹介してくれた訳者さんに感謝します。本のテーマは深刻かつ衝撃的なもので、私たちが考える「正義」の正体を容赦ない実験と筆致で暴くものです。人が持つ「倫理観」のみもふたもない実態と、それを巡る議論は、大きな絶望と小さな希望、そして更に多くの疑問を読者に残します。重いテーマを扱った本ながら、義務教育修了程度の知識があれば読みこなせるでしょう。多くの人に読んでもらいたいと思います。

社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学
ジョナサン・ハイト
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 16,547

【推薦者】A. shun
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子

【推薦文】
私たちが知ることのない葛飾北斎の人間味と、江戸の町の文化や町人の生活のさまを、父と同じく絵師である北斎の娘、お栄を通じて著されている作品。そのおもしろさは、翻訳とは思えない多彩な表現力によるところが大きい。作者の取材力、創作力のバランスの良さもさることながら、この小説は訳者の作品と感じさせる秀逸な表現力によって惹きつけられた。

北斎と応為 上

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
彩流社
売り上げランキング: 151,516

【推薦者】天神 るな
【推薦作品】『バラードとロマンス』
【作者】アダム・ミツキェーヴィチ
【訳者】関口時正
【推薦文】
イギリスにおけるシェイクスピア、ドイツにおけるゲーテに相当するポーランドの国民詩人アダム・ミツキェーヴィチ(1798-1855)。彼の国の小学校教科書にも載る詩も含む本詩集には、日本やアメリカ、西欧、アジアにはないスラヴ・ポーランド文化の底知れぬ厚みや香りが閉じ込められています。日本ではマイナーな部類に入る言語文化におけるこの記念碑的古典が、異文化・多文化理解の鍵としてこの国でも日の目を見ることになってくれたらと思います。

バラードとロマンス (ポーランド文学古典叢書)
アダム ミツキェーヴィチ
未知谷
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【推薦者】さくら
【推薦作品】『エドウィン・ドルードのエピローグ』
【作者】ブルース・グレイム
【訳者】森沢くみ子
【推薦文】
ミステリー小説を読み始めたはずが、冒頭を読み始めると、まるでSF小説のような始まり方に、驚かされ、どんどんストーリーのなかに引き込まれていきました。主人公のスティーヴンズ警視と相棒のアーノルドは、特殊な能力があるわけでもないが、70年以上昔のロンドンでエドウィン・ドルード氏失踪事件を捜査することになるが、時代の違いに惑わせられながらも事件を解決していく、やっぱりミステリーでした。。ラストがどうなるのか、こんなにもドキドキ感を最後まで持続しながら読めたのは、うれしい限りです。シリーズ化しているので、他の作品も、ぜひ読んでみたいです。

エドウィン・ドルードのエピローグ (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)
ブルース グレイム
原書房
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【推薦者】HHH
【推薦作品】『TTT トラのトリオのトラウマトロジー』
【作者】ギジェルモ・カブレラ・インファンテ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
原文に忠実であればあるほど、原書本来の面白さから乖離してしまう。その不条理に直面することで日本語はさらにそのゆたかな可能性を獲得する。翻訳不可能な文学作品の極北であるだろう本作品を寺尾氏は見事に日本語文学として昇華させた。のっけからけたたましく言葉遊び、駄洒落が連発するが、気後れすることはない。あくまでも主役は革命前夜のキューバ・ハバナの歓楽街であって、そこにたむろするさまざまな魅力あふれる人間の肉体に読むものは魅了され戯れることになるのだが、その乱痴気騒ぎを妖艶に照らし出しているのは著者カブレラ・インファンテの悲哀に似た郷愁であることも読むうちにわかってくる。そこにこそ、この翻訳者の力量と忠実が発揮されている。またキューバと米国の国交正常化交渉開始の年に邦訳刊行というのも興味深い。同じく大傑作で昨年刊行された同氏訳によるドノソ『別荘』を差し置いてでも本書を推薦するゆえんである。

TTT: トラのトリオのトラウマトロジー (セルバンテス賞コレクション)
ギジェルモ・カブレラ インファンテ
現代企画室
売り上げランキング: 464,539

【推薦者】め かぶ
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
ひとりの男の一生を、ただひたすら丁寧に丹念に追った作品。静謐な描写、重なってゆく情緒、ゆっくり読んで何度も噛みしめたくなる訳文。東江一紀という翻訳者がなぜこの作品を選んだのか、想像すると泣きたくなります。

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 4,085

【推薦者】みゆ
【推薦作品】『華氏451度』
【作者】レイ・ブラッドベリ
【訳者】伊藤典夫
【推薦文】
60年以上前に書かれたSF小説の新訳。本を読むことを禁じられた世界を描き、21世紀には物語に登場する製品が商品化している。旧訳と比べて読みやすくなり、本を読むことの意味を問いかけてくる。古典小説は、新訳で印象が変わることを本書で実感。本が好きな方には一度は読んで欲しい『華氏451度』。

華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
レイ・ブラッドベリ
早川書房
売り上げランキング: 20,191

【推薦者】ゆきこ
【推薦作品】『カステラ』
【作者】パク・ミンギュ
【訳者】ヒョン・ジェフン  斎藤真理子
【推薦文】
とても現実的な世界に、突如ファンタジーが入り込む。それが唐突で宇宙レベルの壮大さだったりするのに、感覚はとても身近で、普遍的な気持ちにさせるのだ。何度も笑ったし、びっくりしたし、ストンっと落とされたりかわされたりしながら、しっかりキュッとくる。シニカルで不条理で切なくなるけど、なぜか「ま、こんな毎日だけどいっか」って元気にもなる。文章はとても軽快でポップでライト、でもテーマはずっしり。そう感じさせてくれた翻訳もとても素敵だった。もっとパク・ミンギュの作品を読みたい!

カステラ

カステラ

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パク ミンギュ
クレイン
売り上げランキング: 656,886

【推薦者】ミネ ラル
【推薦作品】『すてきな愛の夢』
【作者】アンドレア・ヴィターリ
【訳者】山下 愛純
【推薦文】
イタリアのコメディ作家の最新邦訳。いつもの(登場人物が他の作品にも顔を出したりする)どたばた劇が展開されるストーリー。著者の故郷であり現在もお医者さんとして住んでいるイタリア北部の町ヴェッラーノ。この著者の作品はすべてベッラーノが舞台で、登場するお店にもモデルがあるそう。今回はタイトルからいつもとは少し違うのかな?と思っていたものの、いつもの期待どおりのストーリーで、エンディングもさすが。タイトルに、いい意味で裏切られました!訳者は本作がデビュー作になるようですが、ヴィターリ作品のカラッとした明るさが、しっかり感じられます。むしろこれまでより、しなやかになっているかもしれません。著者のテイストに、よくマッチしている印象です。登場人物が多いため、最初はカタカナの名前に馴染むのにちょっとてこずりますが、カバーの袖や本編の前に主な人物が一覧表になっているので、すぐに大丈夫になります。

すてきな愛の夢

すてきな愛の夢

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アンドレア・ヴィターリ
シーライトパブリッシング
売り上げランキング: 1,189,119

【推薦者】eclectically
【推薦作品】『雪山の白い虎』
【作者】デイヴィッド・ゴードン
【訳者】青木千鶴
【推薦文】
 人間の情けなさと切実さを同時に感じて泣き笑いしそうになる小説が好きなのですが、この短篇集もその一つです。バリエーション豊かな13篇ですが、世の中に居場所がないと感じている主人公が、まったく違う世代・国・家庭環境・文化圏などの他人と関わり、何かを受け取ったり与えたりして、何らかの形で成長する、という共通のテーマのようなものも感じました。文脈が積み重なることで平凡な一つの単語でも可笑しくてしょうがなくなるようなユーモアの埋め込み方、細やかで詩情豊かでありながらくどくなく退屈しない自然描写も、見事な書きぶり(訳しぶり)だと思いました。ミステリー作家のイメージがある作家ですが、現代文学が好きな人(ただし青少年にはちょっと刺激が強そうなので、大人の方)におすすめしたいです。カバーの紙の質感と装画も好きです。

雪山の白い虎

雪山の白い虎

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デイヴィッド・ゴードン
早川書房
売り上げランキング: 309,892

【推薦者】小松 孝一
【推薦作品】『わたしの心のなか』
【作者】シャロン・M・ドレイパー
【訳者】横山和江
【推薦文】
 主人公の少女は、脳性まひのため、言葉を発することが出来ない。心の中には何千、何百のことばたちが溢れているのに…。伝えたくても伝えられないもどかしさ。短い文章をテンポよく繋ぎ、少女の心理描写が巧く表現されていた。短文、長文を織り交ぜながらの構成が、ストーリーに緩急をもたらしていた。読後、絶望の中にも希望の光を感じてしまうのは、原作はもちろん横山和江氏の翻訳力にあるとだと感じた。賞に値する作品だと思い推薦させていただきます。

わたしの心のなか (この地球を生きる子どもたち)
シャロン・M. ドレイパー
鈴木出版
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【推薦者】東 えりか
【推薦作品】『幸福論』
【作者】アラン
【訳者】 村井章子
【推薦文】
 『トマ・ピケティの資本論』『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』など、ガツンと読みごたえがあり、ベストセラーとなる書籍の常連翻訳者である村井章子さん。その中で私が推薦したいのは、ちょっと色の違う、アラン『幸福論』です。多くの人が翻訳し、引用し、参考にしてきたこの哲学書を、村井さんは読みやすく理解しやすい日本語にしてくれました。2014年、もしかすると一番ページを開いた本だったかもしれません。

幸福論

幸福論

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アラン
日経BP社
売り上げランキング: 50,964

【推薦者】アケルダマ1
【推薦作品】『火星の人』
【作者】アンディ・ウィアー
【訳者】小野田和子

【推薦文】
一人残された火星でみずからのケガをちゃちゃっと治し、装置を修繕し、水を合成し、ジャガイモも栽培してしまう、スーパー・ポジティブ宇宙飛行士の笑えて泣けるサバイバル記。翻訳もちゃちゃっとやっちゃったんじゃないかと思えるほどの軽快さで、実際は山のような専門用語、ややこしい数字や計算で大変だったはずですが、それを感じさせない文体に「これぞエンターテインメント!」とうならされました。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
売り上げランキング: 4,625

【推薦者】石川 美南
【推薦作品】『わたしは灯台守』
【作者】エリック・ファーユ
【訳者】松田浩則
【推薦文】
 あれこれ迷いましたが、読んでいる間、言葉の面白さにくすぐられっぱなしだったこの本を推したいと思います。
表題作は、陸が見えないばかりか周囲を船が通ることすらない沖合で、ただ一人灯台を守り続ける男の独り言をそのまま書きつけたような話。孤独に苛まれ、狂気すれすれまで追い込まれているにもかかわらず、どこか飄々としたユーモアの気配が漂うのは、彼が決して「言葉の力」を手放さないからなのかもしれません。表題作以外も、シュールな出来事をシュールと感じさせない静かな語り口が魅力的でした。原書が読めるわけではないので翻訳としての巧さはよくわからないのですが、たとえば「越冬館」における「お前はずうっと越冬館に戻ってくるだろう」という日本語のねじれ方にしびれます。

わたしは灯台守 (フィクションの楽しみ)
エリック ファーユ
水声社
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【推薦者】与儀 明子
【推薦作品】『愉楽』
【作者】閻連科
【訳者】谷川毅
【推薦文】
 広島弁の語り口で一気に引き込まれました。中国の田舎にいる若い娘さんが広島弁をつかうと、こんなにキュートだとは。方言の翻訳や、ニュアンスを伝えるところもふくめて、きっととても大変な作業だったろうと思います。今後も閻連科の作品が読みたい! という気持ちをこめて投票します。

愉楽

愉楽

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閻 連科
河出書房新社
売り上げランキング: 34,395

【推薦者】深川 岳志
【推薦作品】『その女アレックス』

【作者】ピエール・ルメートル

【訳者】橘明美
【推薦文】
信用できない語り手によるミステリー小説。単純にミステリーというのには抵抗があるが、ほかに適当な言い回しを思いつかない。全体は三つのパートからなり、それぞれ読み心地が違う。真相に近づくにつれ、ぐいぐいと物語に引き込まれる。ほんとうの真相は読んだ読者の数だけある。ミステリーなので殺人が描かれるが、そこにいたる経緯がすごすぎて、紋切り型の感想を口に出すのが恥ずかしい。黙ってときどき自分の脳裏で再生したい小説だ。よくこんな本を日本語にできたものだとおもう。翻訳者に感謝したい。

その女アレックス (文春文庫)
ピエール ルメートル
文藝春秋 (2014-09-02)
売り上げランキング: 133

【推薦者】深森 花苑
【推薦作品】『世界が終わってしまったあとの世界で』
【作者】ニック・ハーカウェイ
【訳者】黒原敏行
【推薦文】
 「ゴー・アウェイ・ウォー」を「逝ってよし戦争」と翻訳してくれた時点で、私にとっては推薦に値する作品でした。おそらく原文はスラングがふんだんに使われたラノベ的な雰囲気もはらんだ作品だったのではないでしょうか。原文の軽快なタッチを損なわず、かつ、日本の文壇の流行にシフトさせたような文体で、まるで日本の作家が書いた作品のように楽しむことができました。原文で微妙なニュアンスを持っていた言葉についても訳者あとがきで解説してくれていて、英米文学のバックボーンがない私でも作者の<含み>を味わえました。

世界が終わってしまったあとの世界で(上) (ハヤカワ文庫NV)
ニック・ハーカウェイ Nick Harkaway
早川書房
売り上げランキング: 445,900

【推薦者】日置 伊作
【推薦作品】『甘美なる作戦』
【作者】イアン・マキューアン
【訳者】村松潔
【推薦文】
  昨年の翻訳小説では、ピンチョンの『重力の虹』と、マキューアンの『甘美なる作戦』、マッカーシーの『もう一度』、トビーンの『マリアが語り遺したこと』が、作品的な質と、日本語の文学的な質(主観ですが)の両面からみて傑出しているように思いました。この4つの作品を見ると、大学で外国文学の先生をなさっている方の訳が多かったのですが、翻訳一本に打ち込まれている方の方が、この新しい賞で顕彰する意味も大きいのではないかという(個人的な)気持ちも少し働き、今回は村松さんを推薦します。

甘美なる作戦 (新潮クレスト・ブックス)
イアン マキューアン
新潮社
売り上げランキング: 15,641

【推薦者】藤井 勉
【推薦作品】『最後の恋人』
【作者】残雪
【訳者】近藤直子
【推薦文】
これまで読んできた小説を再読し、それぞれの物語を脳内でつなぎ合わせて一つの世界を作り出したい。そんな欲望を抱きながら仕事中も隠れて読書をする、本好きの中年男・ジョー。この主人公の人物造形だけでも心を鷲づかみにされるし、本書を応援したくなるというもの。「最後の恋人」とは誰なのか?読み終えた後も、ジョーのようにエピソードをつなぎ合わせながら、答えを求めて作品世界をぐるぐると回らずにはいられなくなる。

最後の恋人 (残雪コレクション)
残 雪
平凡社
売り上げランキング: 531,387

【推薦者】しげる
【推薦作品】『プロメテア』
【作者】アラン・ムーア、J・H・ウィリアムズⅢ
【訳者】柳下毅一郎
【推薦文】
コミックの翻訳にはフキダシや枠といった空間的制約がある。邦訳コミックのなかでも、アラン・ムーア作品は質と量の両面においてその制約がトップクラスに厳しいのではないか。とても面白いが読むのに体力がいる。そんな作品を融通無碍な日本語に組み替えて提供してもらえるとか超うれしいありがとうございます。

プロメテア 1 (ShoPro Books)

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アラン・ムーア
小学館集英社プロダクション
売り上げランキング: 59,259

【推薦者】あらま 草
【推薦作品】『火星の人』
【作者】アンディ・ウィアー
【訳者】小野田和子

【推薦文】
火星という過酷な環境の中、悪意も陰謀もなくただ不可抗力とケアレスミスから次々と襲いかかる危機。やせ我慢入ってるとはいえ常にユーモアを忘れず、専門知識と創意工夫を駆使してその危機に立ち向かう主人公。そして彼を救うべく奮闘する探査船クルーとNASAスタッフ・・・・・・みんな素晴らしい。宇宙を目指す人類の最先端であるNASAこそは、きっとアメリカという国の最良の部分が集約された場所で、そこに集うエキスパートたちが繰り広げる「知性の冒険」は、SFという形式だからこそ描けるポジティヴィティにあふれている。快作。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
売り上げランキング: 11,122

【推薦者】とらぶた
【推薦作品】『この世の富』
【作者】イレーヌ・ネミロフスキー
【訳者】芝盛行
【推薦文】
愚かな戦争の黒雲が迫り、やがて人々をのみこんでゆく。作者はそんな時代の渦に自ら巻き込まれ、最後はアウシュビツで亡くなったのだそうですが、渦中に脚を踏ん張って、時代を見通し、底で生きる人々の愚かさ、賢さ、醜さ、懸命さを描き切りました。作中の時代は、今の日本と生き写し。「こんな時代に、作家であるとはどういうことか」ネミロフスキーは教えてくれます。こんな時代に、おもしろさを味わうにはじっくり向き合わうことが必要な、こんな本を訳してくださり、出版してくださった、訳者さん、版元さんに感謝です。

この世の富

この世の富

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イレーヌ ネミロフスキー
未知谷
売り上げランキング: 1,029,499

【推薦者】後藤 明日香
【推薦作品】『旅のスケッチ』
【作者】トーベ・ヤンソン
【訳者】冨原眞弓
【推薦文】
ムーミン以前の初期短編集。自己の経験や感覚と共鳴するときの威力に圧倒された。若き日のトーベが描く、ちょっとダークな皮肉やユーモア、そして愛の姿が印象的。

旅のスケッチ: トーベ・ヤンソン初期短篇集 (単行本)
トーベ ヤンソン
筑摩書房
売り上げランキング: 147,745

【推薦者】古川 耕
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
微細かつ膨大な脚注が偉い! 偉すぎる! 「攻略本付きゲーム」とでも言いたくなるような趣きだが、これは本作がスペシャルだからと言わず、すべての「翻訳書」で検討して頂きたい機能。だって翻訳書はそもそも時間的にも地理的にもワンクッションあるのだから、こういう編集作業が第三者から加えられてしかるべきじゃない?(偉そう) 実際、こういう工夫の積み重ねが読者の拡大に繋がると思うんですよ……。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
売り上げランキング: 25,151

【推薦者】はちほん
【推薦作品】『黒ヶ丘の上で』
【作者】ブルース・チャトウィン
【訳者】栩木伸明
【推薦文】
一見、穏やかに見える農場で過ごす人々の歴史は、規模の大小はあれど決して平たんなものではない。それをつづる筆致は瑞々しく抑制されているのに、人間の持つ普遍的な感情がそこには間違いなく存在している。加えて、黒ヶ丘の美しい情景、チャトウィンの趣味が反映された数々のアンティークが、作品に彩りを添えてくれている。その彩りを日本語であらわしてくれた翻訳者に敬意を表し、チャトウィン作品で最後の邦訳となった本書を推薦いたします。

黒ヶ丘の上で

黒ヶ丘の上で

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ブルース・チャトウィン
みすず書房
売り上げランキング: 336,769

【推薦者】石村 彰人
【推薦作品】『『資本論』の新しい読み方』
【作者】ミヒャエル・ハインリッヒ
【訳者】明石英人・佐々木隆治・斎藤幸平・隅田総一郎
【推薦文】
 伝統的なマルクス主義による『資本論』の読み方と一線を画した、「マルクスの新しい読み方」という学派に所属する筆者ですが、最初のいくつかの章でいままでのマルクス解釈の歴史にも触れており、その後の内容理解が深まりました。日本語も読みやすく、訳語を見ていてもあまり違和感がなかったので、頭にすっと入ってきました。

『資本論』の新しい読み方―21世紀のマルクス入門
ミヒャエル・ハインリッヒ
堀之内出版
売り上げランキング: 151,208

【推薦者】大佐田 祈子
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子

【推薦文】
 原作を英語で読んだ後邦訳があるのを知りました。時代劇をみているように、生き生きとした人物が描かれていて、私の英語力ではわからなかった細やかな表現がよくわかりました。原作者の丁寧な取材と想像力を、余すことなく美しい日本語で伝えてくれていると思います。今までは有名な浮世絵しか知りませんでしたが、もっともっと知りたくなりました。日本美術を広める意味でも、この作品の意味は大きいと思います。

北斎と応為 上

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
彩流社
売り上げランキング: 132,102

【推薦者】石井 千湖
【推薦作品】『黄金時代』
【作者】ミハル・アイヴァス
【訳者】阿部賢一

【推薦文】
チェコ出身の「私」による架空の島の滞在記。滝の壁、匂い時計、火を使わない料理など、ヘンテコな文化に惹かれます。なんといってもユニークなのは、芸術がない島に一冊だけ存在する「本」。誰かが読むたびに文章が加筆・修正・消去され内容が変わる。紙で出来たウィキペディアという感じでしょうか。どうやって既にある文章に新しい文章を挿入するのか、詳細を描写した部分にわくわくしました。アイヴァスの『もうひとつの街』に〈本当の出会いとは、怪物との出会いを指すんだ。〉という一節がありますが、まさに本の形をした怪物。出会わせてくれて感謝です。

黄金時代

黄金時代

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ミハル アイヴァス
河出書房新社
売り上げランキング: 23,295

【推薦者】三角 和代
【推薦作品】『もう年はとれない』
【作者】ダニエル・フリードマン
【訳者】野口 百合子
【推薦文】
87歳の口の減らないじいさん、元殺人課刑事バック・シャッツは、並みの青二才がびびるタフな男。ユダヤ人として捕虜収容所で受けた仕打の落とし前をつけようと、老体に鞭打って活動開始。老齢の心意気がパワー全開で描かれていることもさることながら、老いに対する怯えも踏み込んで描かれている一冊。翻訳のこの語り口があってこその魅力なので、本書を推したいと考えます。ちなみにじいさんだけじゃなく、ばあさんも格好いいんだ。

もう年はとれない (創元推理文庫)
ダニエル・フリードマン
東京創元社
売り上げランキング: 12,218

【推薦者】真
【推薦作品】『KANO 1931 海の向こうの甲子園』
【作者】ウェイ・ダーション、チェン・チャウェイ(原作)/チェン・シャオヤー(作画)
【訳者】宇野幸一、阪本佳代
【推薦文】
2014年、台湾に旋風を巻き起こし、香港などでも大ヒットとなった、同名映画のコミカライズ作品。全3巻だったものを1冊にまとめた日本語版で、阪本さんらによる日本版独自の内容を含んだ解説もおよそ100ページにわたり収録され、日本の読者にも作品の背景が理解しやすいよう配慮された、良質な内容となっていると思います。

KANO 1931海の向こうの甲子園
魏 徳聖 陳 嘉蔚
翔泳社
売り上げランキング: 3,955

【推薦者】木星の人
【推薦作品】『火星の人』
【作者】アンディ・ウィアー
【訳者】小野田和子
【推薦文】
これからの時代、この主人公マークのようにありたい、生きたいと痛切に思った。困難な時代、何が自分を救うのか、身にしみた。マークの一人称による日誌の文体が素晴らしい。これに惚れ込ませたら、この作品の魅力は炸裂する。そういう翻訳を読めて幸せだ。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
売り上げランキング: 11,122

【推薦者】三井 正樹
【推薦作品】『Big Picture 解剖学 (Lange Textbook シリーズ)』
【作者】デヴィッド・モートン
【訳者】小澤一史・菊田彰夫・松崎利行
【推薦文】
日本翻訳大賞に本書のような基礎医学テキストが推薦されることに奇異を感ずる方もあるかもしれません。しかしあえて医薬理工書の翻訳書も日本翻訳大賞に参加し、医薬理工翻訳教科書の世界も知って頂きたいと思い推薦する次第です。本書は米国でまさに今を学ぶ医学部学生のための解剖学のテキストです。本書の翻訳編集過程では英語のテキストを日本の医学の実情に合わせ、本文を日本の解剖学用語に合わせ、また米国でしか使用されない解剖学用語は適宜、該当用語を新たに付け加えます。解剖用語はラテン語由来の国際解剖用語が主流で、翻訳の過程ではそれぞれの立場の解剖学者が詳細に議論しチェックしているのです。図についても同様にそれぞれ指すべき個所をチェックし、一部は図を描き改めているのです。解剖学はじめ生理学や生化学も同様にそれぞれ専門分野の先生方が互いに丁々発止と議論しながら翻訳を進めているのです。

Big Picture 解剖学 (Lange Textbook シリーズ)
David Morton Kurt Albertine K. Bo Foreman
丸善出版
売り上げランキング: 545,295

【推薦者】三連星
【推薦作品】『カステラ』
【作者】パク・ミンギュ
【訳者】ヒョン・ジェフン 斎藤真理子
【推薦文】
発想が突飛でばかばかしくて、でも、その中に現代社会に生きる私たちの孤独感が織り込まれている美しい短編集。理不尽なことばかりの世界でも絶望しきらずにゆるやかに生きている主人公たちにそそがれる、作者のあたたかいまなざしがとても印象的だった。

カステラ

カステラ

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パク ミンギュ
クレイン
売り上げランキング: 657,425

【推薦者】島村 浩子
【推薦作品】『ふたりのエアリエル』
【作者】ノエル・ストレトフィールド
【訳者】中村妙子
【推薦文】
第二次大戦下のロンドン。ソレル、マーク、ホリーの三きょうだいは幼いときに母を亡くし、海軍将校の父も1942年の夏、乗っていた軍艦が撃沈されて消息不明になってしまいます。そこで、三人はそれまで没交渉だった母方の祖母に引き取られることになるのですが、母の実家は代々名優を輩出してきたイギリス演劇界では知らない人のいない名家で……というお話。邦題にはいっている“エアリエル”は、シェイクスピアの『テンペスト』に登場する大気の精霊、エアリエルのことです。『ガラスの仮面』を思い出させる部分もありながらレトロな雰囲気のある作品。翻訳者としてのキャリアが70年近い中村妙子氏の訳は、大人も楽しめる児童書のお手本のような翻訳だと思います。淡々としたすばらしさです。

ふたりのエアリエル

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【推薦者】トーテス フーガ
【推薦作品】『剃髪式』
【作者】ボフミル・フラバル
【訳者】阿部賢一
【推薦文】
冒頭の長い描写から匂い出るような物語の雰囲気。建国間もない当時のチェコの新しい風を感じている登場人物たち。その明るさと瑞々しさに溢れた愛すべき作品でした。主人公の快活さとそれゆえのちょっとした狂気、そのスラップスティックをテンポよく訳してくれる力は、賞に値すると思いました。

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【推薦者】土井 利一
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子

【推薦文】
欧米では浮世絵の芸術性が早くから認識されていたにも関わらず、日本ではなかなか正当に評価されず、常に海外での研究に先を越されてきました。今回もフィクションの世界とは言え、カナダの作家が実に綿密な調査に基づき北斎(娘の応為も含めて)の浮世絵師としての生きざまを的確に描き出していることに感服せざるをえません。更に、それを単なる言葉の置き換えによる翻訳ではなく、当時の木版画出版業界の内実をもわきまえて訳出していることに拍手を送りたいと思います。

北斎と応為 上

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【推薦者】山本 道子
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子
【推薦文】
 カナダ人作者が日本の江戸時代をテーマにした小説を、さらに日本語に翻訳して、いったいどんな話になるのかと思ったら、素晴らしかった。今まで関心がなかった浮世絵の世界にまで興味が出るし、一気に読んでしまいました。
話の構成のそこかしこに、日本人の作品との違いが感じられ、より面白味が増したと思います。原作者と翻訳者の力が存分に発揮されているのでしょう。喜んで推薦させていただきます。

北斎と応為 上

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【推薦者】三辺 律子
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
波瀾万丈の物語、奇想にそそられる小説、どんでん返しの結末に驚かされる小説、去年も面白い作品がいっぱいあって悩んだけれど、今でもいちばん思い返すことが多いこの作品を、選びました。主人公ストーナーの人生を淡々と綴っているだけなのに、ストーナーはもちろん、登場人物について(作品には描かれていないところまで)深く深く想像を巡らせることができるーーー巡らせずにはいられないのは、作者の筆力と翻訳者の力だと思います。ストーナーの生き方自体に打たれ、そういえば主人公の生き方そのものに感動するような小説は久しぶりだったと思いました。

ストーナー

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【推薦者】菊池 美範
【推薦作品】『うるわしのグリセルダひめ』
【作者】イソール
【訳者】宇野 和美
【推薦文】
一般的に知られているスペイン語の日本語翻訳作品は、ガルシア=マルケス、ボルヘスなど、大人向けの学作品が多いように思います。絵本の日本語翻訳作品はあまり知られていませんが、イソールの絵本作品は絵だけでなく、文章も素晴らしいのです。翻訳者の宇野和美さんは本作の翻訳をされるにあたり、スペイン語で表現することばのニュアンスを、どのように日本の子どもたちに伝えることができるかという点に、大変な労力を費やしています。作者のイソールさんとも、作品の意図や日本語に翻訳するときの解釈について何度もやりとりがありました。その結果、子どもたちに自信をもって読み聞かせができる名訳に仕上がっています。とくに最終ページの翻訳は、日本語翻訳絵本史に残る名訳です。

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【推薦者】ハマジン
【推薦作品】『TTT : トラのトリオのトラウマトロジー』
【作者】ギジェルモ・カブレラ・インファンテ
【訳者】寺尾 隆吉
【推薦文】
『フィクションのエル・ドラード』諸作品や、ホセ・ドノソ『別荘』など、このところ連続コンボの快進撃をぶちかまし続けている訳者・寺尾隆吉さんに敬意を表しつつ、アルコール血中濃度高めの狂騒的な饒舌さの底に、メランコリーと喪失感が沈殿するキューバの「声」の繁茂を、「読みやすい」日本語に「超訳」する、という無茶ぶりすれすれの離れ業(回文どうやったのホント…)を見事やってのけた、本作の偉(異)業を推薦いたします。

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【推薦者】モーゲンスタン 陽子
【推薦作品】『ラテンアメリカ傑作短編集』
【作者】エステバン・エチュべリアーナ他
【訳者】相良勝 他
【推薦文】
短編好きなのでこれにします。日本の短編はミステリー風のものが多いようですが、海外文学だとこういう、何気ない人生の1コマみたいなオチのないものが多く、苦手なかたもいると思います。でも、右を向いても左を向いても不寛容の時代、そんな何気ない物語が、異質な世界を覗く(そして、それがそんなに異質ではないと知る)窓になるのではないかと思います。出版不況の今、翻訳ではさらに厳しいと思いますが、それでも話題性や売上げより内容で版権を選び、また本作だけではなく東欧、ポルトガル、カナダなど、比較的小さめの文学世界に通じる窓を変わらず提供してくれる版元の努力にも感謝したいです。「一杯のミルク」には思わず泣きました。欲を言えば、現代の作品も少し入れてほしかったかな。


【推薦者】青の零号
【推薦作品】『黄金時代』
【作者】ミハル・アイヴァス
【訳者】阿部賢一
【推薦文】
 名もなき島にまつわる土地と風習を紹介しながら、やがて島に唯一存在する変幻自在の「本」について語り始めるという摩訶不思議な物語。意味や定義に縛られることから終始逃れつつ、言葉とイメージが近づいたり離れたりしながら乱反射するように読者を取り囲み取り込んでいく。ファンタジーが現実からの逃避だとすれば、ここまで見事に逃げおおせた作品もそうはないだろう。しかもそのための手段として、政治や社会体制だけでなく独自の言語体系や食文化までを発明し作中に投入するという徹底ぶりには舌を巻く。これを日本語で読ませてくれた阿部賢一氏に感謝。

黄金時代

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【推薦者】高原 英理
【推薦作品】『両シチリア連隊』
【作者】アレクサンダー・レルネット=ホレーニア
【訳者】垂野創一郎
【推薦文】
解説によれば「反ミステリ」(アンチ・ミステリー)だそうだが、それとともに「アンチ・アイデンティティ小説」でもあることの驚き。主体への無頓着感が1925年ヴィーンの空気とともに、哲学や夢想や奇妙な挿話の合間から伝わってくる。物語は重層的なのに個はひどく希薄、恋愛らしい展開もあるがそれ自体はどうでもよい捌き方がクールでよい。なお、「アンチ・ミステリー」の名のもとに謎解きをいい加減にする種類の似非ミステリではありません。ラスト驚きもある。ではあるが、どの場面でもなにやらわざと外して投げてくるところが得難い味わいで、この「永遠に場違い」な感じが何より面白かった。

両シチリア連隊

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【推薦者】こいぬ書房
【推薦作品】『マヤコフスキー叢書「戦争と世界」』
【作者】ヴラジーミル・マヤコフスキー
【訳者】小笠原豊樹
【推薦文】
新訳マヤコフスキーの叢書4冊目にして、翻訳家・小笠原豊樹氏の生前最後に刊行された訳詩集。この「戦争と世界」は一遍の長編詩。全篇に渡って素晴らしい比喩が踊り、暗く悲惨な戦争の場面は、まるでスペクタキュラーな舞台のようでもあります。ロシアの詩に触れる機会は今までほとんど無かったのですが、小笠原豊樹氏によるみずみずしい翻訳のおかげで、100年前のロシアの詩人マヤコフスキーをとても身近に、魅力的に感じることができます。まるでマヤコフスキーが最初から日本語で書いたかのように思えてしまうほど。

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【推薦者】ヒグマ・グリズリー
【推薦作品】『ニンジャスレイヤー』
【作者】ブラッドレー・ボンド&フィリップ・N・モーゼス
【訳者】本兌有&杉ライカ
【推薦文】
日本のオタクカルチャー大好きなアメリカ人コンビの書いた小説を、SF大好き日本人コンビがTwitter上で翻訳連載中という異色作。基本勘違い日本なのに何処か現実的な未来都市「ネオサイタマ」を舞台に、「ニンジャ」と呼ばれる超人達に妻子を殺された男の復讐を、極度に圧縮成型された独特な文体で語るサイバーパンク活劇である。数年間に渡って連載され、今も進行中ではあるが、その中でも2014年分では「レイズ・ザ・フラッグ・オブ・ヘイトレッド」を推したい。ディストピアの辛い現実の中、それでも捨てぬ希望と音楽。一人の掲げた手が、世界に僅かでも波紋を立てる。Twitter連載を同時閲覧実況していたファンたちの反応も含めて、これはあまりにも印象的な【現象】だった。


【推薦者】アンソニー C
【推薦作品】『英文ライティングのための実践英文法』
【作者】スーザンサーマン、ラリーシェア
【訳者】伊藤淳一
【推薦文】
 原書The Only Grammar Book You’ll Ever Needと、この翻訳本と読み比べてみれば分かることですが、そっくりそのまま翻訳したものではなく、日本人が読むのに分かり易くする為に、いろいろな文法項目を挿入しているところが、この本の製作上の苦労であったろうと思います。その点が高く評価出来ます。

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【推薦者】Pipo
【推薦作品】『女がいる』
【作者】エステルハージ・ペーテル
【訳者】加藤由実子
【推薦文】
一ページ目、そして第一文はあまりにそっけなく、しかも魅力的に始まります。そこから章を変えるごとに詳細が書きこまれ、ときにはぼかされ、関係が入れ替わりと、さまざまなバリエーションで展開されるさまは、レーモン・クノーの『文体練習』が一番近いでしょう。『文体練習』のようにどこからつまみ読みしてもいいし、順に読んで、それぞれの章のゆるやかな、あるかなきかの関連を楽しむのもいいかと思います。解説には本書の翻訳のプロセスも記されており、日本から言語的に遠い距離感のある国の作家の作品を翻訳されるときのご苦労もうかがえると同時に、その熱意にも打たれます。

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【推薦者】wata4523
【推薦作品】『情事の終り』
【作者】グレアム・グリーン
【訳者】上岡伸雄
【推薦文】
訳者の上岡伸雄氏は現代アメリカ文学を代表するドン・デリーロの主な訳者であり、他訳も含め現代日本で最も重要な翻訳家の一人である。「情事の終り」は宗教・愛などをテーマとしたグリーンの中でも最も主要な作品であり、批評家福田和也も2014年5月号「不滅の名著百冊」の中の1冊として選んでおり、新訳は絶好のタイミングでの出版となった。日本でも昨今、宗教に関する問題がクローズアップされる中、本著を体験することは現在の読者に何かしらの価値を与えると思う。

情事の終り (新潮文庫)

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【推薦者】ふたばこ
【推薦作品】『仮面の商人』
【作者】アンリ・トロワイヤ
【訳者】小笠原豊樹
【推薦文】
少し古典的な印象を受けました。長編小説を読んでいるような一部が唐突に終わり、二部を読み進むうちに可笑しいような気持ちになります。そして三部ではむしろ愉快に。かわいた皮肉も利いています。読了して「仮面の商人」というタイトルに頷きました。評伝や伝記を多く執筆したトロワイヤがこの作品を書いたことも興味深く感じました。

仮面の商人 (小学館文庫)

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【推薦者】昼と夜
【推薦作品】『コールド・スナップ』
【作者】トム・ジョーンズ
【訳者】舞城王太郎
【推薦文】
岸本佐知子さん訳の『拳闘士の休息』も好きなのですが、舞城王太郎さん訳からの受ける印象が荒々しくよりハードに感じたことが印象深く残っています。出てくる人が皆おかしく、死とか病や苦痛とか過酷な環境に苛まれながらも力強く生きることへの執念を感じられ、最悪な環境のわりには読了後一筋の光を感じます。トム・ジョーンズの登場人物みたいに今を全力で生きていきたいと思える作品です。

コールド・スナップ

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【推薦者】えもと もえ
【推薦作品】『わたしの心のなか』
【作者】シャロン.M.ドレイパー
【訳者】横山和江
【推薦文】
脳性麻痺のメロディは、生まれてからずっと、様々な言葉を全部覚え、体験した事柄をすべて記憶してきたのに、言葉を発することができないため、それを知る人はだれもいなかった。しかし、十歳のとき、かわりに声をだしてくれる機器を手に入れ、言葉で伝えることができるようになって知性を証明できるようになり、メロディの人生は大きくかわっていく…。いわゆる「障害者」のステレオタイプをくつがえすようなメロディの「心の中」に、クスッと笑わされたりハラハラさせられたりするが、障害があってもいろいろな性格の人がいるのだと改めて気づかされる。障害という色眼鏡を通さずに相手をよく知ることで、健常者と障害者の精神的なバリアがなくなってくれたらいいと思う。物語のラストはきれい事でまとめられてはいない。だからこそ読者の心に響く。メロディのような子が、世界中に、そして身近にもいるかもしれないと読者に考えてみてほしい。翻訳も読みやすく、メロディの気持ちがダイレクトに伝わってくる。まさに「わたしの心のなか」というタイトルがぴったり。

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【推薦者】今 陽童
【推薦作品】『解釈としての社会批判』
【作者】マイケル・ウォルツァー
【訳者】大川正彦/川本隆史
【推薦文】
本書は1996年に風行社より刊行され、昨年十月ちくま学芸文庫から再版された政治思想の翻訳諸です。「批判」という言葉に対しては懐疑的な眼差しを向けたくなるのが、現代日本人の一般的な心情かもしれません。しかし、批判なしに存続する社会は私たちが本当に目ざしているものでしょうか。前近代的な停滞に留まることが不可能なほどに複雑化した現代を生きる私たちにとって、解釈としての社会批判は絶えず生の意味を問いかけてくる起点としての役割をもつと考えられます。なぜなら、私たちは今・ここに生きているのであり、批判するとは今・ここに生きることの意味を問う(解釈する)営みにほかならないからです。ネット上に氾濫する無責任な発言・暴言が社会批判としての役割を何ら果たしていないのは、今・ここに生きる者の切実さが微塵にも感じられないからでしょう。本書の再版は社会批判のもつ意義を再考する最上の契機をもたらしてくれたと思います。

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【推薦者】小瀧 忍
【推薦作品】『遠い部屋、遠い奇跡』
【作者】ダニヤール・ムイーヌッディーン
【訳者】藤井 光
【推薦文】
日本に住む自分にとって、乾き、戦争という程の印象しかない土地が、そこに生きる人達の地位や欲望が色々な層となり重なりながらも、交わることのない世界として描かれていることに驚嘆。知らなかった土地やそこに暮らす人間を読者に対して描きながら、それを読む読者はズレを感じながら共感も得る。『遠い部屋、遠い奇跡』は、このような翻訳文学の古典的な楽しみを、今を生きる読者にも与えてくれる。

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【推薦者】佐治右エ門
【推薦作品】『フランスの肖像―歴史・政治・思想』
【作者】ミシェル・ヴィノック
【訳者】大嶋厚
【推薦文】
フランス史を専門とする学者が外国人学生から「フランスについて簡単に説明してほしい」という要望を受けて誕生した一冊。フランスとはどういった国なのかを長い歴史を紐解きながら論じる、読みやすい本である。フランスについて知りたい方に広くお勧めできる一冊である一方、大学生などにも勧めたい。専門的な学術書に入る一歩手前で読むと、フランスがいかなる国なのかが理解ができる良書である。読みやすさを追求した訳出、ていねいな訳注、著者のブログの抄訳が日本語の読者にとってありがたい。

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【推薦者】かみの はし
【推薦作品】『英文ライティングのための実践英文法』
【作者】スーザン・サーマン
【訳者】伊藤淳一
【推薦文】
翻訳アプリがどれだけレベルアップしても、文書構成の違いは補いようがない。英語で文章を書くというのはこういうことか、と気づくきっかけとなった一冊です。見慣れた基礎的英語の内はさくさくと読み進められたものの、5章、6章・・・と徐々に内容は高度化。くじけそうになるところで、丁寧にちりばめられた訳注に助けられて無事に読了できました。訳者の方の配慮に敬意を表して翻訳大賞に推薦致します。読後は無性に英文を書きたくなりました。

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【推薦者】千葉 聡
【推薦作品】『ゼバスチアンからの電話』
【作者】イリーナ・コルシュノフ
【訳者】石川素子 吉原高志

【推薦文】
彼氏と別れ、父親の勝手に振り回され、急遽、田舎暮らしをすることになった17歳のザビーネ。生活環境の変化を乗り越えながら、彼女は生きる上での本当の賢さと強さを身につけていく。訳文は平明で、少女の心のうつろいを丁寧に掬いとる。コルシュノフというと、日本ではヤングアダルト小説として『だれが君を殺したか』や『彼の名はヤン』がよく読まれているが、これらには、登場人物たちの心の闇がくっきりと描かれており、読後、やりきれない思いがする。だが、『ゼバスチアンからの電話』は、ザビーネの成長を見守るうちに、自分自身も大きく変われるのではないかと思わせてくれる。希望の一冊だ。

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【推薦者】大上 剛司
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子
【推薦文】
 典型的な江戸時代の文化の一つである浮世絵を極めた葛飾北斎とその娘応為の物語。これをカナダ人の小説家が書いたというのも驚きだが、その訳が廓言葉や、吉原の風俗、江戸庶民の生活の細部を知り尽くしていなければ表現できない、見事な日本語で迫ってくる。単なる「翻訳」ではなく、モーゲンスタン陽子氏もまた才気あふれる作家である。

北斎と応為 上

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【推薦者】北條 一浩
【推薦作品】『ゼバスチアンからの電話』
【作者】イリーナ・コルシュノフ
【訳者】石川素子 吉原高志
【推薦文】
かつて福武書店から出ていましたが、新訳・新装版ということで推薦したいと思います。舞台は1970年代の西ドイツ。17歳の少女ザビーネは、不安と不満に囲まれた日常を送っています。ままならぬ家族、不本意な引越し、自立の問題、そして、あまりに不確かな恋愛。タイトル通り、電話が意味を持つ装置になりますが、携帯電話の時代とは違い、それは家族のあいだで共有されるものであり、現代とは少し違うあり方で思春期の少女を励まし、怖れさせ、拘束しているところが面白いです。ザビーネの、背伸びしていることの痛み、張り詰めた悲しみ、そよ風のような歓びが、訳文を通して伝染していくようです。

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【推薦者】やえむぐら
【推薦作品】『はじまりのとき』
【作者】タィン=ハ・ライ
【訳者】代田亜香子
【推薦文】
少女の心には、こんなにも繊細な、はち切れんばかりの思いがつまっているんだと、主人公の難民の少女に教わった。平和なアラバマより、戦時下のサイゴンがいいと時に思ってしまう、少女の切実な心情が、代田亜香子氏の美しい訳により、生き生きと伝わる。なかでも、しめくくりの一文により、忘れることのできない作品となった。

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【推薦者】ウォーターズ めぐみ
【推薦作品】『内輪もめ』
【作者】リチャード・オースティン・フリーマン
【訳者】美藤志州
【推薦文】
20世紀前半のイギリスの法医学者であり法廷弁護士でもあるドクター・ソーンダイクの、先駆者的な科学的犯罪捜査を共に辿り、冷静な頭脳プレーと熱い興奮を味わえる翻訳小説の2作目。訳者はイギリス人と結婚され文化や風習への関心が深く、原文に沿ったスタイルから、かつての翻訳小説好きな若者が持ったのと同じ英語と異文化への興味を、世代の違う人達にもかきたてる作品を紹介しています。どこか懐かしい古き良きイギリス、水面下で進行する凶悪犯罪を次々に暴く糸口となる鑑識手法、愛すべき登場人物達により、前作はアマゾンで星五つの評価を受けました。海外アクションミステリー評論家の内藤陳氏や長年活躍された翻訳者達のご逝去後も、こうした骨太の作品の紹介が続くのは嬉しい事です。キンドルという新しい媒体で提供された本作、ナレーションと会話の面白さからオーディオブックやラジオドラマ、連載マンガの原作等の優れた素材になると思います。

内輪もめ R・オースティン・フリーマン原作 When Rogues Fall Out 翻訳版
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【推薦者】くるり
【推薦作品】『太陽の草原を駆けぬけて』
【作者】ウーリー・オルレブ
【訳者】母袋夏生
【推薦文】
翻訳作品の意義のひとつに、自分では絶対に読むことのできない原語の作品を読めることがあります。ヘブライ語で書く作家オルレブを日本語で読めることの感謝をこめて、この作品を推薦したいと思います。もちろん、戦争で苦難を味わったユダヤ人少年一家の日々をユーモアをも交えて語るストーリー、端正で読みやすい訳文も、推薦の理由です。オルレブは、このような時代に、民族や宗教に関係なく世界を公平に見る目を開かせてくれる作家であり、この作品もまさにそうしたことを考えさせられる一冊です。

太陽の草原を駆けぬけて

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【推薦者】奥村 明彦
【推薦作品】『低地』
【作者】ジュンパ・ラヒリ
【訳者】小川高義

【推薦文】
ジュンパ・ラヒリの小説は描写がこまやかで、それは普通ならば「リアリティ」ということになるのだが、それだけではなく俯瞰してみれば全体が美しい人生の模様になっている。この「低地」で小川高義は、短いセンテンスを積み重ね、それによって時の経過をフラッシュバックのように描いていくラヒリの文章を見事に翻訳していて素晴らしかった。物語世界にどっぷりとつかることができる名訳だと思う。

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

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【推薦者】ぱせり
【推薦作品】『アルグン川の右岸』
【作者】遅 子建
【訳者】竹内 良雄 、土屋 肇枝
【推薦文】
語りに体ごと委ねる心地よさを味わいました。この本を読む数日の間、エヴェンキ族の人々とともにいました。90歳の老婆の一生を駆け抜けていくようでした。山の厳しい掟を守り、山の豊かさとともに生きてきた部族の、終わりかけている物語の中にいました。素晴らしい物語との出会いに感謝します。

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【推薦者】車 浮代
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】
モーゲンスタイン陽子
【推薦文】
知らずに読めば、翻訳本とは気付かないほどの物語の深さ、目に浮かぶような江戸の情景描写。史実を忠実に追いながらも、主人公であるお栄の心情や生きざまに深く切り込んでいて、翻訳者の優れた文章力と表現力に裏打ちされた、素晴らしい作品だと思います。

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
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【推薦者】池田 るり子
【推薦作品】『こうして、思考は現実になる』
【作者】パム・グラウト
【訳者】桜田直美
【推薦文】
「読むためではなく、体験するための本である」というテーマどおり、引き寄せの法則を「体験する」ための一冊。本国でも大きな話題になったが、日本版の翻訳者の言葉の選びかた、読ませかたのスムーズさ、文章のテンポも秀逸。読者から、「翻訳がとてもよくて読みやすかった」という感想が多いのも納得。

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【推薦者】山本 敏勝
【推薦作品】『コンプリケーション』
【作者】アイザック・アダムスン
【訳者】清水由貴子
【推薦文】
 複雑な機構を持つ時計を意味する「コンプリケーション」そのままに、物語はいくつものパートに分かれ、それが複数の歯車のように組み合わさり、連動しているにも関わらず、その仕組みを理解するのは容易ではない。文章はあくまでも平易で読みやすく、しかし絡み合った構成によって読み終わってもなおもどかしさが余韻を残す。ロマンス小説の翻訳を多く手がける訳者の言葉が、血なまぐさい場面の多い本書の痛みを麻酔のように和らげる。和らげるだけで、消しはしない。夢の中の鈍痛のような、意識の下に感覚を残す。または目覚めてもなお悪夢の名残が、記憶ではなく肌にいつまでも残っているような、不可解で不気味な感覚だろうか。

コンプリケーション (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
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【推薦者】伊藤 聡
【推薦作品】『別荘』
【作者】ホセ・ドノソ
【訳者】寺尾 隆吉
【推薦文】
 すぐれた物語とは、たとえば「とある湖の水面にさざ波が立つ」といったさりげない描写が、おのずと、湖底にひそむ体長10mの古代魚の存在を予感させるというような、強い喚起の力を持つものであると思う。ホセ・ドノソ『別荘』(現代企画室)は、かかるイメージの集積によって書かれている。読者は、奇怪な柵に取り囲まれた別荘で起こるできごとの顛末を読み進めながら、物語の奥に潜む、何やら得体の知れないまがまがしさとエネルギーのうねりを察知し、めくるめくイメージの横溢にただひたすら酩酊させられるのだ。

別荘 (ロス・クラシコス)

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ホセ ドノソ
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【推薦者】タシロ マキ
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン 陽子
【推薦文】
 これって、翻訳モノ?!これが、この本を初めて目にした時の感想です。海外作品の翻訳本は、文化や背景の違いもさることながら、なかなか日本語として読みにくい物も多い中、こちらはそういう違和感を全く覚えることなく読み進めることができました。もちろんこの違和感のなさは、舞台が日本であることは大きいと思うのですが、逆に言えば逐語訳ではなく、意訳、あるいは日本語固有の言葉にする作業は重労働であったことは想像に難くありません。訳者のオリジナリティ、というのは、著者にとってみれば迷惑な話なのかもしれませんが、この本に関していえば、きっと成功していると思います。これも、著者と訳者の間に信頼関係があってこそのものなのでしょう。また読みながら、原著ではどういう表現なのか?と考えていました。英語は得意ではないのですが、一度原著にも当たってみたい、そんな風に思わせてくれる文章です。

北斎と応為 上

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
彩流社
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【名前】ジェイエヌ
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀

【推薦文】
とにかく、主人公ウィリアム・ストーナーの愚直なまでに誠実な生き様に心を打たれました。夫婦関係や同僚との確執など、思うに任せないことが多々ある人生ではありますが、苦難を淡々と受け入れながら、主人公は前に進んでいきます。そんな生き方こそ、本当は難しくて、誰もができるわけではない貴重なものなのかもしれない。読んでいてそんな思いを抱きました。近年、本作のような直球勝負の小説をなかなか読む機会がなく、一種心洗われる読書体験でした。まことに残念ながらこれが最後の訳業となってしまった、故・東江一紀氏の訳文も素晴らしく、日本翻訳大賞の第一回目を飾るにふさわしい作品として、本作を推薦する次第です。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
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【推薦者】家中 新
【推薦作品】『<喜劇映画>を発明した男』
【作者】マック・セネット
【訳者】新野敏也、石野たき子
【推薦文】
マック・セネットという、本来もっと語られなければならない映画人の自伝をよく上梓したと、その時点で感激。実際、映画黎明期の、たくさんの映画人のエピソードが語られていて、内容にも納得。映画史を学ぶ上で貴重な一冊だと思われる。また、彼自身の人生も、ミステリーのような殺人事件に巻き込まれたり、恋愛エピソードなども盛り込まれ、彼をめぐる物語としても楽しめる。翻訳も、セネットの人となりを感じさせる文体で(別に本人を知っているわけではないが)、読んでいて幸福な気分になる。テーマのユニークさからも、内容、翻訳においても、この1年に出された翻訳本のなかでも出色の作品だと思われる。

〈喜劇映画〉を発明した男──帝王マック・セネット、自らを語る
マック・セネット
作品社
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【推薦者】キシリョータ
【推薦作品】『『資本論』の新しい読み方』
【作者】 ミヒャエル・ハインリッヒ
【訳者】明石英人・佐々木隆治・斎藤幸平・隅田総一郎

【推薦文】
 経済学系の理論書(訳書)をいくつか読んできましたが、訳書とは思えないほど読みやすかったです。理論系の訳書となるとどうしても逐語調になりやすくわかりにくのですが(厳密に訳す必要があるためいたしかたありませんが)、本書は邦書のように読めました。むしろ、邦書よりよみやすかったかもしれません。理論的内容もはずしていないようなので、素晴らしい訳書だと思います。

『資本論』の新しい読み方―21世紀のマルクス入門
ミヒャエル・ハインリッヒ
堀之内出版
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【推薦者】佐藤ユンコ
【推薦作品】 『もっと厭な物語』の中の「私の仕事の邪魔をする隣人たちに関する報告書」
【作者】エドワード・ケアリー
【訳者】古屋美登里
【推薦文】
名作は、長編であればいいというものでも、その作者が多作であればいいというものでもない。これは作者の十年ぶりの小説で、文庫本十四頁分しかないが、作者特有の人間描写の質感にニヤリとし、ラスト八行目で全体に仕掛けられた罠に気づいて読み返してしまう、癖になる作品だ。物語は、語り手の「私」が、同じ建物に住む迷惑で風変わりな住民たちについて語っていくもの。この人は迷惑だ、しかしもっと迷惑なのは……と、「私」の語りは徐々に加速。次第に改行の余裕も、息継ぎもなくなっていく。読み手は「私」の妙な神経質さに違和感を覚えるものの、気づけば「私」の脳内リズムが浸透。最後には足を引っかけられて、ふりだしに戻される。物語は終わらない。むしろ始まっていないのかもしれない。読み終えてなお、読者は物語の中に置き去りだ。作者の筆力、そして作者の空気を十二分に伝える翻訳者の合わせ技が生み出す、十年に一度の待望の名作。

もっと厭な物語 (文春文庫)
文藝春秋 (2014-02-07)
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【推薦者】山内 毅
【推薦作品】『資本論』の新しい読み方
【作者】ミヒャエル・ハインリッヒ
【訳者】明石英人・佐々木隆治・斎藤幸平・隅田総一郎

【推薦文】
『資本論』はいままで読みたいと思いながらも読めないでいたけれど、200ページほどの長さで全3巻の内容だけでなく、過去の解釈の問題点から、マルクスの思想のアクチュアリティまで論じられていて、入門として非常に役立ちました。ただ、本書でも、入門書は『資本論』そのものを読む作業を代替することはできないと言われているので、これをきっかけに少しづつ『資本論』を読んでみたいと思っています。

『資本論』の新しい読み方―21世紀のマルクス入門
ミヒャエル・ハインリッヒ
堀之内出版
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【推薦者】池内 賢
【推薦作品】『資本論』の新しい読み方
【作者】ミヒャエル・ハインリッヒ
【訳者】明石英人・佐々木隆治・斎藤幸平・隅田総一郎
【推薦文】
ピケティを超える21世紀の資本論。

『資本論』の新しい読み方―21世紀のマルクス入門
ミヒャエル・ハインリッヒ
堀之内出版
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【推薦者】Rabbie
【推薦作品】『乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺』
【作者】ラティフィエ・テキン
【訳者】宮下遼
【推薦文】
ゴミの中に住み着くしかないから、ひどい環境汚染に晒されているからといって彼らに同情するのは余計なお世話というもの。追い出されようが体がおかしくなろうがしぶとく逞しく生きる人々は、憐れみなど吹き飛ばし、自らを伝説に昇華させるほどの力に満ちている。作家は次々に起こる滑稽な事件を飄々と描きながら、その原因である無慈悲な現実を見せることも忘れない。けれどもそこに強者を糾弾するというわかりやすいメッセージはない。あくまでも起こっていることを見せるだけである。それは作者テキンが社会の底辺にいる人々に心を寄せ、彼らの生命力を信じているからだろう。読んでいる間、目の前に極彩色の魔法の国が広がるようだった。ゴミだらけだというのに!

乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺
ラティフェ テキン
河出書房新社
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【名前】長野 紘一
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子

【推薦文】
江戸時代の天才画家・葛飾北斎が、いち早く海外で評価され、ゴッホをはじめ印象派の画家達に大きな影響を与えたことは広く知られている。彼の代表作「神奈川沖浪裏」(富嶽三十六景)は、世界で最も有名な絵の一つと言われている。その北斎が生涯にわたって、娘の応為い支えられていたことをこの作品によって知った。美人画を描かせたら、自分より上と北斎自身が認めていた応為。「夜桜美人図」や「吉原格子先之図」を鑑賞すれば、彼女の腕前のほどがよく分かる。原作者はカナダ人でありながら5年の歳月をかけて、北斎と応為の真実、そして江戸期の日本の風俗を調べ尽くしたという。それに加えて、翻訳者の翻訳技術の巧みさが光っている。作品全体を江戸言葉で表現して時代感を醸し出すなど、よくこなれた日本語になっている。このことが、この作品を一層際立たせており、とても翻訳本とは思えない出来栄えになっている。

北斎と応為 上

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彩流社
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【推薦者】原田 高裕
【推薦作品】『別荘』
【作者】ホセ・ドノソ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
『砂の女』が、瞼にくいこみ、口の中でジャリジャリと音を立てる砂を疎みながら、一組の男女の営みを執拗に覗いていく小説であるならば、『別荘』は鼻や耳、ケツの穴のみならず、身体のあらゆる穴を覆い詰まってくる綿毛による窒息に喘ぎながら、とある成金一族の没落の宴を観察する小説だ。ホセ・ドノソは、私たちが暮らす現実と、時間が捻れ人間の業が渦巻く異界との間に、『別荘』という帳を配した。このヴェール、是非とも皆さん自身の手で上げてみてください。(あと、2014年ということであれば、寺尾さんで決まりっしょ。)

別荘 (ロス・クラシコス)

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【推薦者】タンブラー
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
 これはある田舎町を舞台に、目だたない大学教授の一生を追った小説です。というあらすじだけ聞くと、大概の人はつまらないかと思うかもしれません。しかし、感情を表に出さない主人公ストーナーの心には文学への情熱だったり、愛する娘を助けてあげられないもどかしさとなどが渦まいており、ドラマチックな描写がないのに読者をそれに同調させてしまうのが不思議ですごい。翻訳はもちろん素晴らしいです。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
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【推薦者】谷川 毅
【推薦作品】『アルグン川の右岸』
【作者】遅子建
【訳者】竹内良雄・土屋肇枝
【推薦文】
中国東北部黒竜江省のロシア国境付近でトナカイと共に暮らすエヴェンキ族が辿ってきた歴史を酋長の妻が語る。ロシア人・漢民族・日本人に翻弄される苦難の歴史が、かがり火の前であぶり出される。しかし作品の中心を占めているのは自然と共に生きているエヴェンキ族が持つ独特の死生観だ。そこには我々がすっかり失ってしまった大切なものがある。淡々と語られる物語が、じんわり体にしみてくる傑作である。

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【推薦者】おこめ くれよん
【推薦作品】『大いなる不満』
【作者】セス・フリード
【訳者】藤井光
【推薦文】
 げらげら笑った。古代人にお熱の科学者、ハーレムの中の醜い男、「ベオウルフ」を筆者する僧……。語り手たちはその世界を、シリアスとも言える調子で語るのだが、11の短編はまさに奇天烈で、そのギャップに痺れる。けれど、笑えるだけではなく、奇妙で不条理な物語はしっかりと現実を見つめていて、あるいはこれを読む僕たちが物語の奥を見つめていて、フィクションのすばらしさを再確認させられる。真剣なおかしさを崩すことなく翻訳している『大いなる不満』は、みんなに読んでほしい。

大いなる不満 (新潮クレスト・ブックス)
セス フリード
新潮社
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【推薦者】酉島 伝法
【推薦作品】『乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺』
【作者】ラティフェ・テキン
【訳者】宮下遼
【推薦文】
ゴミ処理場に流れ着いた貧しくも生命力にあふれる人々が、苛烈な現実に組み伏せられては這い上がり迷信や伝説や歌を生み出していく、めまぐるしく豊かな奇想の歴史。翻訳されて本当にありがたかったです。トルコの歴史を絡めた解説も素晴らしかった。

乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺
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河出書房新社
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【推薦者】小山 Q平
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】モーゲスタン陽子
【推薦文】
江戸郭の詳細な描写から郭言葉までよくもまあ翻訳したもんだ。

北斎と応為 上

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
彩流社
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【推薦者】北村 紗衣
【推薦作品】『アダム・スミスとその時代』
【作者】ニコラス・フィリップソン
【訳者】永井大輔
【推薦文】
ともすれば『国富論』を中心に経済学の枠組みでのみ語られがちなアダム・スミスの業績を、偉大な同郷の哲学者であり心置きなく語り合える親友でもあったデイヴィッド・ヒュームの人間学との結びつきの中でとらえなおし、言語の起源や人間の感情などにまで鋭く切り込む壮大なスケールの学問体系として描き出した評伝。注意深く斬新な訳語の選定により、一見とっつきにくいスミスの思想と人生をわかりやすく紹介してくれる。後書きの翻訳秘話も必見。

アダム・スミスとその時代
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【名前】三浦屋八右衛門
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴビエ
【訳者】モーゲスタン陽子
【推薦文】
 カナダの作家が日本の江戸時代に生きる女性絵師の姿を克明に描き出した大作であるにもかかわらず、日本での翻訳出版は遅れ、この大作翻訳に挑んだ訳者の努力を、まず評価したい。北斎の娘・応為の存在は、日本で知られつつあるものの、その活動は不明な部分が多く、小説とはいえ著者ゴビエ氏は、長期にわたる詳細な調査研究に基づいて執筆された。訳者は単なる翻訳ではなく、著者ゴビエ氏の調査の足跡を実際その足で辿り、また自ら江戸時代の風俗を調査考証しつつ、正確な翻訳に努めている。主人公である北斎の娘応為の生涯だけでなく、応為が残したあるいは関与した作品が、気づかなければ読み流してしまうほど小説の中で違和感なく登場している。美術愛好家にとっても、江戸時代の知られざる女性絵師の活動を、翻訳を通じて巧みに描き出し、日本人に再認識させてくれる優作である。

北斎と応為 上

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
彩流社
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【推薦者】遠藤 悦子
【推薦作品】『陪審員に死を』
【作者】キャロル・オコンネル
【訳者】務台夏子
【推薦文】
これ以外にはない、という独特のテキストの、言葉の速度、時にクレイジーで信じられないような言いまわし、韻律を、素晴らしく的確に日本語にうつして、このひとの翻訳でなくてはこんなには楽しく読めない、と確信するサスペンスのシリーズ最新作。作家と翻訳者の最高の組み合わせ。そして選ばれ尽くした言葉の余韻は深く、胸に残る。

陪審員に死を (創元推理文庫)
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東京創元社
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【推薦者】イニエスタッソ
【推薦作品】『善き女の愛』
【作者】アリス・マンロー
【訳者】小竹 由美子
【推薦文】
2014年に読んだ本の中で一番おもしろかったです。アリス・マンロー大好きですが、やっぱり小竹さんの訳がしっくりきます。

善き女の愛 (新潮クレスト・ブックス)
アリス マンロー
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【推薦者】みずけろ
【推薦作品】『夏の魔法 ペンダーウィックの四姉妹』
【作者】ジーン・バーズオール
【訳者】代田亜香子
【推薦文】
きらめく夏の時間、アランデルの庭。四姉妹と男の子の生き生きとした姿に胸がときめきました。 じっくりと、何度も読みたくなる一冊です。

夏の魔法: ペンダーウィックの四姉妹 (Sunnyside Books)
ジーン バーズオール
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【推薦者】いたち
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明

【推薦文】
 佐藤良明氏による『重力の虹』の翻訳がすばらしいのは、その翻訳過程を佐藤氏がブログで配信し続けていたことだ。http://gravitysrainbow.seesaa.net/ http://sgtsugar.seesaa.net/ 9月末に発売となったことで現在その記事の多くは削除されているが、一部は当該ブログや「サトチョンの翻訳日記」などで垣間見ることができる。結果として我々が手に取る本だけでなく、その過程を発進し、読者に提供しつづけた佐藤氏の労をも含めての推薦とさせていただく。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
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【推薦者】島田 賢太郎
【推薦作品】
『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子
【推薦文】
 この本は、浮世絵作品、登場人物、主人公の生涯など、時代考証的に極めて妥当な筋になって、その表現に隙がない。また、現代の浮世絵界に生きる者には、とても言及しにくい部分も切り口にして、小説でありながら学術・研究面にも示唆を与えるような作品である。江戸時代、身分制度や男尊女卑の社会性を縦軸にして、さらに徒弟制度を横軸にしながら生活の安定を築くなか、親子の愛、師匠の厳しさ、門人達との葛藤を胸に刻みながら、一人の女浮世絵師として生きる姿を浮き彫りにした新鮮味ある力作だ。

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
彩流社
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【推薦者】ロメロ イサミ
【推薦作品】『TTT: トラのトリオのトラウマトロジー』
【作者】ギジェルモ・カブレラ=インファンテ・ギジェルモ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
『TTT』は、キューバ作家カブレラ=インファンテの最高作品であると同時に、もっとも「読みにくい」作品でもある。それを日本語で見事に翻訳できた寺尾氏はすごい。それを象徴するのがタイトルのTres Tristes Tigresをを「トラのトリオのトラウマトロジー」に訳したことである。

TTT: トラのトリオのトラウマトロジー (セルバンテス賞コレクション)
ギジェルモ・カブレラ インファンテ
現代企画室
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【推薦者】円 高寺
【推薦作品】『狼少女たちの聖ルーシー寮』
【作者】カレン・ラッセル
【訳者】松田青子
【推薦文】
狼少女の表題作も面白いですが、一番好きなのは、合唱団の少年たちが氷河の頂上で歌って雪崩を引き起こす、海賊の血筋を受け継ぐという土地の伝統行事を描いた「事件ナンバー00/422の概要」でしょうか。K・ラッセルと松田青子さんが描く自然と子供たちの世界は、奇妙だけど表情が豊かで、W・アンダーソンの映画を観てるみたいに楽しいです。

狼少女たちの聖ルーシー寮
カレン ラッセル
河出書房新社
売り上げランキング: 170,615

【推薦者】ルネ
【推薦作品】『痴愚神礼讃-ラテン語原典訳』
【作者】デシデリウス・エラスムス
【訳者】沓掛良彦
【推薦文】
いやあ、これはもう大事件でしょ。ヨーロッパ中を席巻した16世紀の名著がラテン語の原典から見事に訳出されたばかりか、渡辺一夫の名訳(ただしフランス語からの重訳)をも凌ぐ、諧謔の精神にあふれているなんて。「阿呆」やら「××」やら罵り言葉が続出するかと思いきや、詩情あふれる言葉の数々も散りばめられている。遠く離れた時代や場所の世界を身近に感じさせてくれる翻訳ならではの賜物。

痴愚神礼讃 - ラテン語原典訳 (中公文庫)
エラスムス
中央公論新社 (2014-01-23)
売り上げランキング: 48,998

【推薦者】頭木 弘樹
【推薦作品】『冗談』
【作者】ミラン・クンデラ
【訳者】西永良成
【推薦文】
かつて、同じくミラン・クンデラ著、西永良成訳の『裏切られた遺言』(集英社)を読んだとき、カフカの翻訳はこうでなければならないということをクンデラが語っていて、それを西永良成さんが日本語に訳されていたわけですが、ドイツ語→フランス語→日本語という重訳にもかかわらず、そのカフカの文章の素晴らしいのなんの! びっくりして、まさに一読三嘆! それ以来、西永良成訳のクンデラの大ファン。今回の『冗談』も大変に期待していましたが、期待以上の素晴らしさ!なお、『冗談』の翻訳はすでにありますが、それはチョコ語から訳されたもので、今回は「原著者の強い要望に沿って、八五年のフランス語決定訳」を翻訳したものとのこと(あとがきより)。内容にかなりちがいがあるそうです。クンデラは自分の本のフランス語訳や英語訳を、自分自身で納得できるまで何度も改訳した人。そういう作家の本を訳すのは、きっと大変なことだろうと思います。

冗談 (岩波文庫)

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ミラン・クンデラ
岩波書店
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【推薦者】ノディ
【推薦作品】『災厄の町』
【作者】エラリー・クイーン
【訳者】越前敏弥
【推薦文】
偏見や人種憎悪が横行する現代でこそ、再び読まれるべき叡智と理知、そして祈りに満ちている。それがミステリという娯楽文学の枠組の中で達成されているのが何より素晴らしい。従来の人称解釈を大胆に見直した今回の新訳では複雑な人間関係がさらに明確になり、それがもたらした悲劇を平明な文体で綴り、さらに読後の感動が増している。

災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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早川書房
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【推薦者】パンダママ
【推薦作品】『<喜劇映画>を発明した男 ~帝王マック・セネット、自らを語る』
【作者】マック・セネット
【訳者】石野たき子
【推薦文】
『<喜劇映画>を発明した男~帝王マック・セネット、自らを語る』は、装丁も素敵なので、表紙が見えるように本棚に飾っています。古き良き時代に、いろんな工夫をした先人の知恵に触れられる本です。セネットが、様々な思いを胸に、まずは行動をしている事に心を打たれます。そして、まるで喜劇映画さながらに、いろんな人との出会いが予期せずにあり、計画になかった事がおこっていくのが、実話である事に驚きます。脳内で、場面を想像してみると、やはりそれは、サイレント映画のような活劇となって動いて感じられる本でした。

〈喜劇映画〉を発明した男──帝王マック・セネット、自らを語る
マック・セネット
作品社
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【推薦者】ys22
【推薦作品】『別荘』
【作者】ホセ・ドノソ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
ものすごい本があるという噂だけ聞こえていた。でも、翻訳されないと、海外の本は読めない。いつか、誰かが、多くの読者のために立ち上がってくれるだろうと待つしかなかった。それが、寺尾隆吉氏の渾身の訳によって、ついに、世に出た。圧倒的な物語を、圧倒的なまま日本語にした、素晴らしい翻訳書だと思う。

別荘 (ロス・クラシコス)

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ホセ ドノソ
現代企画室
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【推薦者】りつこ
【推薦作品】『甘美なる作戦』
【作者】イアン・マキューアン
【訳者】村松 潔
【推薦文】
 とにかく読んでいる時の高揚感、楽しさがハンパなかった。マキューアンがこんなスィートな小説を!という驚き。そしてスィートと見せてやっぱり意地悪!というしてやられた感。知っててやってるね?な楽しさ満載で小説を読む楽しさがぎゅっと詰まっている作品。

甘美なる作戦 (新潮クレスト・ブックス)
イアン マキューアン
新潮社
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【推薦者】小島 玲
【推薦作品】『華氏451度』
【作者】レイ・ブラッドベリ
【訳者】伊藤典夫
【推薦文】
2014年に発行された、あらゆる優れた海外翻訳の中から、本書を推薦する理由、それは、訳者あとがきに書かれた、翻訳者の情熱にいたく感じ入ったためです。原作の言葉が含んだ意味を、いかに伝えるか、そのためにいかに深く原書を読書したか、翻訳者がいかに原書を愛しているか――そういったことが、あとがきの数ページから読み取れるたためです。おかげで、安心して翻訳書を楽しむことができました。もちろん中身は不朽の名作。文句なしに面白いです。今の時期に、この本の新訳が出るということにも意味がある。ぜひ手に取って、読んでいただきたいです。

華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
レイ・ブラッドベリ
早川書房
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【推薦者】放克軒(さあのうず)
【推薦作品】『ドリフトグラス』
【作者】サミュエル・R・ディレイニー
【訳者】浅倉久志/伊藤典夫/小野田和子/酒井昭伸/深町眞理子
【推薦文】
SFの可能性を切り開いた天才ディレイニーの全中短篇収録という文字通り決定版が2014年末に滑り込んできた。1960年代にデビューしたディレイニーは、それまでのアイディアを中心としたSFとは異なるメタファーやメタフィクションといった手法で、より高度に構築された新しいSFを作り上げた。また性や人種といったこれまで扱われていなかったテーマの部分でもタブーを打ち破っていった。親しみやすいガジェットにきらびやかなイメージをつむぎだす美しい文章とディレイニーはけっして間口の狭い作家ではないが、奥行きという面では何年経っても百戦錬磨の読み巧者たちにさえ謎の絶えない作家でもある。今回こうして名訳者の方々に新たな魅力を発見させていただいて、読者としては喜びに堪えない。

ドリフトグラス (未来の文学)
サミュエル・R・ディレイニー
国書刊行会
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【推薦者】ヨーセク
【推薦作品】『ワン・ダイレクション 僕らの話をしよう―。』
【作者】ワン・ダイレクション
【訳者】鮎川晶
【推薦文】
オーディション番組『Xファクター』をきっかけに結成された5人組のボーイズ・グループ、ワン・ダイレクション。猛スピードでスターダムを駆け上がってきた5人が、それぞれの言葉で人生を振り返る。本書で最大の魅力は「語尾の処理」。この本を読めば「~だった」「~だ」などシンプルな語尾で、躍動感ある訳文が作れるのだと実感できる。メンバー1人1人の個性を引き立たせるのに、無駄な語尾は必要ない。本書のように原文に真摯に寄り添えば、自ずと匂い立つのだ。まさに翻訳賞に相応しい、たいへん良質な翻訳書。海外セレブの記事翻訳や映像翻訳でも参考になるだろう。

ワン・ダイレクション 僕らの話をしよう―。
ワン・ダイレクション
宝島社
売り上げランキング: 24,357

【推薦者】赤座燈
【推薦作品】『コールド・スナップ』
【作者】トム・ジョーンズ
【訳者】舞城王太郎
【推薦文】
トム・ジョーンズの本を私は舞城王太郎を通してしか読んだことがないから私にとってトム・ジョーンズとはこういうもので視野が狭くてとんでもない話だけど私にはこの訳でしか考えられないようになってしまった。そしてとんでもなく飛躍した考えの元に舞城王太郎の「愛」の伝え方について考える。考えられて可能な文体の中で最適な「愛」の伝え方。それがトム・ジョーンズの舞城王太郎訳。でもこれで終わりじゃない。世界は進んでいく。もちろん文学も。不変の「愛」に対して進化した「文学」はどこまで表せるか。だからこれは「愛」の「翻訳」なのかもしれない。そういう意味だったりそういう意味ではなかったりして、私はこの本を推薦します。

コールド・スナップ

コールド・スナップ

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トム・ジョーンズ
河出書房新社
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【推薦者】iHope
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
日常のあちこちに潜む「静かな悲しみ」から目をそらすのではなく、むしろ慈しむように抱きしめ、1度しかない人生を歩んでいくゆく主人公・ストーナーの姿に心を打たれました。「みじめな、ダメな人生なんてないんだよ。みんなそれぞれ、精一杯に生きている、そのことが尊いのだよ」―そう語りかけ、励ましてくれているような気がしました。本書は14年6月に逝去された東江一紀さんによる最後の翻訳で、15年以降東江さんの翻訳書が出ることはもはやありません。埋もれていたこの名作を掘りおこし、命がけの翻訳で届けて下さった東江さんの偉業をたたえる意味でも、ぜひ、ぜひ、本作に大賞を!

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
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【推薦者】miint
【推薦作品】『狼少女たちの聖ルーシー寮』
【作者】カレン・ラッセル
【訳者】松田青子
【推薦文】
海外文学を滅多に読まないのですが、うつくしい装丁にひかれて手にとりました。短編集。登場するこどもも大人もよるべなく、残虐で、あられもない光にむかいます。ポップな訳文が素敵でした。

狼少女たちの聖ルーシー寮
カレン ラッセル
河出書房新社
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【推薦者】W. Y.
【推薦作品】『アニアーラ』
【作者】ハリー・マーティンソン
【訳者】児玉千晶
【推薦文】
ただでさえ売れない翻訳文学、ただでさえ売れない詩集、その二重苦に陥って年間数冊レベルの刊行しかないという悲しい現状にあるのが海外の詩集。でも日本翻訳大賞は詩も対象になっている以上、候補に入っていなければ嘘というものでしょう。1974年にノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの詩人の代表作に、ついに邦訳が出たのです。漂流する宇宙船を舞台とした、壮大なSF叙事詩。ぎりぎりまで人間性が追い詰められた状況の中で描かれるヒューマニズム。SFファンにも是非とも手にとってもらいたい一冊です。そしてこういう賞をきっかけに、海外現代詩の翻訳がもっと進むことを期待します。本当に、今生きている海外詩人の翻訳とか絶滅危惧種なんですから!

アニアーラ

アニアーラ

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ハリー マーティンソン
思潮社
売り上げランキング: 556,305

【推薦者】星落秋風五丈原
【推薦作品】『マリアが語り遺したこと』
【作者】コルム・トビーン
【訳者】栩木 伸明
【推薦文】
天使ガブリエルから聖霊による告知を受け、イエスキリストの誕生を知ったマリアを描いた「受胎告知」は、数々の絵のモチーフになってきた。だが実はこの記述は、イエスの死後に書かれた「マタイによる福音書」と「ルカによる福音書」に登場しており、しかもそれぞれ少しずつ違っている。では、本当のところはどうなのか。今となっては、誰にもわからない、当事者であるマリアが語らない限りは。では、これまで誰か彼女に尋ねたか。その事についても、他の事についても。いいや、人々は勝手に想像しただけだ。人々の罪を購うために、たった一人で十字架にかけられた神の子、エルサレムの王、奇跡を起こす男を息子に持つことは、さぞや誉れであろう、と。そうして、マリアの言葉は封じられ、人々が教えを信じるに都合のいいことだけが伝わった。アイルランドのカトリック教徒である著者が、やっと彼女の声を見つけてくれたのだ。

マリアが語り遺したこと (新潮クレスト・ブックス)
コルム トビーン
新潮社
売り上げランキング: 289,631

【推薦者】マヌルねこ
【推薦作品】『バニヤンの木陰で』
【作者】ヴァディ・ラトナー
【訳者】市川恵里
【推薦文】
クメール・ルージュ(ポル・ポト派)によるカンボジア大虐殺を一少女の目から見た自伝的小説。単なるドキュメンタリーや体験談ではなく、一度作者の中で再構成しているので、凄惨な出来事を描いているけれどもその筆致には詩的な美しさと哀しみがあり、翻訳もそれをうまく伝えている。
なお、昨年公開されたリティ・パニュ監督の映画『消えた画 クメール・ルージュの真実』も、同じくカンボジア大虐殺を取り上げながら、土人形とドキュメント映像を組み合わせた詩的な作品だった。本書と併せて観るといいと思う。

バニヤンの木陰で

バニヤンの木陰で

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ヴァディ ラトナー
河出書房新社
売り上げランキング: 663,348

【推薦者】ytng 48
【推薦作品】『帰ってきたヒトラー』
【作者】ティムール・ヴェルメシュ
【訳者】森内 薫
【推薦文】
ヒトラーと、現代人が、噛み合ってないけど会話が成り立っているところが非常に面白かった。翻訳の苦労が偲ばれます。

帰ってきたヒトラー 上

帰ってきたヒトラー 上

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ティムール ヴェルメシュ
河出書房新社
売り上げランキング: 4,654

【推薦者】timeturner
【推薦作品】『霧に橋を架ける』
【作者】キジ・ジョンスン
【訳者】三角和代
【推薦文】
寂しいけれどほのぼのしている猿の話で始まったので、そういう作風かと思っていると衝撃の「スパー」が。えーっ、この人どういう精神構造?と愕然とする間もなく女子大生が水音に救われ、子どもと猫の話のあとにはドラッグによる妄想みたいな世界。かと思うと中国お伽噺で妙に懐かしい気分にさせられたり「蜜蜂の川の流れる先で」のヒューマニズムに感動したり。複数作家のアンソロジーではないかと思うほどバラエティに富んでいて、特殊な設定で語られるものも多いのに、どの作品も最初の一行からそれぞれの世界にぐんぐん引きこまれます。なかでもしっとりと幻想的な表題作が大好き。ストイックなほどに恬淡と語りながら、そこにあふれるような情感を盛りこんでいる訳文の力が大きいと感じました。

霧に橋を架ける (創元海外SF叢書)
キジ・ジョンスン
東京創元社
売り上げランキング: 224,848

【推薦者】北烏山
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
1960年代に書かれたこの作品が、いま再評価されて、それが名翻訳家の目に留まり、彼の最後の翻訳作品として読者の手に届けられたという奇跡。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
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【推薦者】関根 悠里
【推薦作品】『あるときの物語』
【作者】ルース・オゼキ
【訳者】田中文
【推薦文】
主人公の日系人作家が読む日本人少女の日記は未来に読むであろう「あなた」へ宛てて書かれていて、その「あなた」は主人公でありこの物語を読んでいる読者自身でもある。この書き手と読み手の関係性は物語で幾度となく語られる存在と時間の概念と深く結びついていて、読者は物語の多重構造に引きずり込まれていくような感覚を覚えるだろう。アメリカからの帰国子女の少女の日記を通して綴られる日本の描写はどこかウィリアム・ギブスンのサイバーパンクを思わせ、その不思議なおかしさに翻訳書ならではの喜びがある。違和感のない日本語訳文の快さと、別言語に基づいた思考を読む心地よい違和感、その両方を楽しめる一冊。

あるときの物語(上)

あるときの物語(上)

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ルース・オゼキ
早川書房
売り上げランキング: 92,125

【推薦者】未来への希望
【推薦作品】『英文ライティングのための実践英文法』
【作者】スーザン・サーマン著 ラリー・シェア著
【訳者】伊藤淳一
【推薦文】
英文を書くための英文法を翻訳した本です。日本の英文法とは違い、英文を書くためには、いろいろと制約があります。この本の第6章、「句読法」に掲載されているが、コンマ、カッコ、点線、アンダーライン、などについてその使い方が詳しく掲載しています。この章を読んだだけでも、相当の価値があるかなと思います。なぜならば、日本の文法書にはこのように詳しく掲載されていません。英語は世界語ですから、第6章以外でも、その書き方を詳しく掲載しているこの本は、参考になります。日本が今後世界に肩を並べていくには、世界語である英語を縦横無難に使えなければならないと思います。読む・話すだけではなくて、書くことも大事なことであり、これができないと世界標準についていけない。そのためにも、この本を多くの人の参考になるし、翻訳大賞にも推薦したい。日本人に理解できるように、訳者も、努めて日本人向けに「訳者注」などの説明を加えている。その努力も含めて推薦いたします。

英文ライティングのための実践英文法―基礎から応用まで
スーザン サーマン ラリー シェア
バベルプレス
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【推薦者】ノイアー マヌエル
【推薦作品】『帰ってきたヒトラー』
【作者】ティムール・ヴェルメシュ
【訳者】森内薫
【推薦文】
エンタメ作品として読んでほしいからという理由で、作者から脚注を禁止された本作。なのに、ドイツの情勢やお約束がぜんぜん分からなくても、まったく嫌にならず、もちろん飽きずに一気読みできました。

帰ってきたヒトラー 上

帰ってきたヒトラー 上

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ティムール ヴェルメシュ
河出書房新社
売り上げランキング: 4,654

【推薦者】尾方 邦雄
【推薦作品】『ベルリンに一人死す』
【作者】ハンス・ファラダ
【訳者】赤根洋子
【推薦文】
編集担当による推薦だからといって宣伝の一端とあしらわないでください。これまで『ヒトラーの秘密図書館』などノンフィクションで知られる赤根洋子さんが、半世紀以上も前のリアリズム小説の傑作の翻訳に圧倒的な力を示した本だと思います。アマゾンの読者レビューでは翻訳の素晴らしさに一人ならず言及しています。『文藝春秋』の鼎談書評でも作品のすごさを絶賛されていますが、まるで高村薫や宮部みゆきの長編を読んでいるかのように、翻訳臭のほとんどない日本語でナチス独裁下のベルリンの世間や秘密警察が描かれます。自分がそこにいあるかのように経験できます。それを可能にしたのはひとえに赤根さんの翻訳文です。原稿を受け取ったときの興奮を読者として持続しつつ刊行にこぎつけました。お読みになれば、わかります。

ベルリンに一人死す

ベルリンに一人死す

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ハンス・ファラダ
みすず書房
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【推薦者】奥村 ぺレ
【推薦作品】『岸辺なき流れ』
【作者】ハンス・ヘニー・ヤーン
【訳者】沼崎雅行・松本嘉久・安家達也・黒田晴之
【推薦文】
本書 第二部にこんな表記がある。二人は時の流れの岸辺に座っていた。彼らの記憶にある様々な像が蝋でできた水草のように流れて行った。本書とは対照的に夏目漱石 『草枕』にはこんな表記がある。底には細長い水草が、往生して沈んでいる。…百年待っても動きそうもない。…今に至るまで遂に動き得ずに、また死に切れずに、生きているらしい。ハンス・ヘニー・ ヤーン。夏目漱石。彼らの表象としての「水草」。それが心象風景として記憶に残る。ヤーンも、漱石も、彼らはともに物語に流れる「時間それ自身」を可視化しようとしたのだ。ヤーンは一方向に流れる時間を。いっぽう漱石は澱んだ時間を。彼らの物語。その可視化された位相表記は実に見事である。それにしても本書の翻訳文は膨大な量である。二段組み1364頁。訳者諸氏の労を多としたい。まさに翻訳も、そして読書もともに挌闘技である。

岸辺なき流れ 上

岸辺なき流れ 上

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ハンス・ヘニー・ヤーン
国書刊行会
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【推薦者】ミーちゃん
【推薦作品】『一年以内に理想の結婚をする方法』
【作者】ジャネット・ブレア・ペイジ
【訳者】中島葉子
【推薦文】
結婚願望はあっても 出会う機会に恵まれなかったり、出会いがあっても結婚まで旨くいかなかったりとなかなか難しいものです。この本はそんな女性たちへの『救世主』と言えるのではないでしょうか?具体的且つ理論的な解説は言うまでもなく、読み進みながらより素敵な女性に成長していくことができると思いました。そして結婚相手を得る為だけの表面上のことではなく『愛とは何か?』を教えてくれています。結婚するまでを目標ではなくそれからの幸せこそを責任もって導いてくれている一冊なのです。

1年以内に理想の結婚をする方法―本気で幸せになりたい女性に贈る
ジャネット・ブレア ペイジ
アルファポリス
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【推薦者】– TOSHI
【推薦作品】『火星の人』
【作者】アンディ・ウィアー
【訳者】小野田和子
【推薦文】
文章のテンポがすばらしい。次々に襲い掛かるトラブル、それをどうクリアしていくのか、主人公の機転と行動力にただただ感心するばかり。読んでいるこちらの現実逃避感を誘うというか、とにかく読んでいる間は現実を忘れて貪るように読んだ。これには作者の文章力、それを訳した訳者の力が存分に現れている。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
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【推薦者】鈴木 純
【推薦作品】『帰ってきたヒトラー』
【作者】ティムール・ヴェルメシュ
【訳者】森内薫
【推薦文】
非常に取扱いの難しいテーマの作品(しかもコメディ!)を、こんなにも軽やかで笑える日本語で読める幸せについて、読んでいる間、何度も訳者の方に感謝しました。面白そうな作品がたくさんありそうなのに、登場人物の名前が覚えられない、文章のリズムがなんか変などの理由で翻訳書はどうにも後回しにしがちなのですが、こういう作品にもっと出会えれば良いなと思います。

帰ってきたヒトラー 上

帰ってきたヒトラー 上

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ティムール ヴェルメシュ
河出書房新社
売り上げランキング: 17,579

【推薦者】小村 一樹
【推薦作品】『ガスじいさんとはじめてのギターの物語』
【作者】キース・リチャーズ
【訳者】奥田民生
【推薦文】
ザ・ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズが、初めて書いた絵本! 翻訳は奥田民生さんです。 大好きな祖父のガスじいさんからギターをもらい、その大切なギターで、少年はギタリストを目指す…というストーリー。奥田さんの訳も洒脱で、彼らしい言葉遊びも楽しめる。幼いキースは、ガスの「マラゲーニャさえ弾けたら、なんでも弾ける」という言葉を信じ、毎日毎日懸命に練習する……というストーリー。いかにも海外物らしい繊細なイラストは、なんとキースの娘さんによるもの。調べたところ、キースも70歳なんですね。冒頭に、孫たちの名前が書いてある。自分のおじいさんとの大切な思い出を、おじいさんになった今、孫たちに伝えたかったのだろう。世界的ギタリストになったキース本人が演奏するマラゲーニャを聴きながら、彼の音楽人生に想いを馳せられる、贅沢な一冊。

Gus & Me ガスじいさんとはじめてのギターの物語 (一般書)
キース・リチャーズ
ポプラ社
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【推薦者】NZR
【推薦作品】『Q』
【作者】ルーサー・ブリセット
【訳者】さとうななこ
【推薦文】
中世ローマ歴史譚、史実を交えた大掛かりなフィクション、名も無き主人公vs書簡でしか現れない見えない敵、農民戦争→宗教改革→再洗礼派の反乱→コンゲームを生き抜く30年大河、不屈ながらも人間臭い主人公、脇の色彩豊かなキャラクター、壮大ながら洒脱なラスト。「血沸き肉踊る痛快な読書体験」を久々に味わえた事に感謝。

Q 上

Q 上

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ルーサー・ブリセット
東京創元社
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【推薦者】小竹 由美子
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
 人が日々生きていくことの哀しみと喜びが切々と胸に迫ってくる一方で、学び、そして教えるということ、愛するということ、文学の持つ力、自分の分を全うするということなどなど、様々なことを考えさせられる作品の素晴らしさもさることながら、それをまたじつに格調高い、それでいて衒わない、心に直に響く日本語に置き換えられた訳者の力量にも脱帽。見事なお仕事を重ねられながら多くの後進を育ててこられた東江さんのお人柄が滲み出ている気がした。名翻訳家としてこれまでなさってきたことのこれ以上ないピリオドとして、ご冥福を祈りつつ推したい。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 40,975

【推薦者】かもめ通信
【推薦作品】『愛の裏側は闇』
【作者】ラフィク・シャミ
【訳者】酒寄 進一
【推薦文】
ドイツの大学に留学する形で亡命したシリア人である著者の自伝的小説。“生と死と信仰、血の絆、反乱や闘争。シリアの100年を語り尽くす”大河小説でもあり、“シリア版ロミオとジュリエット”という恋愛小説でもあるという宣伝文句に偽りはない。同時にパズルのピースのような細かな章立のモチーフをつなぎ合わせて形作られた現代版の「千夜一夜物語」でもある。複雑な構成の全三巻からなる長編小説ではあるが,リズムある翻訳で興味深く楽しく読むことが出来た。全編一気に刊行してくれた出版社にも感謝したい。

愛の裏側は闇 (1)

愛の裏側は闇 (1)

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ラフィク・シャミ
東京創元社
売り上げランキング: 384,859

【推薦者】♪akira
【推薦作品】『そして山々はこだました』
【作者】カーレド・ホッセイニ
【訳者】佐々田雅子
【推薦文】
火のそばでこどもに読み聞かせるようにゆっくりと語られていく物語が、文章で読者の心の奥深くに染み込んでゆく。かつて中学生の頃挑戦し、読みづらさに挫折したカポーティ『冷血』が、この訳者の新訳により、驚くほど面白くなって一気に読んでしまった。あのエルロイ、ユージェニデス、はたまた硬質な政治ものと、幅広く、そして全く違うテイストの訳文で驚かせてくれる佐々田氏と本書を推薦します。

そして山々はこだました (上)
カーレド ホッセイニ Khaled Hosseini
早川書房
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【推薦者】浅野 泰弘
【推薦作品】『愉楽』
【作者】閻連科
【訳者】谷川毅
【推薦文】
広島弁などを交えた語り口が軽妙で、作品の持つ魅力を損なっていないと感じる。「受活」などの方言もうまく取り入れ、つんぼ、おし、めくらといった言葉を使っているあたりにもこだわりが感じられる。労作。

愉楽

愉楽

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閻 連科
河出書房新社
売り上げランキング: 43,074

【推薦者】六角 レンチ
【推薦作品】『名作短編で学ぶイタリア語』
【作者】タブッキ、ベンニ、モラヴィア、ブッツァーティ他
【訳者】関口 英子、白崎 容子
【推薦文】
もう推薦済みの方もあるし、亡くなってしまった方もいるし……。どうしてもプリーモ・レーヴィ(Primo Levi)の『La chiave a stella』を、ぜひぜひ文庫で出していただきたいので、白羽の矢を立てる!意味で関口さんに。変な推薦の仕方ですみません。でも、こういう形もあっていいかなと思います。

名作短編で学ぶイタリア語
ベレ出版
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【推薦者】本多ユウ
【推薦作品】『老人と海』
【作者】アーネスト・ヘミングウェイ
【訳者】小川高義
【推薦文】
海の上で、まるで自らとせめぎ合っているかのような、内省的な老人像を描き出した。既訳とは違った世界観を提出するという意味で、新訳し出版され、とても価値のある一冊だったと思う。

老人と海 (光文社古典新訳文庫)
アーネスト ヘミングウェイ
光文社 (2014-09-11)
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【推薦者】門前 照二
【推薦作品】『最初の舞踏会 ホラー短編集3』
【作者】ペロー他
【訳者】平岡敦
【推薦文】
特筆すべき点は3つあります。全編新訳であること。本邦初訳が2編あること。そして、最近では珍しいフランス文学の短編集であること。私が好むのはやはり、クラシックで上品な幻想を描くゴーティエの「コーヒー沸かし」やメリメの「イールの女神像」などでしょうか。額縁から抜けだした貴族たちが秘密の夜宴を催し、妖艶な美女とのダンスに興じてやがて目を覚ます「コーヒー沸かし」。「イールの女神像」は、末尾を締めくくるのに相応しい中編です。邪悪な女神像が、徐々に恐怖と災いをもたらす様は圧巻。金原瑞人の英米短編集に始まって、2年ごとに刊行を続けてきた「ホラー短編集」シリーズの今後が大いに気になるところです。

最初の舞踏会 ホラー短編集3 (岩波少年文庫)
岩波書店
売り上げランキング: 174,660

【推薦者】みねこ
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
ある男性の一生を綴る淡々とした文章が、まるで細い水の流れがやがて岩を穿つように、しだいに心に染み通り、読み進むほどに作品の世界に身を沈めていくようでした。物語の最後、決して明るくない人生の終りに立ち会った時に、なぜか幸福な心持ちになったのは、ストーナーの人生を、読者として、ともに歩めた喜びのせいだったかもしれません。そして、水の流れを止めずに最後まで導いてくれたのは、訳者の紡ぐ文章であったと思います。「訳者あとがきに代えて」までも含めて『ストーナー』というひとつの作品でした。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 40,975

【推薦者】不璽王
【推薦作品】『かわいい闇』
【作者】マリー・ボミュプイ ファビアン・ベルマン
【訳者】原正人
【推薦文】
2014年に読んだ中でとびきりの傑作。少女の屍体の周りで形成される小人のコミュニティで巻き起こる群像劇。そのどれもが綺麗で汚くて、可愛くて気持ち悪い。優しくて強くて残酷で弱い。好きで泣けて嫌いで笑える。清濁どろどろなのでスカッと後味が悪い。ほんとに素晴らしいです。

かわいい闇

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マリー ポムピュイ ファビアン ヴェルマン ケラスコエット
河出書房新社
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【推薦者】石原 節子
【推薦作品】『北斎と応為』
【作者】キャサリン・ゴヴィエ
【訳者】モーゲンスタン陽子
【推薦文】
江戸時代の日本が舞台の英語による小説を訳す、という難業を見事に成し遂げた訳者に敬意を表して。

北斎と応為 上

北斎と応為 上

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キャサリン・ゴヴィエ
彩流社
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【推薦者】樋口 薫
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
あれだけの分量、難易度の大作を新約した労力にまず拍手。膨大な注釈も、巨大な迷宮を抜けるための大事な手がかりとなる。これまで遠巻きに畏怖して眺めるだけだった超巨大建造物を、自らの足で踏破しようという気にさせてくれた。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
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【推薦者】舞狂小鬼
【推薦作品】『黄金時代』
【作者】ミハル・アイヴァス
【訳者】阿部賢一
【推薦文】
アフリカの西沖合に浮かぶ不思議な”島”の風俗や文化や芸術の紹介を通じ、無形の「モノ」と言葉の「意味」が混じりあう物語の迷宮が紡ぎだされます。特に後半にでてくる、”本”のイマジネーションは圧巻。ボルヘスの「砂の本」とはまた違った形の幻想は、読むものに眩暈と酩酊感とこの上ない満足を与えてくれます。こんなややこしい本をよくぞ訳してくれました!

黄金時代

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ミハル アイヴァス
河出書房新社
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【推薦者】杠 麗子
【推薦作品】『はい、チーズ』
【作者】カート・ヴォネガット
【訳者】大森望
【推薦文】
収録された14篇が書かれたのは1950年代とのことで、当時のヴォネガットは30代、GEの広報部で働きながら夜と週末に短編小説を書いていたそうです。はっきり言ってどれも面白く、バラエティに富んでいるという表現がぴったりだと思うほど、いろいろな作品が並んでいます。ジャンルや文体、テイストに偏りがないので読むたびに新鮮な味わいがあり、なにしろ読んでいること自体が楽しい作品集でした。ヴォネガットを読んだことがない人でも、すぐにこの世界に入りこめるのではいかと思いますし、著者のスピリットが伝わってくるような素晴らしい翻訳作品だと思います。

はい、チーズ

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カート ヴォネガット
河出書房新社
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【推薦者】長澤 唯史
【推薦作品】モンド9(モンドノーヴェ)
【作者】ダリオ・トナーニ
【訳者】久保耕司
【推薦文】
ホラー風味のスチームパンク。機械と生物の境界が曖昧になり蝕み合うというこの異様な世界を創造した想像力、視覚的な喚起力に富んだ変幻自在な文体、そしてそれを見事にリーダブルな日本語に置き換えた翻訳、そのいずれにも敬意を表して。

モンド9 (モンドノーヴェ)
ダリオ・トナーニ
シーライトパブリッシング
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【推薦者】ザヴィエル・コーエン (堺市)
【推薦作品】『駄作』
【作者】ジェシー・ケラーマン
【訳者】林香織
【推薦文】
「実際の生活の中で、いったい誰が何を公言したりするのだろう?もっと言うなら、“宣言したり”、“声を大にしたり”、(中略)する人がいるのだろうか?人というのは、何かを“言う”だけだ。」「野暮ったく、趣きのない、陳腐な常套句」を嫌悪する作家崩れの主人公が「プロットはひねくり回しすぎで、偶然の一致に頼っ」た悪夢の様な世界に引きずり込まれる―レトリックへの手厳しい批判を孕む捻くれた通俗小説(Pot Boiler)の魅力が、日本語への変換と云うフィルターを介してより明瞭に浮かび上がる、その点において、本作は翻訳の豊かな収穫物と言えるだろう。

駄作 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジェシー・ケラーマン
早川書房
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【名前】三月うさぎ(兄)
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
文章はこれ以上ないほど平易。感情の爆発もドラマチックな展開もほとんどないが、人生に必要なことが全て書いてあるので、読み始めた人生の初心者にも、人生を書きつつ走っている人にも、ついに書かれなかったことを思う老境の人にも、 様々なレベルの読み方が可能な貴重な作品。もうオールタイムベストでいいです。死んだら、これを棺に入れてください。人生が終わった後にどう読めるのか、いまから楽しみにしています。

ストーナー

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 40,975

【推薦者】加藤 靖
【推薦作品】『古事記』
【作者】太安万侶(筆録、編纂)、稗田阿礼(朗誦)
【訳者】池澤夏樹
【推薦文】
古事記の翻訳は日本文学におけるルネサンスだ。押し寄せるフラット化の波に四方を囲まれた今の私たちにとって、足下の地面の下の下の、そのまた下にある書き言葉に触れること以上に自立を保証してくれるものがどれほどあるだろう。訳者によれば千三百年前の日本語は「現代の英語やフランス語よりも遠」かったという。そうして出来上がった版面は実にユニークだ。三種類の読みがな、こまやかな改行と字下げ、実にページの四分の一を埋め尽くす脚注。いま、適当なページを開いてこの訳文を読みあげていると、のどごしのよい現代語に伴走する古語の息づかいのようなものが、いわば裏拍として耳を叩いてくるような奇妙な心地よさがある。はずかしながら過去には読み飛ばしていた神名の羅列や歌謡を苦もなく読み切ることができたのも訳者の腐心の賜物であろう。選考委員の皆様が評価される際にもぜひ声に出してお読みいただければと思う。

古事記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集01)
河出書房新社 (2014-11-14)
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【推薦者】原田 勝
【推薦作品】『ストーナー』
【作者】ジョン・ウィリアムズ
【訳者】東江一紀
【推薦文】
 静かな、それでいて熱のこもった作品世界が見事に再現されています。訳者しだいで凡作になりかねない作品が、名作として日本に紹介されたと思います。東江一紀さん、最後の訳業。主人公の最期と重なり、心が震えました。

ストーナー

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ジョン・ウィリアムズ
作品社
売り上げランキング: 40,975

【推薦者】凌山 清彦
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
 『重力の虹』は国書刊行会より1993年に出版されたのちしばらくは手に入らない状態が続いていたが、佐藤良明訳の登場により現在は身近なものとなっている。『重力の虹』に劣らぬ名作『ヴァインランド』の翻訳家でもあり、もはやピンチョンの本邦における第一人者ともいえそうである。この意義は『メイスン&ディクソン』や『逆光』ですら日本語で手に入らない状態が続いていた我が国の翻訳界においてその功績の小さいわけがない。適格な注釈は読みやすく、目次付の翻訳小説というのも浅学ながら初見である。ピンチョンの全作品を読まずに死ねるかと思うビジネスパーソンが満員電車をものともせず『重力の虹』を読むのは痛快かつ爽快である、それだけの期間注釈付の翻訳を待ち望んでいたのである。第一回の日本翻訳大賞にふさわしいと思う次第である。まだ翻訳されていない『Bleeding Edge』の本邦初公開となる日の遠からんことを読者として願う。翻訳者のブログもピンチョン好き度が反映されていて好印象。新しい翻訳者と訳書の形を提示しているように思う。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
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【推薦者】豊崎 由美
【推薦作品】『愉楽』
【作者】閻連科
【訳者】谷山毅
【推薦文】
中国の激動の現代史から浮かび上がってくる問題点を、無類に面白くユニークな物語の中に描いて素晴らしい作品。わたしは中国語を解さないので原作に直接あたったわけではないのですが、担当編集者によれば、原作における語りの変化を日本語に置き換える際の、訳者の苦労と配慮はハンパじゃなかったそうです。

愉楽

愉楽

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閻 連科
河出書房新社
売り上げランキング: 43,074

【推薦者】nakatadairake
【推薦作品】『低地』
【作者】ジュンパ・ラヒリ
【訳者】小川高義
【推薦文】
素晴らしい!!!

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

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ジュンパ ラヒリ
新潮社
売り上げランキング: 46,101

【推薦者】竹中 典子
【推薦作品】『黒ヶ丘の上で』
【作者】ブルース・チャトウイン
【訳者】栩木伸明
【推薦文】
全編にウェールズの田園風景とそこに吹く風を感じる、みごとな作品であった。そして、人間の暮らしや営みは、時代を経ても環境は違っても、根底は同じなんだと感じた。作者のチャトウインは植物や鳥に造詣が深かったのか、珍しい固有名詞が沢山登場していたので、訳者の栩木氏にはそのあたりの労への敬意も表したい。また、訳者あとがきに引用された詩も心に残った。素晴らしい本に出会えた幸運に感謝です。

黒ヶ丘の上で

黒ヶ丘の上で

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ブルース・チャトウィン
みすず書房
売り上げランキング: 329,039

【推薦者】echo
【推薦作品】『思考の取引』
【作者】ジャン=ジュック・ナンシー
【訳者】西宮かおり
【推薦文】
 現代フランス思想の翻訳にありがちな、難解なものを難解に訳すという訳文ではなく、原文に対する精緻な読解の上に、こなれた日本語で翻訳されている。「翻訳大賞」にもし思想部門のようなものがあるならば、選ばれてよい本だと思う。

思考の取引――書物と書店と
ジャン=リュック・ナンシー
岩波書店
売り上げランキング: 186,805

【推薦者】ノイニ
【推薦作品】『服用禁止』
【作者】アントニイ・バークリー
【訳者】白須清美
【推薦文】
本書はクラシックなミステリの形式に則ったものです。事件があり、手がかりが提示され、読者への挑戦状が入り、真相解明にいたるという流れです。しかしその枠組みの中でバークリーはむしろ全く別の、違う事を物語っているように感じられます。というのも、本書の最後、探偵と犯人の対決で明らかになるのはトリックやロジックでもなく、対決した二人の間に横たわる溝、価値観の違いなのです。挑戦状まで叩きつけておいて、まるで犯人当てなぞどうでもよいと言わんばかりで、読みながらぞくぞくとしてきます。本書は、正統派ミステリの形式の中で、正義や良心といった人によって異なる価値観について問いかけます。それはミステリという枠自体を笑い飛ばす、遊び心のように感じられる余裕でもあり、そんな本書の余韻が私はとても好きです。

服用禁止 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)
アントニイ バークリー
原書房
売り上げランキング: 364,529

【名前】把川泰久
【推薦作品】『ねずみに支配された島』
【作者】ウィリアム ソウルゼンバーグ
【訳者】野中 香方子
【推薦文】
害獣としてしか認識していなかったネズミの、驚く程の生存本能、繁殖への意志が感じ取れるようになると、一転、彼らが駆逐されていく様子が描かれ、環境問題の文脈おける「環境」とは、一体誰にとっての、なんの環境なのか、その不確かさを、曖昧さを、怪しさを、改めて感じさせてくれる名著。科学的な考察と、使命に燃える変人達、そしてしぶといネズミが織り成す、惑星地球のノンフィクション。

ねずみに支配された島

ねずみに支配された島

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ウィリアム ソウルゼンバーグ
文藝春秋
売り上げランキング: 78,731

【推薦者】林 みき
【推薦作品】『光の子供』
【作者】エリック・フォトリノ
【訳者】吉田洋之
【推薦文】
仏「ル・モンド」紙の元編集長・最高経営責任者であるエリック・フォトリノ氏の初邦訳作品ということで手にしたのですが、想像以上に自分は惹かれました。撮影技師の父親が遺した膨大な数の女優のポートレートと、見ず知らずの母が実は映画女優であったという死の床での告白から始まる主人公の“母親探し”。それと平行して重ねられていく、謎めいた人妻との逢瀬。ミステリーとラブ・ロマンスが同時進行で展開するだけでなく、シネ・フィルなら誰もが喜ぶ“古き良き時代”の映画のエピソードが散りばめられた物語。“フランス的”でありながらも、仏文学特有の湿っぽさや無駄な難解さ(偏見?)がなく、仏文学が苦手な自分が夢中になって読めたことにも驚かされました。原作は未読なのですが、きっと訳者の吉田氏は原作の世界観や空気感を壊さぬよう、大切に翻訳をしたのではないかと思います。吉田氏の今後のご活躍への祈りも込めて『光の子供』を推薦いたします。

光の子供 (新潮クレスト・ブックス)
エリック フォトリノ
新潮社
売り上げランキング: 316,253

【推薦者】松倉東
【推薦作品】『白冥の獄2 下 影との死闘』
【作者】ジン・ヘイル
【訳者】原島文世
【推薦文】
格好いい、可愛い男子が大活躍する冒険ファンタジーが読みたい方にも、学園BLを楽しみたい方にも太鼓判を押せる素晴らしい作品です。ファンタジーとしてリアリティのある世界観を構築し、性的マイノリティが直面するオープン/クローゼットの問題や、ホモソーシャルの残酷さもきっちり描き出す筆力に脱帽です。

白冥の獄2 下 - 影との死闘 (C・NOVELSファンタジア)
ジン・ヘイル
中央公論新社
売り上げランキング: 733,076

【推薦者】らっぱ亭
【推薦作品】『霧に橋を架ける』
【作者】キジ・ジョンスン
【訳者】三角和代
【推薦文】
キジ・ジョンスンはweb公開の「Spar」を読み衝撃を受けた。当時Twitterでスパー談義が盛り上がったのも懐かしい。http://togetter.com/li/32035 しかしコレ翻訳は難しいだろうなーと感じたことも憶えている。だから、今回まず「スパー」を読み、そして安堵した。本作品集は、キジ・ジョンスンお得意のジャパネスクな動物ファンタジー系の作品をバッサリと省いた大胆かつ秀逸な編集が成功しており、本邦の読者にとっては、モダンなストレンジ・フィクション系の作品から詩情溢れる重厚なSFファンタジーまで、今まさに旬の作家の魅力を余すところなく伝える一冊となっている。そして三角和代氏の訳文は、時に詩的で叙情的であり、時にスタイリッシュで硬質なキジ・ジョンスンの文体に寄り添った見事なものだ。これからもこの作家の紹介を続けていただきたいと切に思う。

霧に橋を架ける (創元海外SF叢書)
キジ・ジョンスン
東京創元社
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【推薦者】小森 収
【推薦作品】『〈喜劇映画〉を発明した男』
【作者】マック・セネット
【訳者】新野敏也・石野たき子
【推薦文】
異なる文化圏の出版物を、翻訳出版することは、単に、ヨコのものをタテにする以上のことが必要でしょう。しかも、原著刊行から半世紀、主に描かれた時代から1世紀を超えていて、かつ、いまでは絶滅したサイレント喜劇というものの〈帝王〉の姿を、現代の日本語に訳し、現代の日本の人々に伝えるためのには、どのような努力が必要か? その実例がここにあります。

〈喜劇映画〉を発明した男──帝王マック・セネット、自らを語る
マック・セネット
作品社
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【推薦者】みけねこ
【推薦作品】『TTT:トラのトリオのトラウマトロジー』
【作者】ギジェルモ・カブレラ・インファンテ
【訳者】寺尾隆吉
【推薦文】
ここ数年の寺尾隆吉さんのお仕事には質量ともに頭が下がります。どれも推薦したいところですが、2014年に刊行のものということだったので、カブレラ・インファンテの作品にしました。これからも良質なラテンアメリカ文学作品を翻訳してくださることを願って。

TTT: トラのトリオのトラウマトロジー (セルバンテス賞コレクション)
ギジェルモ・カブレラ インファンテ
現代企画室
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【推薦者】坪井野球
【推薦作品】『孤高の守護神 ゴールキーパー進化論』
【作者】ジョナサン・ウィルソン
【訳者】実川元子
【推薦文】
政治と戦争がよく出てくる。抄訳もボリュームあり、重厚な内容。PKの章の結びが見事。ゴールキーパーにとって最もおそろしいのは何か。羅列と思われた断片群に串がささる。ほか彼らの異端児であること、不遇であることや文学との親和性など。サッカーファンではない人間が読んでおもしろい本だった。

孤高の守護神 ゴールキーパー進化論
ジョナサン ウィルソン
白水社
売り上げランキング: 251,958

【推薦者】ヤマモト ロジ
【推薦作品】『重力の虹』
【作者】トマス・ピンチョン
【訳者】佐藤良明
【推薦文】
訳者佐藤氏は以前ピンチョンの文章を「ジミ・ヘンドリクスの演奏にたとえられる」と紹介しました。この作品を読めば確かにそれを体感できるでしょう。高速インプロヴィゼーション、スモーキーなファズ、常識外フィードバック…。私は佐藤良明氏の翻訳をこのように讃えます。「超高性能アンプにたとえられる翻訳」である、と。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
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【推薦者】レイラ
【推薦作品】『両シチリア連隊』
【作者】アレクサンダー・レルネット=ホレーニア
【訳者】垂野創一郎
【推薦文】
変な物語で哲学的脱線もところどころにあり、決して敷居が低いことはないし、選んでいる言葉は知的で品があるし平易ではないはずなのに読むのが困難なようには感じなかった。不思議なくらいに読みやすい。その理由というか秘訣、テクニックを浅学な私では分析しきれないが、同じ翻訳者の手がけた「夜毎に橋の下で」でも感じたので何かがあるのでしょう。特に縁のないドイツ語圏、かつモチーフがいままで知らなかった第一次大戦後のロシアやウィーンであってもいつの間にかスルッと入り込んでしまう、お話も面白いのだけど翻訳者の力量を感じました。

両シチリア連隊

両シチリア連隊

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アレクサンダー・レルネット=ホレーニア
東京創元社
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【推薦者】ののじ
【推薦作品】『火星の人』
【作者】アンディ・ウィアー
【訳者】小野田和子
【推薦文】
正確なのに自然な訳文で、翻訳であることを忘れて、ただ小説としての楽しさに集中できました。貴重な「貞淑な美女」ですね。文体はリズム感があって、今風だがやりすぎでなく、原文のカラッとして明るいユーモアが残らず伝わってきました。作品が元々持っている「声」が聞こえてくるような、理想の翻訳でした。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
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【推薦者】牛島 のり子
【推薦作品】『カステラ』
【作者】パク・ミンギュ
【訳者】ヒョン・ジェフン、斎藤真理子
【推薦文】
本書は韓国の現代小説ですが、韓国の小説とは思えないぐらいの、こなれた日本語になっています。もちろんその内容も日本との共通点が色濃いものです。韓国の小説の翻訳はまだまだ少ないのですが、それには翻訳力の影響もあると思います。隣国の小説が豊かな翻訳力で日常的に紹介される日が訪れることを期待する意味からも、本書を推薦させていただきます。

カステラ

カステラ

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パク ミンギュ
クレイン
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【推薦者】junne
【推薦作品】『プロメテア』
【作者】アラン・ムーア
【訳者】柳下毅一郎
【推薦文】
アラン・ムーアならではの魔術からポップカルチャーに至る幅広い引用とコマの隅々に張り巡らされた膨大な情報量を見事にカバーした上に詳細な用語解説もあり。もはやアラン・ムーアは他の訳者では読む気になりません。

プロメテア 1 (ShoPro Books)

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アラン・ムーア
小学館集英社プロダクション
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 ※推薦文は許可を得て掲載しています。

【第一回日本翻訳大賞推薦対象】
2014年1月1日から12月末までに発行された日本語の翻訳書(再刊、復刊、選考委員の訳書は除く)
 【推薦できる方】
どなたでも推薦できます。
【推薦期間】
2015年1月1日(木)から1月31日(日) 23:59まで。

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